出産を終え、ようやく妊娠生活から開放されたと思ったのもつかの間、ママはすぐ普通の生活に戻れるわけではありません。出産を終えたばかりの産褥期は体の状態が回復していないので、日常生活にも様々な制限がかかります。お風呂もその一つで、産後しばらくは湯船に浸かることができません。今回は産後のお風呂について、入れない理由や入浴できる時期、シャワーにする場合の注意点などをご説明します。
産後にお風呂に入ってはいけない理由は?
出産を終えたママの体はすぐに元どおりになるわけではなく、時間をかけて妊娠前の状態へと戻っていきます。
たとえば、赤ちゃんを育むために大きくなった子宮が元の大きさに戻る「子宮復古」には6週間(約1ヶ月半)ほどかかります(※1)。子宮復古が進むあいだ、子宮内の胎盤が剥がれた面からの血液や分泌物が「悪露(おろ)」として出続けます。
経腟分娩(自然分娩)の場合、しばらくは子宮口が開いている状態なので、湯船に浸かると子宮口から細菌が入り込み、子宮内で感染症を起こす恐れがあります。
また、帝王切開をしたママの場合も、お腹を切開した部分から細菌感染する可能性があります。
特に産後は免疫力が落ちており、細菌感染によって産褥熱が出ることもあるため、どの病院でも産後しばらくの間は入浴しないよう妊婦さんに指導しています。
産後はいつから入浴できるの?
一般的には、子宮口が閉じる産後3~4週間後くらいから入浴しても良いとされています。
子宮口がふさがる頃には、赤っぽい色だった悪露が黄色に変化し、量が少なくなってくるので、これがひとつの目安となります(※1)。
ただし、病院によっては、退院するときに入浴時期などについて特別な指示をされることもあるので、その場合はかかりつけ医の指示に従いましょう。
入浴を再開するタイミングは、会陰切開の傷跡の状態や体調などにも左右されるので、妊婦さん一人ひとりで異なります。
1ヶ月健診で体の状態をチェックしてもらったときに、そろそろ入浴しても良いかどうかを医師に確認すると安心です。
産後の入浴許可が出なくてもシャワーはOK?
お風呂がNGとはいっても、湯船に浸かってはいけないというだけで、シャワーを浴びることはできます。病院の方針にもよりますが、早ければ出産の翌日にはシャワーの許可が下りますよ。
帝王切開で出産した場合も、2~3日で許可が出ることが多く、少なくとも退院までにはシャワーを浴びることができますが、傷口の回復具合や病院の方針にもよるので、自己判断でシャワーを浴びたりせず、医師の指示に従ってください。
シャワーを浴びるときには、以下の点に注意しましょう。
短時間で済ませる
シャワーを浴びるだけでも体力を消耗するので、できるだけ短時間で済ませましょう。
ぬるめのお湯にする
シャワーだけとはいえ、お湯が熱いとのぼせて貧血を起こしやすくなるので、ぬるめの温度設定にしましょう。また、会陰切開などの傷が痛む場合は、水圧を下げてソフトに洗い流してくださいね。
浴室や脱衣所を暖めておく
シャワーだけだと十分に温まらず、体を冷やす原因に。寒い時期は浴室や脱衣所を先に暖かくして、寒暖の差をなくしておくと安心です。
産後にお風呂に入れないときの冷え対策は?
特に寒い季節に出産したママは、「シャワーだけでは体が温まらない!」とお悩みかもしれません。
湯船に浸かってしまうと、腟内に細菌が入りこんでしまう可能性がありますが、足湯であれば問題ありませんよ。シャワー中に椅子に座り、洗面器に温かいお湯をはって、しばらく足をつけておくだけで体がポカポカしてくるので、試してみてくださいね。
シャワーや足湯のあとは、風邪をひかないように暖かい格好で過ごしましょう。
産後の入浴許可が出たあとも油断しないで
医師から入浴許可が下りても、体は完全に元どおりになったわけではありません。雑菌による感染リスクを下げるため、浴槽はこまめに掃除をして、お湯は毎日入れ替え、ママはなるべく綺麗な一番風呂に入るようにするといいですね。
また、熱いお湯に長時間浸かるというのも疲労の原因になります。のぼせたり貧血を起こしたりしないように、ぬるま湯に短い時間だけ浸かるようにしてください。
産後の入浴はしばらくシャワーでがまん
妊娠・出産という大仕事を終えたあとなので、「湯船に浸かって疲れを癒やしたい」と思うママも多いかもしれません。
しかし、細菌感染の可能性を考えて、しばらくのあいだはシャワーでがまんしましょう。またお風呂でゆっくりできる日を楽しみにしながら、少しずつ体力を回復させてくださいね。