「台風や嵐の日に出産する人が多い」「低気圧だと陣痛が起こりやすい」という噂を聞いたことはありませんか?出産を間近に控えた妊婦さんは特に、こういった噂が気になりますよね。そこで、今回は台風や嵐で低気圧だと、本当に出産しやすいのか、陣痛が来やすいのかをご説明します。
台風だと出産が多い?低気圧で陣痛が起こりやすい?
新月や満月など、「出産、陣痛が起こりやすい」といわれている日や時間帯はいくつかありますが、台風や嵐といった「低気圧の日」も、その一つ。
実際に産院などで働く助産師さんたちから、「台風や嵐の日はお産が多くなる」という話を聞いたことがある人もいるかもしれませんね。
しかし、実際のところ、低気圧と陣痛・出産の関係を証明する科学的・医学的な根拠はありません。
台風の日の出産体験談を聞きたい!
「低気圧だと陣痛・出産が多い」ことを示す医学的なデータはないものの、先輩ママからは次のようなエピソードが聞かれることもあります。
「予定日を過ぎてもなかなか生まれなかった娘が、台風の日に生まれた」
「台風の日に出産したが、分娩室が満員で困った」
「産院に入院していたとき、台風の日は助産師さんたちが忙しそうだった」
「産気づいたのでタクシーを呼んだけれど、台風でかなり時間がかかった」
出産した本人や、出産に立ち会った人など、経験者からこのような声が次々と出てくると、「もしかしたら低気圧と関係があるのかも?」と思いたくもなりますよね。
それでは、「台風や嵐の日に出産が増える」といわれる理由として、どのようなものが考えられるでしょうか?
台風や低気圧の日は出産に適している?
私たちの体は、自分の意志に関係なく「自律神経」というものによってコントロールされています。自律神経には2種類あり、緊張したときや活動時によく働く「交感神経」と、リラックスして落ち着いているときに活発になる「副交感神経」に分けられます。
お産に対する緊張や不安が強すぎると、微弱陣痛を引き起こすことがあります(※1)。逆に、妊婦さんがリラックスしていて、副交感神経が優位に立っているときの方が、陣痛がスムーズに来るといえます。これは、リラキシンというホルモンの分泌が活発になり、産道や子宮の筋肉、骨盤がやわらかく緩み、体がお産に適した状態になるからだといわれています(※2)。
一方、台風や嵐のときにも、私たちの体は副交感神経に支配されます。
低気圧は酸素分圧の低下と、薄暗い天候を引き起こすため、人は精力的に活動することができません。つまり、台風のときには「今は活動するよりも休むときだ」と体が認識することで、副交感神経優位の状態となる、と考えられています(※3)。
これらのことに科学的根拠があるわけではありませんが、「台風の日には、出産や陣痛が起こりやすくなる」という関連性があるのかもしれませんね。
台風や嵐の日の出産は、記憶に残りやすい?
助産師さんやママから、「台風や嵐の日に出産が増える」ということが聞かれるうえに、低気圧が体に与える影響を考えると、この噂の信憑性がまったくないとは言い切れなさそうです。
一方で、人間の脳は、何もないときよりも何かあったときの方が、記憶に残りやすいものだということも忘れてはいけません。
たとえば、天気が良い日中に5人の赤ちゃんが生まれた日のことよりも、台風の夜に大雨のなか、やっとの思いで病院を訪れた妊婦さんたちや、そのとき生まれた5人の赤ちゃんのことの方がより鮮明に記憶に残りやすいものです。
台風や嵐の日の出産エピソードが多いのは、「特に記憶に残りやすい日だったから」というのも理由の一つかもしれませんね。
台風の日の出産に備えて、交通手段をチェック
低気圧だと偏頭痛がしたり、古傷が痛んだりする人も多いので、低気圧が体に与える影響は、なんとなく想像できますよね。ただし、「台風や嵐の日に陣痛や出産が多い」という噂には、特に科学的・医学的根拠があるわけではないので、ジンクスの一つとして考えておきましょう。
噂の真偽がどちらにせよ、悪天候の日の出産に備えて陣痛タクシーに登録しておくなど、交通手段の確保をしておくことをおすすめします。
いま出産を待ちわびているママたちも、今後は実際に出産された日の天候などを、後輩の妊婦さんたちにも語り継いであげてくださいね。