「臍帯過捻転(さいたいかねんてん)」という言葉をご存じでしょうか?臍帯(へその緒)の異常の一つで、妊娠・分娩中のトラブルの原因になります。
今回は、妊娠や分娩に影響のある臍帯異常の中でも、比較的頻度が多い「臍帯過捻転」についてまとめました。
臍帯ってなに?役割は?
臍帯とは、いわゆるへその緒で、胎盤と赤ちゃんをつなぐ管です。個人差はありますが、平均的な長さは約55cmで、太さは1~2.5cmほどです(※1)。
臍帯は伸縮性があるため、赤ちゃんが自由に動き回ったり、手足を動かして引っ張ったりしても切れないような頑丈な構造になっています。
赤ちゃんは臍帯を通して、ママの体から栄養や酸素をもらい、老廃物や二酸化炭素をママの体へ送ります。臍帯は、赤ちゃんの成長に必要不可欠な生命線なのです。
臍帯過捻転とは?どんなリスクがあるの?
通常の臍帯は、電話の受話器コードのように、ぐるぐるとらせん状にねじれています。このねじれが強すぎる状態を「臍帯過捻転」といい、反対に、ねじれがほとんどない状態を「臍帯過少捻転」といいます。
臍帯のねじれがきついと、血流の低下を招く原因となり、赤ちゃんに十分な酸素と栄養が届かず、胎児発育不全や胎児死亡、新生児仮死などにつながるリスクがあります。
また妊娠中や分娩中に胎児の心拍数が下がるなど、胎児機能不全が見られた場合は、赤ちゃんが低酸素状態に陥るのを防ぐため、緊急帝王切開や吸引分娩、鉗子分娩などが必要になることがあります(※2)。
臍帯過捻転の原因は?
臍帯過捻転の原因は、赤ちゃんがママのお腹の中で活発に動き回ることによって起こるという考え方が有力ですが、はっきりとはわかっていません(※3)。
妊婦さんにも赤ちゃんにもずっと異変が見られず、順調に妊娠生活を送っていても、ある日突然、臍帯過捻転になってしまうことも。発見される時期は妊娠20週頃から臨月までが多く、どの赤ちゃんにも起こる可能性があります。
臍帯過捻転の兆候は?エコー検査でわかるの?
臍帯過捻転には特別な兆候はなく、基本的には、母体に症状が出るということもないため、異常を見つけることは難しいとされています。
ただし、臍帯過捻転によって臍帯の血流が低下することで赤ちゃんの発育が悪くなったり、赤ちゃんの元気がなくなることで胎動が弱く感じられたりする可能性はあります。
臍帯過捻転は、妊婦健診の際に行う超音波(エコー)検査でわかることもあります。しかし、臍帯は正常な状態でもある程度ねじれているので、過捻転になっていてもどのくらい胎児に影響があるか判断するのが難しく、経過観察となることもよくあります(※2)。
臍帯過捻転は予防できる?治療法は?
臍帯過捻転ははっきりとした原因がわかっていないため、有効な予防法がないのが現状です。
また、分娩前のエコー検査で臍帯過捻転の可能性があるとされても、赤ちゃんがママのお腹の中にいるうちは対処できません。そのため、より慎重に経過を見ることで、胎児死亡などの事態をできるだけ避ける努力をすることになります。
妊婦さんができることは、普段から赤ちゃんの胎動を意識してあげること。リラックスしているときに胎動カウントをとっておくと、胎動の変化に気づきやすいですよ。
赤ちゃんの大きさやママの体型、妊娠週数などによって胎動の感じ方は異なりますが、全く感じられなくなることはありません。
急に胎動が弱くなった・極端に少なくなったと感じる場合は、速やかにかかりつけの産婦人科を受診しましょう。胎動がいつもと違う様子で違和感を感じた場合も、かかりつけの産婦人科へ相談することをおすすめします。
このような対処をしても、赤ちゃんへの影響が避けられないこともありますが、できるだけのことをしながら赤ちゃんの成長を見守っていきたいですね。
臍帯過捻転は死産のリスクがあるの?
日本産科婦人科学会・周産期委員会の2020年の報告によると、全妊娠のうち死産に至る割合は0.48%で、そのうち「臍帯の異常」が原因で起きた死産は約8.3%(1425件中118件)です(※4)。
ただし、臍帯過捻転になったからといって必ず死産してしまう、ということはありません。エコー検査で臍帯過捻転と診断されても、胎児が酸素・栄養不足になるほどではなく、無事に出産できるケースもあります。
臍帯過捻転だと診断されても、心配しすぎないで
超音波検査の精度が上がったことで、妊娠中に臍帯異常が見つかるケースも増えましたが、残念ながら有効な予防・治療法がないのが現状です。
臍帯異常と診断されると、不安な気持ちになるかもしれませんが、自分を責めたりしないでくださいね。できるだけ穏やかに妊娠生活を送りつつ、医師と一緒に落ち着いてできる限りのことをしていきましょう。