つわりは病気ではないものの、症状が悪化して「妊娠悪阻」の状態になると、ママやお腹の赤ちゃんの体が命の危険にさらされることもあるので、我慢のしすぎは禁物です。つわり対策として、産婦人科で点滴を受けた方がいいと判断されることもありますよ。今回は、つわりに使われる点滴の成分や効果、お腹の赤ちゃんへの影響などについてご説明します。
つわりで点滴する前の治療法は?
つわりは、妊娠初期に特有の生理現象の一つです。約50~80%の妊婦さんが何かしらのつわり症状に悩まされているといわれます(※1)。
つわりが悪化すると、食事を思うように摂れなくなり、栄養障害や代謝異常、臓器障害などを引き起こす「妊娠悪阻(おそ)」という状態になる恐れがあり、入院が必要となるケースも1~2%ほどあります(※1)。
つわりや妊娠悪阻の原因ははっきりとわかっていませんが、妊娠に対する不安や仕事でのストレスなどは、症状を悪化させる要因のひとつと考えられています。この場合、入院して安静に過ごし、ストレスから解放されるだけでも、吐き気や嘔吐などが治まることもあります。
また、入院中、少しでも食事できる状態であれば、炭水化物と低脂肪食を中心に、ビタミンBを補うなど、食事療法を行うこともあります。
しかし、入院しても症状が改善されず、体重減少や脱水症状が起きていたり、尿中にケトン体が検出されたりしたときは、点滴による治療を行うこともあります(※1)。
つわりの点滴にはどんな効果があるの?
それでは、つわりや妊娠悪阻の対策として使われる点滴には、どのような効果があるのでしょうか?
妊婦さんの体の状態によっても異なりますが、以下の効果を得るために点滴が用いられます。
● 脂肪代謝を改善し、尿中に多く検出されたケトン体を減らすための「ブドウ糖液」
● タンパク質を補給するための「アミノ酸製薬」
また、ウェルニッケ脳症を予防するための「ビタミンB1」も定期的に補います(※1)。
これらの輸液は、吐き気などの症状を改善するためのものというよりも、つわりや妊娠悪阻によって十分に摂れていない栄養や水分を補給したり、きちんと出なくなっている尿を出したりするためのものです。
そのため、点滴をしてもすぐに症状が治まらないこともありますが、吐き気や嘔吐を緩和するといわれている「ビタミンB6」も点滴で補給されるため(※1)、入院と点滴でだいぶ体が楽になった、という妊婦さんもいます。
ただし、あまり点滴を使用しない方針の病院もあるので、つわりがひどいときの対策についてはかかりつけの医師に相談してみましょう。
つわりの点滴による赤ちゃんへの影響は?
前述のとおり、妊娠中に使われる点滴液は栄養や水分を補うためのものであって、治療薬ではないので、赤ちゃんへの悪影響はほとんどないと考えられます。あまり心配しすぎず、ゆっくり休んで体力を回復させてくださいね。
つわりの症状があまりにひどいと、点滴に吐き止めの薬を入れることもあります。ただし、つわりが現れる妊娠初期は、胎児の器官が形成される大切な時期なので、安全性と有効性が認められている薬剤が使われます(※1)。
点滴で薬を投与するときは、不安があれば事前に医師に確認して、詳しい説明を受けてくださいね。
つわりの点滴は通院でも受けられる?
つわりが悪化し、妊娠悪阻に陥るほどの状態であれば、先述のとおり入院して安静に過ごしたうえで、点滴を受けるのが理想といえます。
しかし、仕事を休むのが難しかったり、上の子のお世話をする必要があったりすると、なかなかまとまった期間に入院できない、という人もいますよね。
病院や医師の方針にもよりますが、入院せずに数日間通院し、日帰りで点滴を受けられることもあります。
ただし、あまりにも吐き気や嘔吐がひどく、病院までの移動もままならない、といった状況であれば、家族や職場の協力を得たうえで入院し、点滴をしてもらうことも考えてみてくださいね。
つわりは我慢せず、点滴に頼ることも検討を
つわりがひどいだけで病院を受診することに躊躇する人もいるかもしれません。しかしつわりの症状は、人によって本当に様々です。
食事や水分補給ができないほど吐き気がつらいなど、日常生活に支障が出るようなら、迷わずかかりつけの医師に相談することをおすすめします。
妊娠による生理現象とはいえ、つわりのつらさを我慢しすぎると自分にとっても赤ちゃんにとってもよくありません。いざとなったら病院で点滴を受けるのも一つの方法ということを覚えておいてくださいね。