仕事や大事な用で、どうしてもママが出かけなければならないこともありますよね。そんなときは、あらかじめ搾乳しておけば、ママ以外の人でも赤ちゃんに母乳をあげることができます。また、おっぱいが張ってつらいときは、少し搾乳することでずいぶん楽になれるものです。そこで今回は、母乳育児には欠かせない搾乳のやり方や保存方法、量が出ない・少ないときの原因や対策についてご紹介します。
搾乳とは?どんなときに必要なの?

赤ちゃんを産んで初めて「搾乳」という言葉を知ったママもいるのではないでしょうか。搾乳とは、その名の通り母乳を搾ることで、母乳育児をするうえでは欠かせないママの仕事の一つです。
それでは、なぜわざわざ搾乳する必要があるのでしょうか。「せっかく出ているのに、それを赤ちゃんに飲んでもらえばいいだけじゃないの?」と思うかもしれませんが、以下のようなときに搾乳が必要になってきます。
赤ちゃんが入院してしまったとき
ママは元気だけど赤ちゃんだけが入院してしまったとき、入院先の病院に毎日のように数回~数日分の母乳を届ける必要があります。母乳育児で育てている場合は、前もって自宅でたくさん搾乳をして保存しておき、まとめて病院に持ってくるように指示を受けます。
例えば、出産直後に赤ちゃんに黄疸などの異常があり、ママだけ先に退院なんていうこともよくあります。このような場合には、産後すぐに搾乳する必要がでてきます。
ママが仕事や急用で赤ちゃんの傍にいられないとき
母乳育児期間中に仕事復帰した人や、冠婚葬祭や急用などで赤ちゃんと離れないといけない場合は、預け先の保育園やベビーシッターさん、祖父母に、事前に搾乳した母乳を預けておきます。
ママのおっぱいが詰まってしまったとき
乳管や入口が詰まってしまい、おっぱいが張ってしまったときも、搾乳をする必要があります。そのままにしておくと、美味しくないドロドロの母乳になってしまい、赤ちゃんがおっぱいを拒否したり、ぐずりやすくなってしまいます。また、乳腺炎を発症してしまう恐れもあります。
母乳の出が良すぎるとき
「母乳がうまく出ない」と悩むママが多いなか、反対に母乳の出が良すぎるというラッキーな人もいます。しかし、出過ぎてしまうのも困りもので、赤ちゃんの飲む量とのバランスが合っていないとすぐにおっぱいが張ってしまいます。
また、あまりに勢い良く出るので赤ちゃんがむせてしまったり、上手に飲めないことも。このようなときも定期的に搾乳して、量を調節する必要があります。
赤ちゃんがうまく母乳を吸えないとき
月齢が低く赤ちゃんの吸啜運動が未発達な場合は、まだ上手におっぱいを吸うことができません。また、ずっと寝ていて授乳時間になっても起きられない赤ちゃんもいます。
そんなときは、不足分を搾乳して哺乳瓶からあげましょう。不足分を粉ミルクにしたとしても、母乳をそのままにしておくと、詰まりの原因になるので搾乳する必要があります。
想像以上に搾乳しなければいけないシーンが多くありますよね。母乳育児で育てているママやこれから育てようとしている妊婦さんは、ぜひ正しい搾乳方法を身につけておきましょう。
正しい搾乳方法とは?
それでは、ここでは正しく搾乳する方法についてご紹介します。搾乳方法には、手で行う方法と機械を使って行う方法があります。
手で搾乳する方法

