女性ならいつかは閉経を迎え、生理が止まります。生理がなくなると体にも様々な変化が現れますが、「おりものはどうなるの?」と疑問に思う人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、閉経後におりものは出るのか、量が多いと病気の可能性はあるのかなどをご説明します。
そもそもおりものとは?
おりものとは、子宮内や子宮頸管、腟などからの分泌液と、腟壁の古い細胞が混じりあった分泌物のことをいいます。
おりものは女性にとって重要な存在で、主に「細菌などの侵入・増殖を防いで腟内を清潔に保つこと」と「排卵期に精子が卵子と受精できるようにサポートすること」という2つの役割を担っています。
普段は酸性のおりもので腟内を清潔に保ちながら、排卵期前後には弱アルカリ性の頸管粘液を含んだおりものが多量に分泌されて、精子が腟内を移動しやすいようにサポートしています(※1,2)。
年齢でおりものの量は変化するの?
おりものは卵巣から分泌される「エストロゲン(卵胞ホルモン)」という女性ホルモンと深い関係があります。
エストロゲンには卵胞を育てて排卵につなげる作用や、おりものの分泌量を増やすことで、受精しやすい環境を整える作用があり、エストロゲンの分泌量が多いほど、おりものの分泌量も多くなります。
初潮を迎えてからは少しずつエストロゲンが分泌されるようになるので、おりものの量は年齢を重ねるごとに、徐々に増えていきます。そして、19歳頃からの性成熟期では、妊娠可能性が高い時期として最も分泌量が多くなります。
しかし、45歳頃、いわゆる更年期を迎える頃になると卵巣の機能が衰え始め、エストロゲンの分泌量が少なくなるので、おりものの量も少しずつ減少していきます(※1)。
閉経後もおりものは出る?
閉経を迎えるとおりものはほとんど分泌されなくなります。しかし、完全になくなるわけではありません。閉経を迎えて排卵が起こらなくなったとしても、脂肪組織からエストロゲンが分泌されるからです(※1)。
ただし、「排卵期に受精ができるようにサポートする」といったことが必要ないので、おりものの分泌量はかなり少なくなります。生理周期もないため、排卵期に分泌量が増えるといった変動もなくなります。
閉経後におりものが増えたら病気?臭いの?
閉経後はおりものがほとんど分泌されないので、分泌量が増えたときは体に異変が起きている可能性もあります。
たとえば細菌などに感染して腟炎を起こしていると、おりものの分泌量が増えることがあります。実際には、子宮や腟の分泌物ではなく、腟壁から膿などが排出されていることが多いのですが、腟から出てくるため、おりものの分泌量が増えたと感じることがあるようです。
また、量が増えるだけでなく、臭いにも変化が現れることがあります。閉経するまでのおりものは、無臭かやや酸っぱい臭いがすることが多いのですが、鼻につくような臭いではありません。
しかし、閉経後に腟炎を発症すると、強い臭いのする膿がおりものとして排出されるようになります(※1)。
おりものの量が少なくなる閉経後は、腟内の自浄作用が弱まって細菌に感染しやすくなるので注意してくださいね。
閉経後のおりものは萎縮性腟炎の兆候?
閉経後の細菌感染によるおりものの増加は、萎縮性腟炎と呼ばれることがあります。萎縮性腟炎は、エストロゲンが減少する閉経後に見られることが多い症状で、少量の不正出血や腟部分の掻痒感、性交痛などを感じるようになります。
細菌が繁殖するとやや血の混じった膿性のおりものが出てくるようになるため、臭いの変化で体の異変に気づく女性が多いようです。
一般的に、萎縮性腟炎はエストロゲンを含む薬を投与して治療します。原因がエストロゲンの減少のため、閉経後の女性だけでなく卵巣摘出後の女性にも見られることがあります(※1)。
閉経後のおりものの色は?
閉経前のおりものは生理周期に合わせて変化し、透明からやや白っぽい状態をしています。しかし、閉経後のおりものは量が少なく、不正出血や腟の炎症から、茶色か少し黄色っぽい色で出てくることがあります。
茶色のおりものであっても、少量であればあまり気にしすぎる必要はないとされていますが、量が多い場合は、子宮からの出血が疑われます。子宮体癌の可能性もあるため、できるだけ早く婦人科を受診するようにしましょう。
子宮体癌は40代後半から60代の更年期や閉経を迎えた女性に発症者が多い病気です。種類によっては治りやすいものもあるため、閉経後のおりものに異変を感じたら、早めに婦人科で検査を受けることが大切です(※1)。
閉経後も、おりものの状態をチェックしよう
閉経後のおりものは量が少なくなったとしても、体の異常を教えてくれる健康のバロメーターであることに変わりはありません。日頃から出ているおりものに対して、匂いや色、量などに変化がないかを観察しておくようにしましょう。
そして、少しでも体調に異変を感じたときは、早めに婦人科を受診してくださいね。