40歳を過ぎたあたりから、更年期障害が現れてくるのではないかと不安を感じる女性もいるかもしれません。更年期障害は避けられるものではありませんが、治療することによってつらい症状をやわらげることはできます。今回は、更年期障害の治療法の一つである「ホルモン補充療法」について、効果や副作用、不妊治療にも効くのかなどをご説明します。
ホルモン補充療法(HRT)とは?
「ホルモン補充療法(HRT)」とは、体内で不足している女性ホルモンを補うために、エストロゲンとプロゲステロンのホルモン剤を投与する治療法です。
主に、閉経前後の更年期障害の治療で行われますが、ホルモンバランスが崩れて不妊症になっている女性への不妊治療の一環で利用される場合もあります。
なお、ホルモン補充療法には、エストロゲンだけを単独で投与する「エストロゲン補充療法(ET)」もありますが、これは原則的に、子宮摘出を行った女性にしか行われません(※1)。
子宮がある女性に対しては、エストロゲンとプロゲステロンの両方を投与する治療法(EPT)を実施するのが一般的です(※1)。
ホルモン補充療法(HRT)の方法は?
卵巣の機能低下によるエストロゲンの減少が、更年期障害を引き起こします。
そのため、ホルモン剤によってエストロゲンを補充することで症状を緩和するのですが、エストロゲンは子宮内膜を増殖させる作用があるため、過剰に投与してしまうと乳がんや子宮体がん、卵巣がんなどの発生リスクが高くなってしまいます(※2,3)。
そこで、エストロゲン作用とのバランスを取るために、プロゲステロン製剤も投与するのがホルモン補充療法の基本です。
ホルモン製剤の併用方法は大きく「周期的併用法」と「持続的併用法」の2つがあり、症状によって使い分けます。
閉経前で、生理不順が見られる場合は、エストロゲンとプロゲステロンを服用する期間を少しずらし、途中で休薬期間を作る「周期的併用法(カウフマン療法)」を行います。
閉経を迎えた女性の場合、エストロゲンとプロゲステロンの両方を毎日飲み続ける「持続的併用法」が主な治療法です。
ホルモン補充療法(HRT)の効果は?
日本産科婦人科医会によると、ホルモン補充療法を約8週間続けることで、のぼせや発汗といった更年期障害の症状が改善します(※4)。
ただし、途中で服薬をやめてしまうと、また症状がぶり返してしまうことがあるので、医師の指示に従って正しく飲み続けることが大切です。
また、閉経後のエストロゲン減少によって起こる萎縮性腟炎や性交痛の予防・治療、骨粗しょう症や動脈硬化などの予防にも効果があります(※4)。
この場合、ホルモン補充療法を始める時期は、閉経後なるべく早い方が良いとされます。副作用で乳がんなどが発生しないよう、定期的に検査を受けながら3~5年間ホルモン剤を飲み続けます(※2,3)。
ホルモン補充療法(HRT)は不妊治療にも効く?
ホルモン補充療法のうち、カウフマン療法が不妊治療で活用されることもあります。
たとえば、エストロゲンとプロゲステロンの分泌量のバランスが崩れ、「生理がこない(無月経)」または「生理周期が極端に長い(稀発月経)」といった月経異常があり、不妊の原因となっている場合です。
まず、ホルモン剤を3週間ほど飲み続けることによって、正常な生理周期に近いホルモンバランスを作り出します。ホルモン剤を飲み終えて2~3日後に、消退出血が起きます。このサイクルを何周期か繰り返すことで、生理周期を整え、妊娠を目指すという方法です。
ホルモン補充療法(HRT)の副作用は?
ホルモン補充療法を行うにあたって、副作用への注意が必要です。
子宮がある女性の場合、程度の差はありますが、ホルモン補充療法によって半数以上の人に不正出血が見られ、乳房の張りや片頭痛などが現れることもあります(※2)。
これらの症状は、治療を続けていくうちに治まっていくことが多いですが、症状がつらいときはかかりつけ医に相談してください。
また、先述のとおり、エストロゲンをホルモン剤で補うことで、乳がんや子宮体がん、卵巣がんなどの発症リスクが高まります。自分や家族がこれらの病気になったことがある場合、リスクはさらに増えるので、ホルモン補充療法の実施については医師と慎重に検討しましょう(※2)。
ホルモン補充療法(HRT)は医師とよく相談を
ホルモン補充療法は、更年期障害や不妊症の改善に対してある程度の効果がある一方で、注意すべき副作用もあります。その両方を理解しつつ、自分の体と相談しながら、医師のアドバイスを受けて治療法を選びましょう。
ホルモン剤を服用している期間や、治療をやめたあとしばらくは、定期的に検査を受けることも忘れないでくださいね。