授乳中、乳腺炎のしこりが痛い!取れない!詰まりの原因と対処法は?

監修専門家 看護師・助産師 岡 美雪
岡 美雪 看護師・助産師を免許を取得後、未熟児病棟、脳神経外科病棟、産科病棟で医療業務に従事。その後、医療現場での経験を活かして、青年海外協力隊の看護職としてアフリカに2年間駐在し、現地の医療技術向上に貢献。日... 監修記事一覧へ

授乳タイムは赤ちゃんとの一体感が感じられ、ママにとっても幸せな時間の一つですが、母乳にトラブルはつきもの。「母乳の量が足りない」「乳首が切れて痛い」といった悩みはよく耳にしますが、なかには「おっぱいにしこりができて痛い!取れない!」と悩むママもいますよね。それは、もしかしたら乳腺炎になっているかもしれません。今回は、乳腺炎によるしこりや詰まりの原因と対処法についてまとめました。

授乳中、おっぱいのしこりが痛い!乳腺炎とは?

胸 痛い 女性 乳腺炎

授乳中におっぱいを触るとなんだか、ごりごり…しこりのようなものがある、ということがあるかもしれません。それは乳腺が詰まってできたしこりで、放っておくと乳腺炎になってしまう恐れがあります。

この母乳の詰まりや乳腺炎は主に、ストレス・疲労・偏った食事などが原因で引き起こされますが、乳腺炎には大きく分けて2つのタイプがあります。

うっ滞性乳腺炎

なんらかの理由で母乳が乳管にたまった(うっ滞した)状態で、「非感染性乳腺炎」とも呼ばれます。乳房全体が赤くなる、しこりができる、しこりを触ると痛む、乳頭に水泡が見られる、微熱が出るなどの症状があらわれます。

もともと乳管の狭い初産ママや、断乳・卒乳などで母乳が供給過剰になったときに起こりやすいとされており、ひどくなると高熱が出て入院する場合もあります。

急性化膿性乳腺炎

乳腺が細菌感染することによって起こる「急性化膿性乳腺炎」は、赤ちゃんの口腔内細菌が傷ついた乳頭から感染して起こる場合と、うっ滞性乳腺炎が進行して起こる場合があります。

乳房の激しい痛みや腫れ、全身の震えと悪寒、高熱が出る、血の混ざった膿や母乳が出る、しこりができるなどの症状が出ます。

細菌感染の有無でうっ滞生乳腺炎とは区別されますが、症状はほぼ同じなので、ママ自身でどちらの乳腺炎になっているかを判断することは困難です。

乳腺炎と乳がんのしこりの違いは?

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乳腺炎になるようなしこりは、乳管が閉塞し、母乳が溜まってしまうことでできます。押したりつまんだりすると動く、弾力性がある、場所によって固かったり柔らかかったりする、などの特徴があります。

乳がんと混同されることもありますが、乳がんによるしこりは、押しても動かず、石のように固くごつごつしているという違いがあります。また、乳腺炎のような痛みや発熱もありません。

ただし、乳腺炎によるしこりでも、詰まり方次第では固くなることもあり、判別しにくいケースもあります。心配なときは、早めに母乳外来か産婦人科で相談しましょう。乳腺炎が慢性化すると、腫瘍ができやすくなるともいわれています。

乳腺炎になるしこりや母乳の詰まりを解消するには?

母乳 授乳

おっぱいのしこりを解消するには、赤ちゃんに吸ってもらうのが一番です。赤ちゃんはおなかが空いているときの方がたくさんの量を飲むので、しこりがある方の乳房から授乳するようにしましょう。角度や姿勢を少しずつ変えながら、まんべんなく吸ってもらうのがポイントです。特に、しこりの近くに赤ちゃんの下アゴがくるようにするといいですよ。

また、授乳をしながらしこりの部分を軽く押すと、しこりの解消が促されます。詰まりを悪化させないために、飲み残しの母乳は搾乳して出し切りましょう。母乳外来や産婦人科でマッサージしてもらうのもおすすめです。

入浴をして体をあたためるのもいいですね。ぬるめのお湯で体をじっくり温め、乳房マッサージをしましょう。しこりを強く押すと乳腺を傷めてしまうので、乳房全体を優しくマッサージすることが大切です。

体が温まっている入浴後に授乳すると、さらに効果的ですよ。乳腺に雑菌が入ると化膿する恐れがありますので、授乳前後に乳首を清潔に保つことも忘れないでくださいね。

乳腺炎が悪化…しこりが痛い、熱があるときの対処法は?

