2010年から始まった「家庭的保育」という保育事業について、耳にしたことはありますか?保育者の住んでいる家などで実施される、小規模の異年齢保育のことで、「保育ママ制度」といった呼ばれ方をすることもあります。しかし、どういった施設なのか詳しく知らない方も多いと思います。そこで今回は、最近注目されている家庭的保育事業について、法的な位置づけや利用条件、運営に必要な資格や補助金の有無についてご紹介します。
家庭的保育事業とは?
家庭的保育事業は、児童福祉法にもとづいて、市区町村または市区町村の認可を受けた民間の事業者が0〜2歳児を対象に、定員1〜5人という小規模で行う保育事業の一つです(※1)。
内閣府によると、家庭的保育事業として認可されたのは958件(2016年4月1日現在)です(※2)。都市部における待機児童解消とともに、子供の数が減少傾向にある地域での保育機能の確保に対応するべく、さらなる普及が期待されています。
家庭的保育事業を利用する条件は?何歳まで?
児童福祉法では、保護者が日中働いているなどの理由で、家庭において必要な保育を受けることが困難な満3歳未満の乳児・幼児が家庭的保育の利用対象とされています。ただし、満3歳以上の子供であっても、保育が必要と認められる場合、家庭的保育を受けられることもあります(※3)。
家庭的保育を利用するためには、まず保護者が保育の必要性の認定申請をし、市区町村で認定を受ける必要があります(※4)。
なお、家庭的保育の利用にあたっては、申し込み方法や条件、保育料などが市区町村によって少しずつ異なります。詳細はお住まいの地域の保育課に問い合わせてみてくださいね。
家庭的保育事業の実施場所は?
家庭的保育は、家庭的保育者の居宅や、その他の場所(保育を行うために借りたマンションなど)の保育室で実施されていることが多いようです。
実施場所の条件としては、広さは9.9平方メートル(預かる乳幼児が3人を超える場合、4人目以降1人につき3.3平方メートルを加えた面積)以上であることが求められます。
そのほか、乳幼児の保健衛生上必要な採光、照明および換気設備があること、同一敷地内に乳幼児が遊ぶのに適した広さの庭があることなども条件になっています(※5)。
家庭的保育者(保育ママ)になるための資格は?
家庭的保育事業を行う「家庭的保育者(保育ママ)」として事業を行うためには、市区町村の認定を受ける必要があります。
その認定に際して、満たすべき要件は市区町村によって異なりますが、年齢、一定の資格(保育士、教員、助産師、保健師、看護師など)、自治体の実施する研修修了などの基準が設けられています(※6)。
家庭的保育事業への補助金は出るの?
家庭的保育事業は、通常の保育所と同じように、保育の質や安全面の確保が求められます。
持続的に運営していくために、事業者に対して運営費のほか、自治体によっては開設準備費、施設の賃貸料・改修費などに対して補助金が交付されることもあるようです。また家庭的保育者が保育士資格、看護師免許または准看護師免許を有している場合、補助金が加算されることもあります(※7)。
また、自治体によっては利用者が一定の条件を満たしている場合、保育料が減額されるなどの助成を受けられることがあります(※8)。
家庭的保育事業のメリットは?
制度として比較的新しい家庭的保育事業ですが、利用する子供にとってどのようなメリットがあるでしょうか?以下で代表的なメリットをご紹介します。
少人数できめ細やかな保育を受けられる
1人の家庭的保育者(保育ママ)が預かることができる乳幼児の数は3人以内(補助者を雇用する場合、5人以内)です(※6)。
一般的な保育園や保育所と比べると少人数のため、一人ひとりの発達の状況や興味・関心、体質や体調などにきめ細やかに対応することができるとされています。
アットホームな環境で異年齢の子と過ごせる
家庭的保育は通常、保育者の住む家などで実施されます。ほかの保育施設とは違い、子供がなじみやすい環境のため、安心して1日を過ごすことができます。
また、主に0~2歳の乳幼児が同じ空間で過ごすのが基本なので、兄弟姉妹がいない子でも異年齢の子たちと触れ合う機会を持てます。
保育者との信頼関係を築きやすい
家庭的保育の場合、基本的にいつも同じ保育者が子供たちの世話をします。そのため、子供がなつきやすいだけでなく、保護者と密な信頼関係を築けることが期待されます。
家庭的保育事業も子育ての選択肢の一つに
家庭的保育事業は、制度として明確に位置づけられたのが最近ということもあり、保育園や保育所と比べるとまだ認知度が低いかもしれません。
しかし、法律によって定められた安全基準のもと、アットホームな環境できめ細やかな保育が受けられるなど、子供の預け先を探す親にとっては安心を得られる事業です。
家庭的保育を利用できるかどうか、またどのような条件を満たせば良いのかどうかについては市区町村によって異なります。まずは、お住まいの市区町村に詳細を問い合わせてみてくださいね。