もともと喘息がある妊婦さんも少なくありませんが、なかには妊娠中に初めて喘息を発症した人もいると思います。喘息の発作が出たら、薬を使ってつらい咳を抑えるのが一般的ですが、妊娠中は常用していた薬を使っていいものか、どうやって対処すべきか悩みますよね。そこで今回は喘息もちの妊婦さんのために、喘息と妊娠中の関係性、咳や発作の胎児への影響、治療法や薬の影響についてご説明します。
喘息とは?
喘息とは、呼吸時に空気が出入りする気管支という部分が炎症を起こして狭くなって息苦しくなる病気です。気管支が狭くなるとゼーゼー・ヒューヒューといった喘鳴(ぜんめい)や激しい咳が出ます。
炎症の原因は特定が難しいのですが、そのほとんどはなんらかのアレルギーだといわれています。ダニやハウスダスト、花粉、食べ物などが引き金になっているようです。
妊娠中に咳が続くときは喘息かもしれない?
妊娠中に咳が止まらないと、喘息がひどくなったのかもしれないと不安ですよね。今まで喘息ではなかった人も、「喘息になってしまったのかも…」と心配になると思います。
しかしそれは喘息ではなく、咳喘息かもしれません。咳喘息は風邪などの影響で気道が敏感になっていることが原因で起こる激しい咳で、喘息とは異なります。喘鳴や呼吸困難などを起こすことはなく、薬を使えば治ります。ただ、治療をせずに咳が出るのを放っておくと本当の喘息を引き起こすことがあるので注意が必要です。
妊娠中は喘息が悪化する?改善する人もいるの?
妊婦さん全体のうち約3%が喘息もちだといわれます(※1)。このなかには妊娠してから喘息を発症した人もいて、それほど数は多くありませんが、今まで喘息とは縁のなかった人でも注意が必要です。
もともと喘息もちだった人は妊娠をきっかけに、症状が悪化したり改善したりするといわれています。妊娠中に増加する「エストロゲン(卵胞ホルモン)」が気道を収縮させる働きがある一方で、同じく妊娠中に増える「プロゲステロン(黄体ホルモン)」は気道を拡張する働きがあるからです。気道が収縮すれば悪化し、拡張すれば改善します。
悪化する人、変わらない人、改善する人はそれぞれ同じくらいの割合でいますが、何が原因で症状に影響を与えるのかはわかっていません。ただ、妊娠前から喘息をコントロールするのが難しかった人は妊娠をきっかけに悪化することが多いといわれています(※1)。
妊娠中の喘息が胎児に与える影響は?
妊娠中の喘息は、お腹の赤ちゃんに悪影響を及ぼす可能性があります。というのも、喘息の発作がひどくて激しい咳をしているとママが酸欠状態になり、お腹の赤ちゃんに十分な酸素を届けられなくなるからです。
ママと赤ちゃんが低酸素の状態が続くと、流産や早産、胎児発育不全を引き起こすリスクが高まります。喘息そのものというより、ひどい咳や発作で呼吸困難になるのが危険なので、妊娠中は発作を抑えることが重要です。
妊娠中の喘息の治療法は?妊婦は薬を飲んでいいの?
妊娠中は薬を控えたほうがよいといわれるので、自己判断で喘息の薬の服用をやめてしまう人がいますが、これは喘息を悪化させる原因になります。ステロイドやテオフィリン、β2刺激薬など、喘息で処方される薬はお腹の赤ちゃんに悪影響を与えるものではないので、妊娠中であっても発作がひどくなったときには服用してください。きちんと薬で症状を抑えて呼吸を確保し、赤ちゃんに十分な酸素を送ってあげることを意識しましょう。
ただ、人によって処方されている薬に違いはあるので、妊娠がわかった時点でかかりつけの産婦人科や呼吸器科に薬を処方してもいいのかを相談しておきましょう。
妊娠中の喘息発作を予防する方法は?
喘息の症状が出ていなくても、今後のことを考えて「発作予防薬」を使うこともできます。喘息もちの妊婦さんはかかりつけの呼吸器科医とよく相談し、発作を事前に防ぐべきかどうか検討しておきたいですね。
予防薬は発作が起きていない段階で使用するものなので、「今は発作がないから」と服用をやめてしまっては効果がなくなります。服用し始めたらきちんと用法・用量を守って使用してください。
また、喘息の発作が起きないように、空気清浄機を使ってハウスダストを除去し、日々の掃除で部屋を清潔にしておくことも、喘息発作を起こさないためには有効です。過度なストレスがかかると喘息発作を引き起こす可能性もあるので、適度にストレスを発散しながらリラックスして毎日を過ごすようにしたいですね。
妊娠中の喘息は正しく薬を使って対処しよう
妊娠中の喘息は、症状がひどくなることでお腹の赤ちゃんへのリスクが高まります。そのため、もともと喘息もちの人は妊娠した段階で早めに主治医と相談しましょう。
また、妊娠前は喘息がなかった妊婦さんでも咳が長く続くときは一度かかりつけの産婦人科医に相談してください。もしかしたら喘息や咳喘息を発症している可能性もあります。
「これくらいの咳なら大丈夫」と自己判断はせず、お腹の赤ちゃんのことを第一に考えて早めの対策をしてくださいね。