妊娠中の人や出産を経験したことがある人なら、「水頭症」という病名を一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか?日本では、10,000人に約3人の割合で水頭症の赤ちゃんが生まれているといわれています(※1)。赤ちゃんに一番身近なママやパパが水頭症の正しい知識を身につけておくことで、早期発見・早期治療につながります。今回は赤ちゃんの水頭症の原因や症状、検査方法、治療法、後遺症などをご紹介します。
赤ちゃんの水頭症とは?
水頭症とは、脳脊髄液が頭蓋骨の中に過剰に溜まり、主に脳室が拡大した状態のことです。
人間の頭の中には脳脊髄液というものがあり、これが外部からの衝撃を吸収して、脳を守るという大切な役割を持っています。この他にも、脳圧をコントロールしたり、脳の老廃物を排泄したりする役割があると考えられています(※2)。
脳脊髄液は脳室にある「くも膜そう」と呼ばれる部位で作られ、体内を循環した後に、頭頂部にある上矢状静脈洞のあたりで吸収されます。しかし、なんらかの原因でこの循環・吸収経路の流れが悪くなると、頭蓋骨内に脳脊髄液が溜まり、脳室が拡大してしまいます。
赤ちゃんの水頭症の原因は?
水頭症には、生まれつき起こっている先天性のものと、生まれた後に起こる後天性のものがあります。
先天的な水頭症の主な原因としては脳の奇形が挙げられますが、原因を特定できないこともあります。後天的な水頭症の原因には、脳腫瘍や髄膜炎、硬膜下出血があります。
赤ちゃんの水頭症の症状は?
水頭症にかかると、頭蓋骨内に脳脊髄液が溜まるので、さまざまな症状が現れます。
頭蓋骨の縫合が未熟な乳幼児が水頭症にかかると、脳脊髄液で膨らんだ脳室の圧力で頭蓋骨が押し広げられ、頭が肥大化する症状が見られます。その他にも、以下のような症状が現れることがあります。
・前頭部にある大泉門が膨らむ(おもちのようなイメージ)
・黒目が下に引っ張られ、黒目の下半分が下まぶたにかかる「落日現象」が起きる
・よく嘔吐する
・機嫌が悪く、ぐったりしている
・ほとんど寝ている
・麻痺がある
赤ちゃんの水頭症の検査方法は?
正常範囲を超えた頭囲などの特徴的な症状が見られて水頭症が疑われる場合は、頭部CT検査や頭部MRI検査を行い、脳室の拡大や脳奇形の評価を行う必要があります。
先天的な水頭症は、赤ちゃんがお腹にいるときにエコー検査で分かることもあります。
赤ちゃんの水頭症の治療法は?
赤ちゃんが水頭症と診断されたら、頭蓋骨内に溜まった脳脊髄液を体の他の部分に流す「シャント」という手術が行われることが一般的です。具体的には、シャントチューブという細い管を脳内に挿入し、溜まった脳脊髄液をお腹などの他の部位に流して、脳圧を調整します。
しかし、基本的には水頭症の治療は原因によって異なり、例えば、脳腫瘍によって水頭症が起きている場合には、腫瘍の摘出など外科手術が行われることがあります。
また、最近では、神経内視鏡という非常に小さな内視鏡を使って脳室の壁に孔を開け、脳脊髄液の通りをよくする「第三脳室底開窓術」という手術も広まってきています。
この手術はシャントチューブを体内に埋め込まずに済むというメリットがありますが、年齢などによっては受けらなかったり、何度も手術を行わなければいけなかったりすることもあります(※3)。
水頭症の治療法について不明な点や疑問に感じる点があれば、医師に相談しましょう。
赤ちゃんの水頭症の予後は?後遺症は出る?
水頭症の赤ちゃんの予後は、原因や症状により異なります。ただし水頭症を発症した赤ちゃんは何らかの発達障害が起こる可能性が高くなり、運動能力・言語能力や知能指数が低く、記憶機能障害や視覚障害が起こりやすくなります(※3)。
赤ちゃんの水頭症に早めに対処できるように、気になることがあれば、小児科か脳神経外科の医師に相談するようにしましょう。
水頭症の早期治療のためにも妊婦健診は大切に
前述の通り、赤ちゃんの水頭症は早期に治療することが肝心です。現在では、赤ちゃんがお腹にいるときから、妊婦健診のエコー検査で水頭症の疑いがあるかどうかを調べることができます。
早くに赤ちゃんの水頭症に気づくことができれば、それに対する準備もしやすくなります。お腹の赤ちゃんのためにも、そして自分自身のためにも妊婦健診はスケジュール通りに行き、妊娠の経過を確認してもらうようにしましょう。