双子や三つ子など、2人以上の赤ちゃんを同時に授かる「多胎妊娠」。家族が一気に増えるうれしさがある反面、多胎妊娠のリスクに不安を感じるママもいるのではないでしょうか?今回は、多胎妊娠の原因や確率、考えられるリスクのほか、産前休暇・産後休暇をどれくらい取れるのかについて、ご説明します。
多胎妊娠とは?
2人以上の胎児が、同時に子宮内に存在する状態を「多胎妊娠」といいます。自然妊娠で多胎妊娠となる確率は、全出生数の1%以下です(※1)。自然妊娠の場合、多胎妊娠の明確な原因はなく、偶然的なものだと考えられます。
「不妊治療だと多胎妊娠になりやすい」と聞いたことがあるかもしれません。これは、排卵誘発剤によって一度に複数の排卵が起こったり、複数の体外受精や顕微授精で受精卵(胚)を2個以上子宮へ移植する「二段階胚移植法」が行われたりすることで、2つ以上の受精卵がともに着床するケースが15~20%ほどあったためです。
しかし、2008年に日本産婦人科医学会が「移植する受精卵は原則1つ」という会告を出したことや、受精卵の凍結保存技術が高まったこともあり、現在では体外受精・顕微授精で多胎妊娠する確率は約4%まで減少しています(※2)。
多胎妊娠のうち、ほとんどを占めるのは「双胎妊娠」、いわゆる双子です。三つ子以上を授かる確率は極めて低いので、以下では双子を中心にご説明します。
多胎妊娠のタイプは?一卵性と二卵性って?
双子には2つのタイプがあります。1つの受精卵から2人の赤ちゃんができる「一卵性双胎(一卵性双生児)」と、2つの受精卵がそれぞれ成長する「二卵性双胎(二卵性双生児)」です。
さらに、赤ちゃんを包む羊膜と絨毛膜の数によって、以下3つのタイプに分類できます(※1)。
二絨毛膜二羊膜双胎(DD双胎)
二卵性の双子はほとんど「二絨毛膜二羊膜双胎」になります。双子のうち約70%を占め、生まれたあとの予後が最も良好なタイプです。
胎盤が2つあり、2人の赤ちゃんが羊膜と絨毛膜を別々に有しているため、完全に別の部屋にいる状態です。ただし、胎盤が癒着して1つになっている場合と、完全に2つに分離している場合があります。
一絨毛膜二羊膜双胎(MD双胎)
双子のうち約29%が「一絨毛膜二羊膜双胎」に該当します。2人の赤ちゃんは同一の絨毛膜内で1つの胎盤を共有していますが、羊膜が別々になっている状態です。
一絨毛膜一羊膜双胎(MM双胎)
「一絨毛膜一羊膜双胎」は、双子のうち約1%にしか見られない稀なタイプです。2人の赤ちゃんは同じ胎盤と絨毛膜、羊膜を共有しています。
2人の間に壁がなく、互いのへその緒が絡まり、血行障害などの異常をきたすリスクがあるので、妊娠中は厳重な管理が必要です。
一絨毛膜双胎の場合、1つの胎盤を共有しているため、栄養分に偏りが出て一方が発育不全に陥ってしまう可能性が高くなります。そのため、早期に膜性診断を行い、妊娠中の管理を徹底的に行って胎児のリスクを抑える必要があります。
多胎妊娠はいつわかるの?
多胎妊娠かどうかは、妊娠初期の超音波検査で確認できます。
二卵性双胎であれば、妊娠5週目以降の検査で胎嚢が2つ見つかります。一方、一卵性双胎の場合、約70〜75%は胎嚢が1つしかないので、確認できるのはもう少し後になります(※1)。
その後、妊娠8週以降15週頃までに、羊膜と絨毛膜の数を見る「膜性診断」が行われ、双子かどうか判断できるようになります(※3,4)。
多胎妊娠のリスクは?
多胎妊娠では、母体・胎児の両方にとって合併症等の高いリスクがあります。
まず、妊娠中のママが貧血や妊娠高血圧症候群になるリスクが高くなります。また、妊娠初期に赤ちゃんのうち1人が亡くなってしまったり、胎児発育不全になったりする可能性もあります。胎児それぞれの成長(推定体重)に差が出てしまうこともよくあるので、注意が必要です。
そのため、多胎妊娠の場合、妊婦健診の回数を増やして体の状態をこまめにチェックします。また、状態によっては、妊娠後期には管理入院をすることもあります。
多胎妊娠だと、単胎妊娠と比べて子宮が大きくなるのが早く、正産期より前であってもお腹が張りやすくなります。そのため、切迫早産のリスクが高く、分娩時には微弱陣痛、分娩後には弛緩出血が起こりやすくなるなど、難産になる傾向にあります。多胎妊娠でも経膣分娩は可能ですが、安全を優先して帝王切開になることが多くなります。
このように、多胎妊娠の場合は単胎妊娠に比べてリスクが多くなるため、少しでも気になることがあれば早めに医師に相談するようにしてくださいね。
多胎妊娠だと産休はいつから入れるの?
多胎妊娠では、単胎妊娠に比べて早く産休に入ることができます。単胎妊娠では、産前6週間と産後8週間の産休が認められていますが、多胎妊娠はリスクが多いことを考慮して、産前14週間の休業が認められています(※5)。
業務の引継ぎなどがスムーズに進められるよう、多胎妊娠であることがわかったら、少し早めに職場に報告しておくと良いでしょう。
多胎妊娠のママは無理せず過ごしましょう
多胎妊娠は、単胎妊娠のときと比べるとお腹も大きくなりやすく、腰痛などのマイナートラブルも出やすくなります。自分が考えている以上に疲れも感じやすいので、できるだけ無理をせず、余裕を持ってマタニティライフを楽しんでくださいね。