「流産後は妊娠しやすい」と聞いたことがある女性もいるかもしれませんが、果たしてそれは本当なのでしょうか?逆に、「流産後に妊娠しても、流産を繰り返してしまう」のは、どんなケースなのでしょうか?今回は、流産後の妊娠のタイミングや流産を繰り返す原因のほか、流産したあとの生活で気をつけたいことについてご説明します。
流産する確率はどれくらい?原因は?
統計上、1回の妊娠あたり約15%の確率で自然流産が起こり、そのうち妊娠12週未満の「早期流産」が約9割、12週以降の「後期流産」が約1割です(※1)。早期流産のほとんどは、染色体異常など胎児側の原因によって起こり、残念ながら予防する方法はないといわれています。
流産を経験すると、自分に原因があるのではないかと不安になる人もいるかもしれませんが、流産の予防は難しいことです。
まずはゆっくりと休んで心身の健康を取り戻し、新たな妊娠の機会に期待することも大切でしょう。
流産後は妊娠しやすいの?
「流産後は、子宮内の環境が一度リセットされるので妊娠しやすくなる」という話を聞いたことがある人もいるかもしれませんが、それを裏付ける医学的根拠は今のところありません。
自然流産には次のとおりいくつか種類がありますが、いずれにしても流産そのものが病的なのではなく、確率の問題であるともいえます。
化学流産
妊娠の超初期段階で、妊娠検査薬では陽性反応が出たのに、その後すぐに反応が消滅してしまうケースを「化学流産」といいます。受精卵ができて着床したものの、着床が長続きせずに妊娠に至らなかった状態です。
流産と診断されないことも多く、生理の遅れを気にしていなければ妊娠したことに気づかないこともあります。
ただし、化学流産が起きる前は正常な妊娠と変わりないので、つわりなどの妊娠初期症状が現れる人もいます。
稽留流産・不全流産など
赤ちゃんが子宮の中で亡くなったまま留まっている状態を「稽留流産」といいます。また、自然流産の多くは「不全流産」で、流産が進行した結果、胎児や付属物が完全に排出されず子宮の中に一部残っている状態です。
稽留流産や不全流産の場合、「子宮内容除去術(掻爬手術)」を行い、子宮の中に残った妊娠組織を取り除きます。
内容物が自然に排出されるのを待つ「待機療法」が行われることもあります。その場合、子宮内容物が長期間残っていると感染症の原因になることもあり、医師と相談のうえ慎重に決める必要があります。
流産後の妊娠で、流産しやすいこともある?
流産した後に、妊娠しても再び流産してしまうケースもあります。
統計上、自然流産を2回繰り返す「反復流産」を経験した女性は4.2%で、3回以上繰り返す「習慣流産」も0.9%になります(※2)。これらのケースは、広く「不育症」として捉えられることもあります。
不育症の主な原因としては、染色体異常や子宮奇形、ホルモン分泌異常、子宮粘膜下筋腫などがありますが(※2)、それらの原因は流産をしたことで引き起こされたわけではなく、もともとの体質や病気であることもあります。
また、日本産科婦人科学会によると、流産後の子宮内容除去術によって合併症が起こり、習慣流産や不妊症を引き起こすリスクがあるとされていますが、医学的に解明されていないのが現状です(※3)。
流産後、妊娠しやすい体づくりをするには?
流産後は、体力の面でも、気持ちの面でも負担があるかもしれません。「早く子供を授かりたい」という気持ちもあるかもしれませんが、無理は禁物です。次のことを心がけつつ、ゆっくり日常のリズムを取り戻していきましょう。
焦らず少し期間をおいて妊活を再開する
流産した後、早く次の赤ちゃんがほしいと望むのも、自然な気持ちでしょう。その一方で、流産の繰り返しを防ぐためには焦らないことも大切です。
流産後、しばらくすると生理が再開します。排卵が復活し、体が妊娠に向けた準備を始めていることを意味しますが、まだ子宮の状態は万全ではないこともあります。少なくとも1~2回の生理を経てから妊活を開始しましょう。
子作りをお休みする期間に厳密な制限があるわけではありませんが、本人の体調なども考慮したうえで医師から指示があるはずなので、それに従いましょう。
葉酸の摂取を検討する
葉酸は、胎児が育つためには不可欠な栄養素です。
葉酸を摂取すれば流産を防げるというわけではありませんが、胎児の神経管閉鎖障害の予防にもつながります。妊活に伴ってサプリメント等で摂取を検討してみましょう。
下の関連記事でおすすめの葉酸サプリや食べ物をまとめているので、参考にしてくださいね。
適度な運動でストレス発散
過度なストレスはホルモンバランスの乱れにつながります。ウォーキングなどの適度な運動をしたり、趣味の時間を増やしたりと、自分に合った方法でストレス発散をしましょう。
特に流産後は、自分では気づかないうちに心身に負荷がかかっている可能性があります。自覚症状は無くても、いつも以上に自分の体を労わってあげてくださいね。
流産後に妊娠したい!生理はいつから?
流産の種類や元々の生理周期にもよりますが、流産してから3〜5週間後に生理が来る人が多いようです。
ただし、精神的なストレスによって遅れる場合や、流産後しばらくして生理が起こる場合もあるので、あくまでも目安として考えてくださいね。
流産後、気持ちと体調が落ち着いてきたら、基礎体温をつけてみましょう。「基礎体温のグラフが整ってきた=ホルモンバランスが整ってきた」という証拠なので、妊活を再開するタイミングを決める一つの材料になりますよ。
流産後は妊娠に向けて、検査を受けた方がいい?
流産が胎児側の染色体異常から起こる可能性が高いとはいえ、母体側に体の異変がないかどうか調べたい、という人もいると思います。
流産が起きた際には、子宮の内容物を病理検査にかけることが一般的です。「絨毛がん」や「胞状奇胎」といった、流産の原因となる特殊な病態がないかを確認します。
また、流産を2回以上繰り返すなど、不育症の可能性があるときには、不育症リスク因子の検査を検討します。主な検査は、子宮形態検査や内分泌検査、夫婦染色体検査、抗リン脂質抗体検査などです。流産後にこれらの検査をするかどうかは、主治医やパートナーと相談して決めましょう。
不育症と診断されても約80%の女性が出産できたとの報告があります(※2)。不育症検査の結果、原因が明らかになれば適切な治療を受け、特に異常がなければあまり心配しすぎず、前向きな気持ちで妊活に取り組んでくださいね。
流産後の妊娠は、あまり焦らないで
流産は、時につらい経験ですが、一度妊娠したということは、また赤ちゃんを授かれる可能性が高いということでもあります。「もう妊娠できないかも…」と悲観的になることはありません。
まずは心身の回復を優先に考え、気持ちが落ち着いてから自分たちのペースで妊活を再開しましょう。夫婦ともに心と体が安定した状態で、赤ちゃんを迎える準備ができるといいですね。