「乳腺症」という言葉を聞いたことはありますか?女性であれば誰でも発症する可能性のある、おっぱいのトラブルの一つです。乳腺症自体は何か悪さをするものではありませんが、乳がんと見分けがつきにくく、注意が必要なものでもあります。今回は、乳腺症とは何か、原因や症状、治療法、しこりや痛みはあるのか、妊娠への影響はあるのかなどを詳しくご説明します。
乳腺症とは?
乳腺症とは、母乳の分泌に関わる「乳腺」と呼ばれる組織のなかで、細胞の過度な増殖や繊維化、退行などの様々な変化が起き、硬いしこりができることをいいます。
「しこりができる」と聞くと病気のように思うかもしれませんが、乳房内でのこうした変化は、加齢とともに誰にでも起こり得る、生理的な現象です。乳腺症は、この生理現象が、正常な状態とは少し違うように変化しただけなので、病気ではありません。
乳腺症の原因は?
乳腺症の原因はまだはっきりとわかっていませんが、乳腺は生理周期にあわせて発育と減少を繰り返すため、その過程で何かしらの異常が発生するのではないかと考えられています。生理以外に、妊娠、出産、授乳などでも変化します。
また乳腺は、「プロゲステロン」という黄体ホルモンと、「エストロゲン」という卵胞ホルモンの影響を受けて発育していきます。このときに何らかの理由で、「プロゲステロン」より「エストロゲン」の分泌が過剰になると、乳腺症を引き起こす可能性があるともされています。
乳腺症の症状は?しこりや痛みがある?
乳腺症の症状には、主に以下のようなものがあります。
● 乳房の張り
● 乳房の痛み
● 両方か片方の乳房にしこりが出る
● 乳頭から母乳や血のような分泌物が出る
こうした症状は月経前に強く現れて、月経後にはやわらぐのが特徴です。痛みや張りの強さ、しこりの硬さなどには個人差があり、その変化にほとんど気がつかないという人もいます。見た目には、特に変化は起こりません。
乳腺症で病院に行くタイミングや治療方法は?
乳腺症は閉経後には自然消滅することがほとんどなので、症状が現れても、基本的に経過観察で問題ありません。
しかし困ったことに、乳腺症によるしこりは、乳がんのものと区別が難しいという特徴があります(※1)。乳がんの初期段階でも、特別な痛みを感じないしこりができる場合も多いので、乳腺症だと思っていたら乳がんだったというケースも少なくありません。
そのため、乳房に痛みやしこりなどの違和感があれば、万が一のことも考えて、早めに病院で検査を受けるようにしましょう。特に、生理が終わっても痛みがなかなか弱くならないときは注意が必要です。
乳腺症であることがわかれば、特に治療は必要ありません。ただし、進行すると将来乳がんを発症するリスクが高くなるものもあるため、定期的な検診を受けるようにしてください。
また、乳房の痛みが強い場合は、エストロゲンの分泌をおさえる「ダナソール」というホルモン剤が処方されることもあります(※1)。漢方薬や鎮痛剤を使用して、対症療法を行うこともあります。
乳腺症を予防するには?
乳腺症は原因がはっきりとわかっておらず、予防することが難しいものです。
自分で乳房の状態をこまめにチェックし、早めに発見ができるようにしておきましょう。お風呂上がりなどに異常がないかを鏡にうつして確かめたり、自分で触ってしこりがないかをチェックしたりしてみてください。
特に、乳腺症が発症しやすい30代後半~閉経前後の人は、こまめに行うことをおすすめします(※1)。
また、ホルモンバランスの乱れが乳腺症の一因ではないかと考えられることもあるので、日頃からストレスをためないようにする、バランスのよい食事を摂るなど、ホルモンバランスが乱れないような生活を心がけましょう。
乳腺症のほか、女性特有の様々なトラブルの予防や、改善にもつながりますよ。
乳腺症は妊娠に影響がある?授乳はできる?
乳腺症は病気ではないので、乳腺症になったとしても、妊娠に影響を与えることはありません。出産後の授乳にも、支障はありません。乳腺症と診断されたとしても、これからの妊娠や出産を不安に思わないでくださいね。
ただし、ホルモンバランスの乱れが乳腺症の原因にある場合、月経不順や無排卵につながり、妊娠しにくい体になってしまう可能性もあります。妊娠を望む人は特に、先にも説明したようなホルモンバランスを整える生活を心がけましょう。