出生前診断の新しい方法として話題になっている「新型出生前診断」。正式には「母体血胎児染色体検査(NIPT)」という名称で、母体血清マーカーテストや羊水検査といった従来の出生前診断に比べて、リスクが低く精度が高い検査とされています。日本国内で受けられる病院は限られていますが、出生前診断を検討している人は気になりますよね。今回は新型出生前診断のNIPTとはどういうもので、何を検査するのか、受ける時期や費用などについてご説明します。
新型出生前診断(NIPT)とは?

すべての新生児のうち、約3〜4%の割合で何らかの異常をもって生まれてきます(※1)。胎児異常の原因は様々ですが、そのうちの染色体異常や遺伝性の病気などを妊娠中に調べる検査が、「出生前診断」です。
従来から行われている検査方法として、胎児超音波スクリーニング検査や母体血清マーカーテスト、羊水検査、絨毛検査などがあります。
新型出生前診断(NIPT)とは、2011年にアメリカで始まった新しい出生前診断の検査方法で、日本語では「無侵襲的出生前遺伝学的検査」または「母体血胎児染色体検査」といいます。
妊婦さんから採取した血液の遺伝子情報を解析するだけで、かなりの確率で胎児の染色体異常の可能性を検出できるようになりました。
新型出生前診断(NIPT)の検査方法は?染色体異常がわかる?

新型出生前診断(NIPT)は、母体の血液に含まれる遺伝子情報を解析することで、胎児の染色体異常を調べる検査です。
妊婦さんから採取した血液のなかには微量のDNA断片があり、それには母体由来のものだけでなく胎児由来のものも含まれます。それらのDNA断片を分析することで、胎児に特定の染色体異常がないかどうかを検査します。
母体の血液中の胎児由来遺伝子を解析し、そのなかの13番と18番、21番染色体の濃度を調べることで「パトー症候群(13トリソミー)」、「エドワーズ症候群(18トリソミー)」、「ダウン症(21トリソミー)」の可能性を高い確率で見つけられます(※1)。
たとえば、妊婦さんの血液中の染色体断片量(濃度)を平均と比べて、21番が多ければ21トリソミーが陽性と判定されます。
新型出生前診断(NIPT)の検査を受けてから結果が出るまで2週間ほどかかります。
新型出生前診断(NIPT)のメリットは?

新型出生前診断(NIPT)のメリットとして、次の2点が挙げられます。
検査が簡単でリスクが少ない
新型出生前診断(NIPT)は、通常の採血検査と同じように妊婦さんから血液を採るだけで検査できるので、妊婦さんの体への負担や流産リスクはほとんどありません(※2)。
たとえば、羊水検査や絨毛検査は、精度は高いものの、お腹に針を刺したりする必要があるため、妊婦さんや赤ちゃんにわずかながら負担がかかります。また、まれに流産やウイルス感染などのトラブルが起こるリスクもあります。
検査の精度が高い
新型出生前診断(NIPT)は、結果が「陰性」であれば、「99%の確率で染色体異常ではない」と考えられる検査です。
また、陽性的中率(「陽性」と判定が出たケースのうち、実際に異常がある確率)も比較的高いのが特長です(※1)。
母体血清マーカーテストも採血のみで検査できますが、精度は69~81%と低いというデメリットがあります(※1)。
ただし、新型出生前診断(NIPT)は精度が高いとはいえ、異常がある可能性を検出できる染色体は13番、18番、21番のみであり、確定診断ではありません。
また、そもそも染色体異常は胎児に見られる異常のうち1/4を占めるにすぎないということを、理解しておく必要があります(※1)。
新型出生前診断(NIPT)を受けられる条件は?

新型出生前診断(NIPT)はすべての妊婦さんが受けられるわけではありません。
日本産科婦人科学会の「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」では、検査を受けるには、以下のうちどれか一つの条件を満たしている必要があるとしています(※2)。
- 胎児超音波スクリーニング検査または母体血清マーカーテストで、胎児の染色体の数に異常がある可能性が指摘されている
- 過去に染色体の数に異常がある赤ちゃんを妊娠したことがある
- 高齢妊娠である
- 両親のどちらかに均衡型ロバートソン転座という染色体異常があり、胎児が13トリソミーまたは21トリソミーである可能性が指摘されている
いずれかの条件を満たしたうえで、事前に遺伝カウンセリングを受け、検査について十分理解した人に限り新型出生前診断(NIPT)を受けることができます。
検査を受ける妊婦さんの年齢によっても検査の精度が変わることや、赤ちゃんや家族の人生にも影響する重要な検査であることから、遺伝カウンセリングにより、十分に検査の意義と内容を理解することが大事です。
新型出生前診断(NIPT)を受けられる時期と費用は?

日本産科婦人科学会の産科ガイドラインによると、新型出生前診断(NIPT)を受けられる時期は妊娠10週以降です(※1)。
新型出生前診断(NIPT)を受けた約2週間後に結果が出て、染色体異常の可能性が指摘されたとして、確定診断のために羊水検査などを受けることを検討するケースもあるかもしれません。
そのことを考えると、新型出生前診断(NIPT)を受ける時期について早めにかかりつけの産婦人科医に相談しておくと良いでしょう。
なお、新型出生前診断(NIPT)は自由診療で保険が適用されないので、費用は全額自己負担です。医療機関によって異なりますが、約20万円かかります。
また、先述のとおり検査を受ける条件の1つが「胎児超音波スクリーニング検査または母体血清マーカーテストで、胎児の染色体の数に異常がある可能性が指摘されている」ことなので、これらの検査を先に受ける場合、そのぶんの費用もかかります。
新型出生前診断(NIPT)はどこで受けられるの?

日本産科婦人科学会の指針では、妊婦さんが検査について十分に理解したうえで受けるかどうか判断できるよう、十分な遺伝カウンセリングを受けることを必須としており、日本医学会の認定施設で新型出生前診断(NIPT)を受けるよう、呼びかけています(※2)。
日本医学会は、2017年7月31日時点で87の施設を臨床研究施設として認定しています(※3)。全国に認定施設があるので、お住まいの地域にあるかどうか探してみることをおすすめします。
新型出生前診断(NIPT)は十分な検討を

新型出生前診断(NIPT)は、検査方法が比較的簡単で、特定の染色体異常がわかる確率が高いため、受けたいと希望する妊婦さんもいるかもしれません。
ただし、検査の意義やその結果の解釈について理解が不十分なまま受けてしまうと、検査結果によっては妊婦さんが混乱してしまう恐れもあります。日本医学会が認定する医療施設を選び、十分な遺伝カウンセリングを経たうえで、新型出生前診断(NIPT)を受けるかどうかは医師やパートナーとよく相談してください。