手で搾乳するときは、まず乳輪部を傷つけないよう、爪を短く切り、手指をせっけんできれいに洗いましょう。乳首も清潔にしておきます。
親指と人差し指の腹で、乳輪の外側を軽く圧迫するようにして搾乳しましょう。このとき、他の指は乳房全体を支えるように軽く当てます。赤ちゃんに吸われるときのイメージでリズミカルに押すこと、まんべんなく乳腺を使うよう、左右交互にいろいろな角度から押すことがポイントです。
乳輪や乳房をむりやり押したり引っ張ったりすると乳腺を傷めてしまうので、「やさしく・痛くなく」がコツです。搾る時間は、左右のおっぱいを合わせて15~30分くらいを目安にしてくださいね。
保存する場合には、消毒した哺乳瓶に直接搾るようにします。保存する必要がないときは、大きなタオルをあて、タオルに母乳を吸い込ませるようにすると楽に搾れますよ。また、お風呂場で湯船に浸かりながら行うと血行も良いため、搾りやすくなり、汚れることも気にならないのでおすすめです。
搾乳器を使って搾乳する方法
手で搾るのはなかなかの重労働なので、最近では搾乳器という機械も販売されています。搾乳器には電動のものと手動のものがあります。日常的に搾乳したい人には電動、時々使用したい・乳腺炎予防用の圧抜き程度に搾乳したい人には手動のものがおすすめです。
搾乳器を使う場合は、あらかじめ搾乳器と乳首・指を清潔にしておき、リラックスした状態で搾乳口に乳頭をぴったり当てましょう。空気が入らないよう、搾乳口についているカップを乳房と密着させるのがポイントです。手動の場合は、短いリズムでハンドルを握って搾乳します。電動の場合は、スイッチを押すだけで自動的に搾乳されます。
乳輪や乳頭を十分やわらかくしてから、おっぱいを交互に搾乳します。母乳の残った感じがあれば、片手で圧迫しながら手搾りで母乳を出しきりましょう。
また、電動の場合は、強く吸いすぎてしまうことがあるので、乳首を傷めないよう注意してください。搾乳器を使っても母乳がなかなか出てこないときは、搾乳をストップしましょう。無理をすると、乳首や乳腺を傷める恐れがあります。
搾乳した母乳の保存方法や期間は?

搾乳した母乳は、専用の母乳パックを使うと安全で簡単に保存することができます。搾乳した母乳を清潔な母乳パックに入れ、空気が入らないように密閉します。
保存期間は、家庭用の冷蔵庫だと24時間以内、冷凍庫だとおよそ2週間~1ヶ月くらいといわれていますが、できるだけ早めに使うに越したことはありません。
保存したものを与えるときは、冷蔵保存のものであれば母乳を哺乳瓶に入れて、哺乳瓶ごとお湯につけて人肌温度まで温めます。冷凍保存の場合は、冷蔵庫に入れてゆっくり解凍するか、ぬるま湯や流水で解凍してから哺乳瓶に入れ、人肌温度まで温めます。
搾乳しても母乳の量が出ない理由は?少ないときの対処法はあるの?

「普段母乳がたくさん出ているのに、搾乳器ではあまり搾れない」というママもいますが、それはなぜでしょうか。また、それぞれの理由に対しては次のように対処しましょう。
オキシトシンの分泌
赤ちゃんに乳首を吸われると、ママの脳下垂体から母乳を出すためのホルモン、オキシトシンが分泌されて、母乳が外に出されます。ところが、搾乳器によってはオキシトシンが分泌される前に搾乳を始めるものもあり、うまく搾乳できないことがあります。
オキシトシンを分泌させる方法として、搾乳時に赤ちゃんのことを思い浮かべながら行ったり、乳頭を刺激してからオキシトシンの分泌を少し待って搾乳を開始したりするのがおすすめです。また、赤ちゃんの自然な飲み方にできるだけ近づけた搾乳器もあるため、使用する搾乳器の変更を検討してもいいですね。
赤ちゃんの飲み方との違い
赤ちゃんは上あごと舌で乳首を挟んで、母乳をしごき出しながら飲んでいます。空気圧だけで母乳を吸い出す搾乳器とは、仕組みが異なるためいつものようにいかない、ということもあります。
無理にしごいても痛くなってしまうため、時間をかけて行うか、少しずつ搾乳することを検討しましょう。
ママのおっぱいの出方の違い
ママのおっぱいの出方によっても大きく異なります。多くのママは、おっぱいが張って出やすい「溜まり乳」から、赤ちゃんに吸われてはじめて母乳が作られる「差し乳」へと自然に移行します。
溜まり乳タイプの場合は、おっぱいが張ってしまって大変なときの圧抜きとして搾乳が有効ですが、差し乳タイプの場合は搾乳しようとしてもうまくいかないことが多いのです。
差し乳のママのように搾乳しても母乳が出ないときは、おっぱいが張りやすい朝一番に搾乳するのがおすすめです。あるいは少ない量を都度保存し、飲ませる際に何回分かを合わせて1回分にあてましょう。
正しく搾乳して楽しい母乳育児を目指そう
まだ固い物を食べられない赤ちゃんにとって、母乳は大切な栄養源です。搾乳することは、ママにも赤ちゃんにも多くのメリットがあります。
ママが少しでも楽に子育てできるように、必要を感じたら搾乳を取り入れて、スムーズな母乳育児を進めてくださいね。