前置胎盤で入院は必要?安静な過ごし方とは?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

妊婦健診で、胎盤の位置が低くなっている「前置胎盤」の可能性を指摘されることがあります。妊娠後期までに胎盤の位置が変化することはあるので、診断されたからといって、その後も前置胎盤の状態が続くとは限りません。ただ、事前に知識を得て、万が一に備えておくことは大切です。今回は前置胎盤と診断された場合、そもそも入院が必要なのか、自宅安静で対応できるのか、安静な過ごし方はどういうものかなどをご紹介します。

前置胎盤とは?

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前置胎盤とは、胎盤が正常の位置よりも低いところにあり、子宮の出口(子宮口)が塞がれた状態のことです。全分娩において前置胎盤が起きる確率は、0.26~0.57%といわれています(※1)。

胎盤は通常、子宮の上側に張り付いています。しかし、何らかの理由で胎盤が子宮の下側にできてしまうと、子宮口が塞がれ、前置胎盤になってしまいます。

前置胎盤の診断は、超音波検査によって行われます。胎盤が子宮口付近にあるというのは妊娠中期頃には分かるのですが、妊娠が進むにつれて胎盤が上の方に上がり、自然と前置胎盤が解消することも少なくありません。

したがって、前置胎盤の最終診断は妊娠30~32週頃に行われます(※2)。

前置胎盤と診断されたら入院が必要?

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検査によって前置胎盤と診断されたら、出血の恐れもあるため、基本的には安静にしなければいけません。

「前置胎盤と診断されたら必ず入院するもの」と考える人もいますが、必ずしもそうなるというわけではなく、自宅安静を指示されることもあります。

入院するかどうかは、医師の判断によって決まります。また、入院管理の時期についても明確な基準があるわけではありません。

ただし、前置胎盤の可能性があり、出血が見られたときは入院管理となり、お腹が張らないように子宮収縮抑制剤が投与されるのが一般的です。また、前置胎盤になると、大量出血が起きる可能性があるので、妊娠33~34週頃から自分の血液を貯める「自己血貯血」を2~3回行うことがあります(※1)。

前置胎盤の入院生活での安静はどうすればいい?

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前置胎盤で入院した場合は、ずっとベッドの上に横になっているのが基本です。トイレやシャワー以外は、ベッドの上で生活します。症状によっては、部屋を出るのに車椅子を使わなければいけないこともあります。

自由に動くことができない生活でつらく感じてしまうかもしれませんが、無理をすると出血を起こす可能性があるので、赤ちゃんと自分の命に危険が及ばないように常に安静を心がけてください。

基本的には、入院時に生活についても具体的な指示をもらえるので、医師の指示に従ってください。入院中の行動制限について分からないときは、一人で悩まず、医師や看護師に尋ねるようにしましょう。

前置胎盤で入院した場合の費用は?保険は適用される?

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前置胎盤で入院した場合、主に「治療費」「食費」「差額ベッド代」がかかります。

前置胎盤のような妊娠トラブルで、治療が必要だと医師が判断した場合には、健康保険が適用され、治療費の自己負担額は3割になります。ただし、食費は一部負担、差額ベッド代は保険が適用されず全額負担です。

1日当たりにかかる費用の目安としては、治療費は5,000~10,000円、食費は1,080円(平成30年4月1日からは1,380円)です。

差額ベッド代とは、1人部屋や2人部屋のような特別療養環境室で入院する際にかかる費用のことです。厚生労働省によると、平成26年7月1日時点での、4人部屋の平均的な1日あたりの差額ベッド代は2,509円で、1人部屋だと7,812円(※3)。

また、入院費用がかさみ、公的医療保険制度である「高額療養費制度」の上限額を超えた場合は、その超えた分の医療費が払い戻されることがあります。もし前置胎盤で入院となったときに落ち着いて対処できるように、高額療養費制度について不明な点がある場合は、加入している医療保険の相談窓口に一度問い合わせておきましょう。

前置胎盤で自宅安静にする場合はどうする?

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入院の必要がないと判断された前置胎盤でも、大量出血を起こすリスクがあるので、自宅で安静にするように医師から指導されることがあります。ただし、安静にといわれても、どれくらい安静にしたらいいのか分かりにくいですね。

基本的には症状によって異なるので、できるだけ具体的に医師から指示をもらうことをおすすめします。たとえば、布団を上げ下げするような重いものを持ったり動かしたりする作業をしても良いのかどうか、などです。

軽度の前置胎盤であれば、家事をしたり散歩したりすることもできますが、力が必要な作業は、できるだけパートナーや家族にお願いすると安心です。

このように、できるだけお腹が張らないように気をつけることは大切ですが、前置胎盤の場合は、治療してじっと安静にしていても大量出血が起きてしまうこともあります。

前置胎盤で安静となっても落ち着いて対処しよう

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前置胎盤と診断されて入院になると、「無事に産めるのかな…」と心配になってしまうかと思います。しかし、前置胎盤で入院しても、元気な赤ちゃんを産んだママはたくさんいます。

また、自宅安静と指示された場合も、どう毎日を過ごしていけばいいのか分からず不安になることがあるかもしれません。そんなときは迷わず医師に尋ねるようにしましょう。

前置胎盤と診断されて不安が募るかもしれませんが、自分一人で抱え込まず、パートナーや両親など周囲の人に悩みを打ち明け、頼るようにしてください。

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