産褥熱とは?産後に発熱する原因と対処法は?帝王切開でも出る?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

出産直後のママの体は、とてもデリケートです。出産で体力を使って疲れ果てているだけでなく、子宮内も傷がついた状態で骨盤も開いたまま。体を動かせるようになるには1~2週間はかかります。そんな産後直後に発熱することがあり、産褥熱と呼ばれています。今回は産後のママを悩ませる産褥熱について、原因や症状、治療法をご紹介します。

産褥熱とは?

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分娩してから24時間以降、産後10日以内に2日以上にわたり38℃以上の発熱をきたすものを「産褥熱」といいます。抗生物質がなかった時代には、産後すぐで体力のないママが発熱し、重症化することが珍しくなく、産褥熱は産後の女性を死亡に至らしめる最も重大な原因とされていました。

しかし、現在は自宅分娩から病院での分娩に変わってきたことや医学の進歩によって、産褥熱による死亡率は著しく低下しています。

ちなみに産後6~8週間を「産褥期」といいますが、産褥期に現れる発熱で産褥熱と呼ばれています。

産褥熱が出る原因は?

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産褥熱は、分娩によって産道や子宮腔内にできた傷が細菌に感染し、引き起こされます。分娩で生じた傷とは、子宮口が開いてきたかを確認するための内診や会陰切開、止血処理などの際にできる傷です。

産褥熱の感染源や感染経路を明確にすることは難しいですが、医療従事者の手指や手術で使う器具から感染する外因子感染と、外陰部や膀胱から感染したり、他の臓器の炎症から感染したりする内因子感染があります(※1)。

また、胎盤の全体または一部が子宮内に残ってしまう胎盤遺残によって、産褥熱が起こるケースもあります。

産褥熱の症状は?

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産褥熱の症状は、発熱の他に頭痛や倦怠感、そして多臓器不全やショック状態まであったりと、実にさまざまです。症状を観察することで、その原因となっている問題を突き止めるヒントを与えてくれます。

悪露停滞

出産後5~6週間は、子宮や膣から悪露という分泌物が出てきます。しかし、この悪露が子宮内に停滞してしまい、細菌感染が起こっている状態が悪露停滞です。

子宮の収縮がうまくいっていない可能性があり、出てくる悪露には悪臭が伴います。

産褥子宮内膜炎

産褥子宮内膜炎は、発熱と同時に下腹部痛が起こったり、押されると局所的に子宮に痛みを感じたり、悪臭や汚い色の悪露を引き起こします。主に分娩後3~5日に起こります。

悪露が長く滞留し、子宮内の細菌が増殖することから発症すると考えられています。産褥子宮内膜炎は適切な処置を施さず、放置しておくと、感染が進み、子宮筋層炎や子宮旁結合織炎になる可能性があります。

産褥潰瘍

外陰部や膣にできた裂傷部分に細菌感染が起こって、潰瘍が生じます。ズキズキとした痛みを感じたり、組織の一部が腫れ上がったりします。

産褥子宮付属器炎

もとは子宮内膜炎として発症し、感染が子宮から卵管や卵巣へと広がると、卵管炎や卵巣炎といった炎症を引き起こします。産褥子宮付属器炎が発症する確率は、比較的低いとされていますが、症状の悪化には注意が必要です。

産褥骨盤腹膜炎

子宮内膜炎や付属器炎、骨盤結合識炎といった状態から、骨盤に細菌が感染することで産褥骨盤腹膜炎は起こります。

軽症だと、下腹部の疼痛、悪心、嘔吐などの症状で済みます。しかし、重症化してしまうと、悪寒戦慄を伴う39~40℃以上の高熱が生じ、下腹部に強い疼痛を感じることがあります。

産褥敗血症

傷口から細菌が持続的に血流内に入り、全身が細菌感染にかかっている状態です。産褥敗血症は、産褥熱の症状のなかでも最も重篤で、ガタガタとする震えを伴わない39~40℃の発熱が出たり、多臓器不全やショック状態に陥ったりします。最悪の場合、死に至ることも。

産褥敗血症の疑いがあるときは、早期に診断・治療することが救命率を上げる鍵です。

産後に熱が出たら、どうすればいいの?

病院 検査 聴診器

分娩後1週間以内に発熱することは珍しくなく、そのほとんどは軽い乳腺炎や悪露の滞留によるものです。しかし2日以上熱がひかない場合は、医師に診てもらう必要があります。

基本的に、悪露停滞や胎盤遺残が原因の場合を除き、産褥熱の治療には抗生剤が使われます。内服または点滴による治療で、数日後には解熱し、全身の症状も改善することがほとんどです。

産褥熱は頻繁に起きる病気ではありませんが、前期破水や早期破水が起こったママ、帝王切開や鉗子分娩を行ったママは、子宮内膜炎にかかりやすいといわれています。もちろん、それらの方法以外で分娩したママでも、産褥熱が出る可能性はあります。

入院中に熱が出た場合は、病院が迅速に対応してくれるので、それほど心配はいりませんが、退院後だと赤ちゃんのお世話をしながら、ママ自身で体調管理をしなくてはいけません。特に子宮内膜炎は放置しておくと、骨盤腹膜炎や敗血症になることもあるので、早期治療を心がけてください。

産褥熱は早期治療が大切

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出産後の病院に入院している時期に発熱を感じたら、すぐに看護師や医師に伝えてください。自宅に帰ったあとに発熱した場合は、自己判断で市販の解熱薬を飲まず、まずは病院を受診して、早めに処置を受けてください。

稀なケースではありますが、産褥熱は症状がひどく悪化すると、最悪の場合、命に危険を及ぼします。産後すぐは家事もできないほどに体を動かせず、かろうじて赤ちゃんのお世話ができるくらいに体力を消耗しきっていますが、熱が出て体調が優れないときはすぐに医師に診てもらってくださいね。赤ちゃんのためにも、まずはママ自身が元気でいることが大切です。

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