RSウイルスの治療方法は?薬は抗生物質を使う?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

赤ちゃんや小さな子供の間で流行することが多い「RSウイルス」。名前から得体の知れないウイルスだというイメージがあるかもしれませんが、どんな病気かを知っておけば、いざというときに落ち着いて対処することができるでしょう。今回は、もしRSウイルスに感染してしまったら、どのような治療をおこなうのか、どんな薬が有効なのか、抗生物質を使うのかについてご紹介します。

RSウイルスってどんな病気?

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RSウイルスに感染して起こるさまざまな症状のことを「RSウイルス感染症」といいます。

RSウイルスは呼吸器系に影響を及ぼすウイルスで、日本のみならず世界中に存在しており、1シーズンに2回以上感染・発病してしまうことがあります。また、生涯を通して何度も繰り返し感染します。

RSウイルス感染症は、「初めて感染したときに最も重症化しやすい」という特徴があり、特に赤ちゃんは注意が必要な病気です。

RSウイルスの感染時期は?

RSウイルス感染症は、従来は冬に流行する感染病といわれていました。しかし近年は、冬以外の季節で、特に夏から秋にかけて発症例が多く報告されていて、1年を通して気をつけるべき病気になりつつあります。

RSウイルスにかかる年齢は?

RSウイルスは、1歳までに50%以上、2歳までにほぼ100%の子供が感染します(※1)。生後数ヶ月まで残る母体から受け継いだ抗体も、RSウイルスに対して効果が低いため、感染を防ぐことはできません。

2歳以降も、4歳くらいまでは発症することが多く、大人も感染します。

2013年のRSウイルス感染症の年齢別感染者数では、1歳以下が77.6%を占めています(※1)。10歳以上は約2%ですが、RSウイルスは年齢と共に症状が軽くなる傾向があるため、RSウイルス感染症になっても「ただの風邪」と判断されて、報告例が少ないことが推測されています。

RSウイルスの症状は?

RSウイルスに感染すると、4~6日の潜伏期間を経て、発熱や鼻水など、典型的な風邪の初期症状があらわれます(※1)。

多くの場合はそれらの症状だけで治まりますが、初めて感染した子供の20~30%は、下気道(喉より下部の呼吸器)にもウイルスが感染し、気管支や肺に炎症が起こります(※1)。

RSウイルスの治療に効果的な薬はある?抗生物質は?

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残念ながら、RSウイルス感染症のウイルスを殺すような特効薬がありません。ウイルスの感染によるものなので、細菌に対して効果がある抗生物質で治すこともできません。そのため、あらわれた症状を抑えるための薬を使うことで治療を行います。

症状が軽い場合と重い場合の治療法は、以下の通りです。

RSウイルスの症状が軽い場合の治療方法は?

RSウイルス感染症は、鼻水やのどの痛み、発熱が主な症状です。発熱は個人差が大きく、発熱しないことも、高熱になることもあります。

そのため、咳止め薬や去痰薬(痰を出しやすくする薬)を使ったり、高熱で食欲がないなど元気がないときには、座薬や飲み薬の解熱鎮痛剤が処方されたりします。

RSウイルスの症状が重い場合の治療方法は?

RSウイルス感染症が重症化すると、気管支炎や肺炎、中耳炎を引き起こすことがあります。特に月齢の低い赤ちゃんに多いのが、気管支の細くなった部分である細気管支が炎症を起こす、細気管支炎です。

もともと細い細気管支が、炎症によってさらに細くなると、呼吸がつらくなり、顔や手足が青紫色になるチアノーゼ反応や、喘鳴(呼吸音がゼーゼー、ヒューヒューとなること)が起きます。

RSウイルス感染症は、特に生後6週間~7ヶ月の赤ちゃんが重症化することが多く、上記のような症状を治療するために、入院での治療が推奨されることもあります(※2)。

呼吸が苦しそうな場合には酸素吸入、おっぱいやミルクを飲まない場合には気管支拡張薬の吸入や点滴を行い、回復を図ります。

RSウイルスは「パリビズマブ」で予防できる?

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残念ながら、RSウイルスの感染を防ぐための予防接種はありません。しかしRSウイルス感染症の症状をある程度緩和できるとされているのが、「パリビズマブ製剤」という筋肉注射です。

パリビズマブ製剤は、RSウイルス感染症を発症すると重症化するリスクが高い乳児に対して、投与することが推奨されています。

特に以下の条件に該当する乳幼児は、パリビズマブ製剤の投与が保険適用となっており、流行中は1ヶ月に1度、筋肉注射を行うことが推奨されています(※3)。

● 妊娠28週以下の早産で、月齢12ヶ月以下の乳児
● 妊娠29~35週の早産で、月齢6ヶ月以下の乳児
● 過去6ヶ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた、月齢24ヶ月以下の乳幼児
● 血行動態に異常がある先天性心疾患を持つ、月齢24ヶ月以下の乳幼児
● 月齢24ヶ月以下の免疫不全を伴う乳幼児
● 月齢24ヶ月以下のダウン症候群の乳幼児

RSウイルスの治療は、症状によって対応しましょう

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RSウイルスに感染することは、決して珍しいことではありません。しかし1歳以下の赤ちゃんがかかってしまうと、重症化して入院が必要になることもあります。

予防接種や特効薬がなく、治療は基本的に対症療法です。症状を抑えることしかできないので、できるだけ感染しないように予防することが一番大切です。

ママやパパ、上の子に、もし風邪のような症状があらわれたら、赤ちゃんにうつさないように気をつけてくださいね。

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