二分脊椎症とは?原因や症状、治療法は?水頭症を合併するの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

妊娠中、胎児は様々な器官を成長させて、出生を迎えます。しかし、その過程のなかで脊髄・椎骨の形成がうまくいかないと、「二分脊椎症」になり、障害が現れることがあります。今回は先天性疾患の1つである二分脊椎症について、原因や症状、治療法、予防法などをご紹介します。

二分脊椎症とは?

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二分脊椎症とは、脊椎の先天的な形成不全によって、様々な神経障害が現れる病気です。妊娠初期に、胎児の体では、脳や脊髄といった中枢神経系のもとになる管状の「神経管」というものが作られ始めます。

しかし、この形成過程で問題が発生すると、脊椎の一部が開いたままになり、本来は脊椎の中で守られるはずの脊髄が外に飛び出してしまいます。外に出た脊髄に癒着や損傷が起こると、脳からの指令が体にうまく伝達されなくなり、神経障害が現れます。

厚生労働省の葉酸普及研究会によると、二分脊椎の発生頻度は過去30年間で減少傾向を示しておらず、2012年の発生頻度は分娩10,000件あたり5.2件です(※1)。

二分脊椎症の原因は?

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二分脊椎症は、主に遺伝的な要因や栄養学的な要因、環境的な要因によって起こると考えられています。

たとえば、妊娠時の葉酸摂取量が不足していると、二分脊椎症を起こす恐れがあるとされており、難病情報センターは妊娠前からサプリメントを使って葉酸を摂取していると、発生リスクは70~80%ほど減らせると報告しています(※2)。

二分脊椎症を引き起こす環境的な要因としては、妊娠中の糖尿病や肥満、妊娠初期の高熱発作、放射線の被ばく、バルプロ酸の抗てんかん薬の内服、ビタミンAの過剰摂取があります(※2,3)。

二分脊椎症の症状は?

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二分脊椎症は、脊椎の状態によって「開放性二分脊椎症」と「潜在性二分脊椎症」に分けられ、現れる症状も異なります。

開放性二分脊椎症は、脊椎の骨の一部が開き、脊髄などの神経組織が背中に飛び出している状態です。潜在性二分脊椎症は骨は開いていますが、神経組織が皮膚に覆われている状態のことです。

開放性二分脊椎症

脊椎から飛び出した脊髄が、体の表面にこぶのように現れた状態で生まれます。そして、脊髄のどこが損傷しているかによって、現れる神経障害が異なります。

具体的には、足が上手に動かせず歩きにくい運動障害、熱さや痛みを感じにくい感覚障害、大便や小便を上手に出せなかったり、我慢できなかったりする排泄障害などが見られます。

水頭症やキアリ奇形(本来は頭蓋骨の中にある小脳・脳幹が脊椎側に落ち込み圧迫した状態)を合併症として引き起こすこともあります。二部脊椎症と診断された赤ちゃんの約80%が水頭症を合併しています(※2)。

潜在性二分脊椎症

潜在性二分脊椎症の70~80%において、腰の部分の異常毛髪や多毛、皮膚のへこみ、脂肪腫などの皮膚異常が背中に見られます。

運動障害や感覚障害、排泄障害が現れることもあります。しかし、出生直後は何も症状が見られなかったり、あっても見つからなかったりして、いつ頃に症状が現れるのかは分かっていないのが現状です。

二分脊椎症の診断方法は?

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開放性二分脊椎症であれば、背中にこぶができるため、出生前診断での超音波検査で可能性が疑われる場合があります。

潜在性二分脊椎症は視診だけでは判断がつきにくいため、背中の皮膚のくぼみに毛髪が生えるなどの所見がある場合には、脊椎や頭部のMRI検査を行うなどして診断が行われます。

二分脊椎症の治療法は?

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開放性二分脊椎症は、感染症のリスクが非常に高いため、外に飛び出ている脊髄を脊椎に収め、開いているところを閉じる外科手術がすみやかに行われます。水頭症が合併していれば、脳の髄液を細い管を使ってお腹に流し込む「シャント術」という手術が行われます。

潜在性二分脊椎症では、何も症状が現れていなければ治療しないこともありますが、症状が出ていれば、脂肪腫を摘出して脊髄下端の癒着を剥離する手術を行うことがあります。

手術の後は、残った神経障害に対するリハビリが行われます。障害の種類や度合いにもよりますが、歩行訓練や筋力強化などのリハビリを継続していくことになります。

二分脊椎症の予防法は?

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二分脊椎症の原因は全てが明らかになっているわけではないので、完全に予防することは困難です。

ただし、二分脊椎症の原因として葉酸の摂取不足が指摘されているので、妊娠を望んだタイミング、もしくは妊娠に気づいたタイミングで、葉酸を意識的に摂取することは一つの予防法です。

他にも、妊娠中の糖尿病や肥満などが二分脊椎症を引き起こすと考えられているため、日々の食生活に注意することも大切です。妊娠中の生活習慣や内服薬について分からないことや心配なことがあれば、医師に相談しましょう。

二分脊椎症は親子一丸となって乗り越えよう

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生まれてきた赤ちゃんが二分脊椎症だと診断されると、あまり耳にしない病名ということもあり、どうやって育てていけばいいのかと不安を抱くかもしれません。

きちんと治療をし、リハビリを行っていけば、成長・発達が促されます。家族や医療機関と協力しながら、二分脊椎症と付き合っていけるといいですね。

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