「オキシトシン」という言葉を聞いたことがありますか?これは妊娠・出産との関係が深いホルモンの一種です。最近の研究では精神的にも良い影響を与えることがわかってきており、多方面から注目を集めています。今回はオキシトシンとはどういうものか、その効果について詳しくご説明します。
オキシトシンとは?
オキシトシンは、脳の視床下部で作られて下垂体から分泌されるホルモンの一種です。哺乳類にしか分泌されず、古くから授乳と深い関係にあることがわかっていました。
赤ちゃんに乳首を吸われると脳内でオキシトシンが放出され、それが母乳の分泌を促すという仕組みです。
オキシトシンは母親だけに分泌されると考えられていましたが、最近では妊娠をしたことのない女性や男性にも分泌されていて、母乳の分泌以外にも様々な役割があることがわかっています。
オキシトシンの作用は?
オキシトシンには筋肉を収縮させる作用があり、これが妊娠・出産の様々な場面で下記のような役割を果たします(※1)。
子宮収縮の効果
オキシトシンは子宮の筋肉を収縮させて陣痛を引き起こし、赤ちゃんを押し出そうとします。そのため、出産時になかなか子宮が収縮しないときは、オキシトシンを使って促すことがあります。
ただしオキシトシンを子宮収縮薬として投与した際は、陣痛が強くなりすぎるなどの副作用が起こることもあるため、原則、他の子宮収縮薬と併用しないことになっています。
母乳分泌の効果
母乳はプロラクチンと呼ばれる別のホルモンによって生成されますが、作り出された母乳を外に出すために、オキシトシンが母乳の通り道である乳腺の周囲の筋肉を収縮させます。
オキシトシンの分泌量が多いほど、母乳の出もよくなるというわけです。
子宮復古の効果
妊娠・出産により変化した子宮が、出産後に妊娠前の状態に戻るとき、オキシトシンがその手助けをしてくれます。
オキシトシンは愛情を深める作用がある?
オキシトシンは子宮収縮や母乳分泌だけに関わりがあるホルモンだと考えられていましたが、近年、「信頼関係を深める」という精神面での重要な効果があることがわかってきました。
オキシトシンが分泌されることで、母親は赤ちゃんを愛おしく感じるようになり、母性愛が強まるといわれています。また、愛情が深まるだけではなく、恐怖心や不安などが減少してストレスもなくなり、精神的に安定する効果をもたらすこともわかってきています。
こうした作用から、オキシトシンは「愛情ホルモン」「幸せホルモン」「信頼ホルモン」「絆ホルモン」「癒やしホルモン」などと呼ばれることもあります。
オキシトシンはスキンシップで分泌量が増えるの?
オキシトシンは妊娠・出産にかかわって自然と分泌されることがわかっていますが、それ以外にも以下のような様々な行動で分泌量が増えることがわかっています(※2)。
● 人に親切にする
● 家族や周囲の人にやさしい言葉をかける、かけられる
● 好きな音楽を聴くなど、心地よいことをする
● 家族に感情を発散させる
● 子供やパートナーと手をつなぐ、ハグするなどのスキンシップをする
● 犬や猫をなでる
オキシトシンは「産後クライシス」にも作用する?
愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンですが、実は「赤ちゃん以外の人には攻撃的になる」という作用もあるようです。
これはオキシトシンの影響で「赤ちゃんを守ろう」という気持ちが強くなり、赤ちゃん以外をすべて「敵」とみなしてしまうのが原因なのではないかと考えられています。
パパも例外ではなく、育児に協力的ではないパパほど攻撃の対象になるので、これが「産後クライシス」の引き金になるのではないかといわれています。産後の育児に追われるなかでパパに対してイライラが強いのは、オキシトシンの影響もあるかもしれません。
オキシトシン効果で家族みんなが仲良く!
妊娠・出産をスムーズに進めるためにオキシトシンはとても重要です。そして、産後の夫婦円満を保つためにも無視できません。
産後、ママは赤ちゃんとのスキンシップによるオキシトシンの効果で愛情が深まっていく反面、パパに対する当たりが強くなる可能性があります。ママは、オキシトシンがイライラする原因になることを理解しておきましょう。
そして、パパは赤ちゃんのお世話に追われるママの気持ちに寄り添ったサポートをすることで、「攻撃の対象」とみなされないようにしたいですね。
産後は子供のお世話に追われがちですが、手を繋いだりハグをしたりといった夫婦同士のスキンシップで、互いにオキシトシンを分泌させ合うことも忘れないでくださいね。