生後すぐの頃に、「おっぱい・ミルクをしっかり飲んでいるはずなのに、赤ちゃんの体重が減っている」とびっくりすることがあります。体重が減っていると、母乳やミルクの量が足りているのか心配になりますよね。実はこの現象は「生理的体重減少」と呼ばれるもので、どの赤ちゃんにも起こる自然なことなのです。今回は新生児の生理的体重減少について、目安となる体重減少率の計算式などをご説明します。
新生児の生理的体重減少とは?
「生理的体重減少」とは、赤ちゃんの体重が生後数日の間に減少していくことをいいます。
生まれたばかりの赤ちゃんは、おっぱいやミルクをまだ上手に飲めません。そのため、飲む量よりもおしっこやうんち、汗などで出て行く水分量のほうが多くなり、一時的に体重が減ってしまうのです。また、体内のむくみが減少することも要因の一つです。
ミルク育児、母乳育児に関わらず、一般的に生後2〜5日までに10%未満の生理的体重減少が起こります。そして多くは、生後7日頃には出生時の体重に戻ります(※1)。
体重が10%以上減ってしまったり、生理的体重減少が起こってから5日以上経っても体重が増加しない場合は、以下のような原因が考えられます(※1)。
- ● 赤ちゃんがおっぱいやミルクを吸う力が弱い
- ● 母乳が足りていない
- ● おっぱいやミルクの量や回数が適切でない
- ● 赤ちゃんが嘔吐や下痢をして水分が失われている
- ● 心不全や代謝性疾患などの先天疾患
母乳育児がうまく行っていないために体重が戻らないこともあるため、粉ミルクを併用したり、母乳が出るように搾乳をしたりして対処します。
生理的体重減少率の計算式は?
新生児の生理的体重減少率は、生まれたときの体重から現在の体重を引いた値を生まれたときの体重で割り、更に100をかけることで算出できます。
難しい計算方法ではないので、赤ちゃんの体重の減り方が気になるようであれば、計算してみましょう。
生理的体重減少率の計算式
【例】
● 出生時の体重:3,000g
● 現在の体重:2,850g
(3,000-2,850)÷3,000✕100=5%
新生児の生理的体重減少の目安は?
母乳育児を行っている場合の生理的体重減少率は平均5~7%で、ミルク育児を行っている場合だと、生理的体重減少率は平均3~5%です(※2)。
前述の通り、生理的体重減少率が10%を超えると、赤ちゃんがおっぱいやミルクを上手に飲めていなかったり、赤ちゃんの体調になんらかの問題が起きていたりする可能性があります。
生理的体重減少率が10%を超えていたら、出産した産科や小児科を受診しましょう。
上で紹介した計算式を使って生理的体重減少率を算出する以外にも、出生時の体重に0.1(10%)をかけたグラム数までが生理的体重減少の許容範囲だと覚えておくと目安になります。
【例】
● 出生時の体重:3,000g
3.000×0.1=300(g)
生理的体重減少がなくても大丈夫?体重が増えない場合は?
赤ちゃんが摂取できる栄養量は、日に日に増していきます。
そして、生後7日頃には排出するうんちやおしっこ、皮膚から蒸発する汗などの水分の量より、摂取する栄養量が上回るようになり、元の体重に戻ります。
個人差はありますが、その後は1日あたり30gほど体重が増え、生後2~3ヶ月で、生まれたときの約2倍の体重になることが一般的です。
赤ちゃんの体重が出生時の体重に戻る目安の生後7日頃までは、落ち着いて赤ちゃんの様子を見ていきましょう。
機嫌がよく、母乳やミルクをきちんと飲んでいるようであれば、特に心配する必要はありません。
ただし、生理的体重減少が起きない場合、うんちやおしっこの排泄、もしくは皮膚からの水分蒸発がうまくいっていない可能性があるので注意が必要です。
体重が減って戻らない場合や、体重が10%以上減っている場合は、甲状腺機能の低下などによる活気の低下、ヒルシュスプルング病という腸の病気などで体重減少が起きているこ可能性もあります。
生理的体重減少が起きていないと疑われたり、過度な生理的体重減少が起きていたり、なかなか体重が増えなかったりする場合は、医師に診てもらいましょう。原因を突き詰めて、いち早く対処にあたることが大切です。
新生児の生理的体重減少は自然なこと
ちゃんとおっぱいを飲んでいる赤ちゃんの体重が減ってしまっていると、何かトラブルが起きているのではないかと不安になってしまうと思います。
新生児の体重減少は生理的なものだと知っていれば、気持ちが少し楽になりますよね。
生理的体重減少は新生児に見られる自然な現象ですが、ときには注意が必要なこともあります。赤ちゃんに変わった様子がないか、しっかり見守ってくださいね。