RSウイルスは、特に1歳以下の赤ちゃんが感染すると、重症化することが多いウイルスです。最初は一般的な風邪と似た症状が見られるものの、重症化すると肺炎や細気管支炎を発症することもあります。今回はRSウイルスに感染すると、高熱になるのか、解熱剤は使うべきなのかについてご紹介します。
RSウイルスとは?
RSウイルス(Respiratory syncytial virus)は、年齢を問わず、何度も感染する病原体です。RSウイルスが感染して起きるさまざまな症状を「RSウイルス感染症」といいます。
ウイルスは世界中に存在していて、特に都市部で流行しやすいという特徴があります。日本では冬に流行するといわれていましたが、最近は夏や秋にも流行することがあり、季節性がなくなりつつあります。
RSウイルスの最も注意すべき点は、赤ちゃんに感染すると重症化しやすいということです。RSウイルスは、母体から受け継いだ抗体が病気を防いでくれるといわれる、生後数週間~数ヶ月の赤ちゃんにも感染し、入院が必要になることも多くあります(※1)。
RSウイルスは高熱になるの?
RSウイルス感染症は、ウイルスに感染してから2~8日の潜伏期間のあとに、38~39度の発熱が起こるケースが多くあります(※2)。
ただし個人差が大きく、発熱しないことや、微熱で治まることもあります。逆に発熱が4~5日以上続く場合は、肺炎や細気管支炎などが起こり、重症となった状態が疑われます。
発熱の他に、鼻水や咳といった症状もあらわれます。
RSウイルスが重症になると、高熱以外にも症状がでる?
乳児がRSウイルスに感染した場合は、重症化する確率が高くなります。1歳以下でRSウイルス感染症にかかる確率は69%と高く、そのうち1/3が下気道(肺や気管支など、喉より下の呼吸器)に炎症が起こり、重症化します(※1)。
RSウイルスが重症化した場合、高熱の他に下記のような症状があらわれます。
● 喘鳴(呼吸時にゼーゼー、ヒューヒューと音がすること)
● チアノーゼ(酸素不足により、顔や手足の先が青紫色になること)
● 激しい咳
● 陥没呼吸(息を吸い込むとき、胸が陥没しているように見えること)
● 無呼吸(寝ている間などに、呼吸していない時間があること:低月齢の子供に多い)
これらの症状があらわれたら、細気管支炎や肺炎などを発症している可能性があります。
呼吸が苦しいと、眠りづらくなり、食欲もなくなるため、体力が低下してしまいます。そのため、入院して気管支拡張薬や酸素の吸入、点滴などの処置がとられることもあります。
RSウイルスで高熱になったら、解熱剤は使うべき?
前述したとおり、RSウイルス感染症になったからといって、必ず高熱が出るというわけではありませんが、38~39度の発熱が数日間続くこともあります。もし高熱が続き、ぐったりしている場合には、解熱剤で発熱を抑えることができます。
ただし基本的に、解熱剤には熱を下げる以外の効果はなく、喉の痛みや咳など、他の症状を改善することはできません。解熱剤は、「高熱が続き、つらそうにしているとき」に限って、使うようにしましょう。
RSウイルスで高熱にならないためには?
残念ながら、RSウイルス感染症の特効薬はなく、いったん発症してしまうと、できる治療は症状を和らげる対症療法だけです。
そのためRSウイルス感染症は、とにかく予防をしっかり行うこと、特に重症化の可能性が高い赤ちゃんにウイルスが感染しないように注意することが最も大切です。
大人や年長の子供は、RS感染症になっても症状が軽いことが多いため、RS感染症になっていることに気づかずに赤ちゃんと接し、感染させてしまうこともあります。
特に生後6ヶ月未満の赤ちゃんがいる家庭では、他の家族に風邪のような症状があらわれたら、赤ちゃんと接触する機会を減らす、家のなかでもマスクをするなどの対策を行いましょう。
RSウイルスは高熱以外にもさまざまな症状があります
RSウイルスに感染すると、咳やのどの痛みなど、一般的な風邪の症状が見られます。必ず発熱するわけではありませんが、38度以上の高熱がしばらく続くこともあります。
最初は症状が軽くても、なかなか治らなかったり、時間とともに悪化してきたりしたら、RSウイルス感染症が重症化している可能性もあります。特に1歳以下の赤ちゃんが重症化すると、入院が必要な場合もあるので、高熱以外にも咳や呼吸のつらさなどの症状が見られたら、早めに病院に行きましょう。
「最初は普通の風邪だと思っていたら、RSウイルスだった」という可能性もあるので、症状が長引くようなら再診してもらうことも大切ですよ。