妊娠したい人にとっては、毎月生理がきちんとくるかどうかはとても重要なことです。しかし、女性の身体はとてもデリケートなので、ちょっとしたことですぐに生理が遅れたり早まったりと、生理不順が起きてしまいます。生理不順の治療には様々な方法がありますが、漢方薬もその一つです。今回は、生理不順に効く漢方薬について、効果や副作用があるのかなどをまとめました。
漢方薬とは?西洋薬との違いは?
漢方薬は、植物や動物、鉱物でできた天然の「生薬」を2種類以上ブレンドして作られる薬の総称です。その製法は、約2000年前の中国で作られたといわれます。
ステロイド剤などの西洋薬は、効き目は強いものの、単一成分で作られているため、副作用が現れやすく、体質によっては使いづらいことがあります。
一方、漢方薬はブレンドされている成分同士の相乗効果により、期待される作用が強まったり、マイナス作用が抑制されたりする傾向があります。そのため、西洋薬に比べて副作用が少なく、たとえあったとしても穏やかな症状で済みやすいのが特徴です。
病気の特徴や患者の体質によって、適切な薬は異なります。西洋医学・漢方医学のどちらが正しいということではなく、両方の特性を理解して治療に取り入れていくことが大切だといえます。
生理不順に漢方薬が処方されるのはなぜ?
漢方医学による治療は、体質を改善して根本から病気を治す「本治」と、すでに現れている症状を取り除く「標治」の2つを基本としています。
生理不順の主な原因は、ホルモンバランスの乱れといわれています。これは、女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンの分泌がうまく行っていない状態で、睡眠不足や疲労、ストレスの蓄積などにより引き起こされます。ホルモンバランスが乱れると、生理不順だけでなく、ひどい生理痛や肌荒れ、冷えなどの症状が現れます。
このように、生理不順がある場合、体質改善によってホルモンバランスを整えると同時に、ホルモンバランスの乱れで引き起こされる症状を和らげることが効果的であり、その両方に働きかけることを期待して、漢方薬が処方されることがあります。
なお、同じ病気であっても患者の症状に合わせて処方されるため、異なる漢方薬が使われること(同病異治)もあれば、異なる病気に対して同じ漢方薬が処方されること(異病同治)もあります。
生理不順に効く漢方薬の種類は?
一口に生理不順と言っても、現れる症状や程度は様々です。漢方薬は個人の症状や体質に合わせて処方されるため、先述の「同病異治」の考え方により、生理不順でも前回と異なる薬が処方されることもあります。
ここでは、生理不順の女性に対して、一般的によく処方される漢方薬を3つご紹介します(※1,2)。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
生理トラブルをはじめとして、女性特有の様々な症状に広く使われる漢方薬です。老若男女問わず、妊娠中であっても服用することができます。
普段から疲れやすく、貧血・冷え症がある人、むくみや腹痛、頭痛やめまい、精神不安定などに悩まされている人に向いています。
加味逍遥散(かみしょうようさん)
「瘀血(おけつ)」と呼ばれる血流が停滞してしまう症状や、「血虚」と呼ばれる血流不足、精神的な症状の緩和に効果を発揮するとされます。血行をよくして身体を温める一方で、のぼせ・ほてりといった上半身の熱を冷ます働きがあります。
比較的体力が低下しており、生理不順に加えて精神不安やイライラなどを感じやすい人や、「手足は冷えるが、顔はのぼせて赤くなる」タイプの人に広く処方されます。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
血のめぐりを良くし、めまいやのぼせなどの症状を緩和する効果があります。体格がしっかりして体力がある人に、より効果が出やすいといわれます。
生理不順のほかに、下腹部痛などの生理痛・月経困難症や、肩こりや頭痛、めまいといった諸症状に効くとされています。
生理不順の漢方薬の飲み方は?
基本的に、医師から特別な指示がない限りは、いつどんなタイミングで漢方薬を服用しても問題はないとされます。通常は、1日3回、空腹で吸収のよい「食前(食事開始から約30分前)」や「食間(食事から約2時間後)」に服用します。
ただし、胃腸が弱く、空腹時に薬を飲むと胃に負担がかかりやすい体質の場合は、食後に服用するよう指示されることもあります。
また、煎じ薬を煮詰めたエキス製剤などは、温かいお湯に溶かして飲むのが基本です。「のぼせ」の症状が出ている人の場合は冷たくして服用するなど、症状に合わせた飲み方があります。
自分に処方された漢方薬の服用方法について、飲み始める前に医師や薬剤師に確認しておきましょう。
生理不順の漢方薬はどれくらい飲み続ける?
飲むべき漢方薬が決まったら、まずは1ヶ月くらいじっくり試してみましょう。漢方薬の治療効果は、数週間~半年ほどかけて見極めることがほとんどです。用法・用量を守って飲みながら生活習慣の改善にも気を配り、自分の体調の変化を観察します。
しばらく続けても体調が改善されないようなら、服用量や薬を変えることが検討されるので、医師や薬剤師に相談してみましょう。
生理不順の漢方薬には副作用がある?
最初に触れたとおり、漢方薬の副作用は西洋薬に比べると少ないとされています。
しかし、同じような成分を含む西洋薬と併用していたり、複数の病院から漢方薬を処方してもらったりしている場合、過剰投与になり、副作用が現れやすくなるので注意が必要です。
自分がどんな薬をどれだけ処方されているのかを確認・把握しておき、副作用について心配なことがあれば、処方される段階で医師や薬剤師に話を聞いておくと安心ですね。
生理不順は漢方薬で改善を目指しましょう
体質改善をしつつ、目に見える症状の緩和を促す漢方薬は、生理不順で悩んでいる人が覚えておきたい治療法の一つです。とはいえ、漢方薬にはたくさんの種類があり、症状や体質に合わせた処方が重要なので、まずは漢方内科や婦人科で相談してみてくださいね。
生理不順は、ストレスによるホルモンバランスの乱れだけでなく、子宮内膜症や子宮筋腫といった婦人科系疾患によって引き起こされている可能性もあります。その場合は、漢方薬と西洋薬を併用したり、ホルモン治療や手術が必要になる場合もあるので、生理不順があったらまずは病院できちんと検査をしてもらいましょう。