病院 医者 診察

しこりが腫れて痛みや熱を持っている場合は、タオルでくるんだ保冷剤・冷却ジェルシート・濡れタオルなどを当て、冷やしましょう。心地よいと感じるくらいに冷やすことで、症状をいくらか軽減させることができます。

もし熱が出てしまったら、マッサージや入浴は避け、すぐに病院へ行きましょう。母乳が詰まったまま血行を良くしてしまっては、母乳の分泌だけが促進され、おっぱいに母乳が溜まる一方。症状がどんどん悪化していくので、注意しましょう。そこまで酷くなっている場合は、すぐに病院に行くようにしてくださいね。

抗生物質などを処方されたら、授乳は一時中断して治療に専念する必要があります。薬の成分によっては、授乳を続行しても良い場合もあるので、必ずお医者さんに確認するようにしてください。

母乳のしこりや詰まりを予防するには?

めがね 本

乳腺炎の予防には、下記のような方法が効果的です。

セルフケア

日々おっぱいの状態を観察し、しこりの有無を確認する習慣をつけましょう。自分のおっぱいの状態を知ることで、自然と、自分にあう対処法がわかってくることもありますよ。

栄養バランスの良い食事

食事について、特に厳しい制限はありませんが、食事と乳腺炎の関係性については、まだ調査報告が十分にされておらず、WHOも「はっきりとした根拠はないが、高塩分・高脂肪の食事が乳腺炎の原因になると考えられている」としています(※1,2)。高塩分・高脂肪の食べ物は、控えておく方が安心でしょう。

栄養バランスを意識して、野菜や魚中心のヘルシーな食事を心がられるといいですね。

どうしても甘いものがほしくなったら、脂肪分が少なく少量で満足できる和菓子がおすすめです。ただし、お餅を食べると粘度の高いおっぱいが作られ、詰まりやすくなるので注意してください。

授乳

赤ちゃんに授乳をすることで、母乳を出し続けましょう。

両方のおっぱいからバランス良く、しっかりと乳首をくわえて飲んでもらうこと、そして、赤ちゃんのポジションを横抱きやフットボール抱きなどに変えながら授乳することで、母乳が乳房に溜まることを防ぎます(※1)。

また、断乳や卒乳などで授乳をストップすると、母乳が供給過剰になって乳腺炎になることがあります。突然授乳をストップすると、ママの体にも赤ちゃんの精神面にも良くないので、無理のない範囲で少しずつ授乳回数を減らしていくのがおすすめです。

適度な水分

母乳育児には十分な水分補給が欠かせませんが、乳腺炎のときに水分をたくさん摂ると母乳が作られすぎてしまい、症状が悪化する場合があります。

ただし、控えすぎて水分不足になってしまうのも良くないので、「多すぎず、少なすぎず」を意識しましょう。

ストレスをためない

乳腺の詰まりやすさは体質にも左右されます。普段何ともない人でも、疲れやストレスが溜まると自律神経が乱れ、母乳の出が悪くなってしまうことがあります(※1)。

育児中は難しいかもしれませんが、できるだけ、疲労やストレスを溜めないことも大切です。

授乳中にしこりが痛い!となる前に

ただでさえ大変な育児中に、乳腺炎になってしまうと心身ともに大変ですが、もし症状が出ても対処法を知っていれば、悪化させずに済みます。育児中のママはつい自分のことは後回しにしてしまいがちですが、異常を感じたら早めに対策をとようにしましょう。

できるだけ痛いと感じる前の違和感があったタイミングで、予防法を実践していけるといいですね。

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