日頃から基礎体温を記録している人は、高温期が短いと「何か問題があるのでは?」と心配になるかもしれませんね。実際のところ、どんな原因が考えられるのでしょうか?今回は、高温期が短い原因と改善法、妊娠への影響などをご説明します。
高温期が10日しか続かないのは短い?
基礎体温が次のような状態であれば、女性ホルモンが正常に分泌されており、排卵も起こっていると考えられます(※1,2)。
● 3日以内に低温期から高温期へ移る
● 低温期と高温期の差が0.3〜0.6度
● 高温期が12~16日(平均14日)続く
一般的に、高温期が10日以内で終わってしまうという場合には、ホルモン分泌や排卵に何らかのトラブルがある可能性があります(※2)。
高温期が短いのはホルモン不足のせい?
基礎体温は、女性ホルモンである「卵胞ホルモン(エストロゲン)」と「黄体ホルモン(プロゲステロン)」がバランス良く分泌されている状態であれば、上のグラフのように変動します。
通常、低温期から高温期に切り替わるタイミングで排卵が起きます。そして、排卵を終えた卵胞が黄体という組織に変わり、黄体ホルモン(プロゲステロン)を分泌します。
黄体ホルモンには、子宮内膜を受精卵が着床しやすい状態に整えるとともに、基礎体温を上昇させる作用があるため、排卵後から生理が始まる頃までは「高温期」が続きます。
そのため高温期が短いという人は、基礎体温を上昇させる黄体ホルモンが十分に分泌されていない可能性があります(※1)。
高温期が短い原因は?
基礎体温の高温期が短いときには次のような原因が考えられます。
ただし、基礎体温はストレスや体調によって簡単に変動するものです。1周期で判断するのではなく、2~3周期ほど繰り返し基礎体温を記録して、様子を見ることをおすすめします。
黄体機能不全
高温期が10日以内と短い場合、「黄体機能不全」の可能性があります(※1)。
黄体機能不全の原因として、脳の視床下部や下垂体、卵巣からのホルモン分泌に障害が起きており、黄体ホルモンの分泌が不足し、子宮内膜が十分に発育しません。
卵胞発育の障害
高温期が極端に短く、特に7日以内で終わってしまう場合、「黄体化未破裂卵胞症候群」の可能性が考えられます(※2)。
この原因は明らかではありませんが、排卵が起こらないまま卵胞が黄体に変わってしまうため、黄体ホルモンが十分に分泌されないと考えられています。
高温期が短いと妊娠しにくいの?
先述のとおり、「高温期が短い」ということは、黄体ホルモンの分泌が不十分なので、子宮内膜の厚さを維持できていない状態ともいえます。
そのため、排卵や受精がうまくいっても、「受精卵が子宮内膜に着床しにくい(=妊娠しにくい)」、もしくは着床が成立しても「妊娠を維持できない」可能性があります(※1)。
しかし、詳しくは後述しますが、ホルモン剤の治療で卵胞の発育や排卵を促したり、黄体ホルモンを補充したりすることで、妊娠できる確率は高くなります。
高温期が短いときの治療法は?
高温期が短い場合、「排卵誘発剤」を使って卵胞の発育と排卵を促すことで、排卵後にしっかり黄体ホルモンが分泌されるよう治療を行うことがあります(※1)。
また、黄体ホルモン製剤を投与することで、体内の黄体ホルモンを補う方法がとられることもあります(※1)。
なお、黄体機能不全の原因として、プロラクチンというホルモンが過剰分泌される「高プロラクチン血症」という病気が潜んでいることがあり、この場合はドパミン作動薬でプロラクチンを抑制する治療が必要となります(※1)。
高温期が短いときの改善法は?
高温期が短い場合、婦人科で詳しい検査を受けて、前述のような治療をすることが最優先です。
そのうえで、日常生活のなかでホルモンバランスを改善する方法はあるのでしょうか?
当たり前のことと思うかもしれませんが、「栄養バランスのとれた食事をする」「しっかりと睡眠をとる」「適度な運動をする」「ストレスを溜めこまない」など、健康的な生活習慣を心がけることが大切です。
女性の体はデリケートで、ちょっとした環境の変化によってホルモンバランスが崩れてしまうので、基礎体温が安定しないなどのサインに気づいたときは、いつもより自分の体をいたわってあげてくださいね。
高温期が短いときは婦人科の受診を
「高温期が短い」と気づいたということは、普段から基礎体温をつけて体のリズムに気を配っている証拠。だからこそ、小さな変化でも不安になってしまうかもしれませんが、1回の周期だけでは異常があるかどうか判断できないので、焦らず2~3周期は様子を見てみましょう。
高温期が長く続かない原因として、黄体機能不全などと診断された場合には、医師と相談して自分に合った治療を受けてくださいね。