女性の体は生理周期にあわせて、基礎体温が高い「高温期」と、低い「低温期」を繰り返します。一般的に、排卵日を過ぎると高温期に入りますが、「なかなか基礎体温が上がらない」という人もいます。基礎体温をつけてみて初めてわかることですが、排卵後に体温が低いままだと、何か問題があるのでしょうか?今回は、排卵後に基礎体温が上がらない原因と対処法、妊娠への影響についてご説明します。
排卵後の基礎体温はどう変化する?
上の表は、理想的な基礎体温の変化を示したものです。正常かどうかをチェックするためには、以下の4つのポイントがあります(※1)。
1. 低温期から3日以内に高温期へ移行する
2. 高温期が10日以上続く
3. 高温期と低温期の差が0.3度以上
4. 高温期に体温が大きく下がらない
これらを踏まえると、「排卵日を過ぎて3日以上過ぎたはずなのに、低温期が続いている」「高温期には入っているものの、基礎体温の上昇が0.3度以内である」といった場合は、注意が必要です。
排卵後でも基礎体温が上がらない原因は?
排卵後の卵胞は黄体という組織に変わり、プロゲステロンとエストロゲンという女性ホルモンを分泌します。排卵後に基礎体温が上がるのは、この2つのうちプロゲステロンに体温を上げる作用があるからです。
排卵後に基礎体温が上がらない原因を以下2つのケースでご説明します。
ずっと低温期が続いている
基礎体温表をつけてみて、低温期と高温期のニ相に分かれていないケースです。この場合、生理のような出血があったとしても、うまく排卵が起こっていない可能性があります。
排卵されないと卵胞が黄体へと変化しないため、プロゲステロンの分泌が増えず、基礎体温が上がらないのです。
排卵障害があっても月経周期は正常であるという人もいますが、多くの場合、周期が長すぎる「稀発月経」や、極端に短い「頻発月経」が見られます。
高温期に入ってもあまり体温が上がらない
低温期と高温期のニ相に分かれてはいるものの、高温期と低温期の体温の差が0.3度以内であったり、高温期が10日以上持続しなかったりするケースです。この場合、黄体機能不全の可能性があります。また、卵胞がうまく発育していない可能性も。
黄体がうまく機能していないと、プロゲステロンが十分に分泌されないため、あまり基礎体温が上がらず、高温期が長く続きません。
また、プロゲステロンの不足により、子宮内膜がすぐ剥がれ落ちてしまい、生理が早く来ることもあります。
排卵後に高温期がないときの対処法は?
一時的に月経周期が乱れたり、基礎体温表がガタガタになったりしている場合、疲労や体調不良、睡眠不足が続いている、ストレスが溜まっているといったことが背景にあるかもしれません。
もし思い当たる節があれば、まずは生活習慣を見直しましょう。女性の体はホルモンバランスによって大きく左右されるため、このバランスを整えることで、正常な生理周期や基礎体温に戻ることもあります。
日頃から、疲れやストレスを溜めないように心がけ、早寝早起きの規則正しい生活で十分な睡眠時間を取りましょう。栄養バランスの良い食事をすることも大切です。
また、体の冷えは女性の体にとって大敵。血行不良は卵巣機能の低下につながる恐れがあるので、腹巻やひざ掛けを使って下半身を温めたり、ゆっくり湯船に浸かったりしてくださいね。
生活習慣を見直しても、排卵後の低温状態2~3ヶ月続くようなら、病気による黄体機能不全・排卵障害が起こっている可能性もあるため、一度婦人科を受診することをおすすめします。
排卵後に基礎体温が上がらないと妊娠しにくいの?
月経周期や基礎体温の変化には個人差があり、体調や環境の変化で影響を受けやすいものです。一時的な乱れであれば、過度に心配しないようにしましょう。
妊娠を希望する女性にとって、基礎体温は一つの大切な指標ですが、妊娠するために必要なのは「排卵が正常に起きていること」と「子宮内膜が厚くなっていること」です。理想的な低温期と高温期の状態でなくても、きちんと排卵が起きていれば妊娠できる可能性はあります。
ただし、無排卵月経などの排卵障害が長く続いたり、子宮内膜が十分に厚くならない着床障害が起こったりすると、不妊のリスクが高まるので注意が必要です。
排卵後に基礎体温が上がらないだけでなく、月経周期が長すぎる・短すぎる、生理の出血量が多すぎる・少なすぎるといった場合には、すみやかに婦人科を受診しましょう。
排卵後に基礎体温が上がらないときは医師に相談を
「赤ちゃんがほしい」と考えるようになってから、基礎体温をつけ始める人も多く、記録して初めて排卵後の基礎体温が上がっていないことに気がついた、という人もいるのではないでしょうか。それが一時的なものか、病気が原因なのかを自分で見分けるのは難しいもの。
生活習慣を改善して数ヶ月たっても排卵後の低温状態が続くようなら、基礎体温表を持って婦人科医に相談してみましょう。