子供がかかる怖い病気の1つに「髄膜炎」があります。普通の風邪から症状が急激に発展して髄膜炎になり、水頭症や知的障害、麻痺、けいれんなどの後遺症が残ることがあります。それでは、髄膜炎を早期発見し、適切な治療を受けさせるにはどうしたらいいのでしょうか?今回は子供の髄膜炎について、原因や症状、治療法、予防法などをご紹介します。
髄膜炎とは?新生児や赤ちゃんもかかる?
脳の表面や脊髄を覆っている膜のことを髄膜と呼び、この髄膜がウイルスや細菌によって炎症を起こした状態が髄膜炎です(※1)。
髄膜炎はどの年齢でも発症し、赤ちゃんや高齢者でも髄膜炎になることがあります。新生児や月齢が低い赤ちゃんは自分で症状を伝えられないため、発症したことを見つけにくく、特に注意が必要です。
子供の髄膜炎の原因は?
髄膜炎を引き起こす主な原因としてはウイルスと細菌があり、それぞれによって起こる髄膜炎を「ウイルス性髄膜炎」「細菌性髄膜炎」と呼びます。
ウイルス性髄膜炎
ウイルス性髄膜炎は、エンテロウイルスやムンプスウイルスなどのウイルスが原因で起こります。
おたふく風邪にかかった子供のうち、約10%がウイルス性髄膜炎を発症させるといわれています(※2)。後遺症が残ることはほとんどありません(※1)。
細菌性髄膜炎
細菌性髄膜炎の主な原因は、インフルエンザ菌b型や肺炎球菌による感染です。細菌性髄膜炎はウイルス性髄膜炎よりも重症化しやすく、日本小児感染症学会によると、細菌性髄膜炎にかかったときの死亡率は約5%とされています(※3)。
新生児の髄膜炎、かかりやすいものは?
髄膜炎を引き起こす原因に、たくさんのウイルスや細菌の存在があります。それでは、新生児がかかりやすい髄膜炎にはどのようなものがあるのでしょうか。
新生児が感染しやすい髄膜炎は細菌性髄膜炎で、そのなかでもB群レンサ球菌や大腸菌、黄色ブドウ球菌やリステリア菌を原因とするものに特に感染しやすい傾向があります(※4)。
新生児の髄膜炎は、くしゃみや咳などから感染するケースが多いですが、B群レンサ球菌が原因の場合、生まれてくるときに、ママから産道感染した可能性もあります。
子供の髄膜炎の症状は?新生児と違う?
ウイルス性髄膜炎も細菌性髄膜炎も、子供が感染した場合の主な症状は、高熱、嘔吐、頭痛、項部硬直(首の後ろが硬くなること)です(※1)。
ほかに大泉門(ひたい上部にある頭蓋骨の隙間)が腫れたり、細菌性髄膜炎の場合は、症状がひどくなると、意識障害やけいれんが起きることがあります(※4)。目の焦点があわなくなるなどの症状も多く見られます。
新生児や乳児といった年齢の赤ちゃんが髄膜炎になった場合、頭痛があっても言葉で表現することができないので、機嫌が悪くなったり、泣いたりします。また、哺乳力(食欲)が落ちることも、新生児や乳児の髄膜炎の特徴です。
細菌性髄膜炎やエンテロウイルスが原因の髄膜炎に新生児や乳児がかかると、精神の発達が遅れる原因になる可能性もあります(※5)。
髄膜炎の症状は風邪と似ていて、人によっては発熱しか症状が出ないことも。普通の風邪だと思っていた場合でも、子供の意識が朦朧としていたり、けいれんを起こしたりしたら、早めに小児科を受診してください。
子供の髄膜炎の診断方法は?
髄膜炎の診断では、背中に細い針を刺して髄液を採取し、それを培養して病原体の有無を調べる方法が一般的です。
このほかにも、血液中の細菌を調べるために血液培養が行われたり頭部CT検査が行われたりすることもあります。
子供の髄膜炎の治療法は?
髄膜炎の治療内容は原因によって異なりますが、基本的に入院治療を行います。
ウイルス性髄膜炎の治療法
一般的に、ウイルス性髄膜炎と診断された場合、ウイルスに対する特効薬がないため、解熱剤や鎮痛剤を使いながら対症療法を行います。
状態が良くなければ、点滴を行いながら安静にすることがあります。
細菌性髄膜炎の治療法
細菌性髄膜炎は、原因になっている細菌にあわせた抗生物質が投与されます。1週間からときには3週間以上にわたって、抗生物質による点滴治療を続けます(※3)。
子供の髄膜炎で後遺症は残る?
ウイルス性髄膜炎の場合は、後遺症が残ることはほとんどありません。
一方で、細菌性髄膜炎になった場合の後遺症発症率は約20%とされています(※3)。後遺症としては感音性難聴やてんかん、水頭症や知的障害などがあります(※6)。
子供の髄膜炎の予防方法は?
子供の生命を脅かす恐れもある髄膜炎は、感染する前に予防することが大切です。現在では、赤ちゃんの定期接種に「小児用肺炎球菌ワクチン」と「ヒブワクチン」が導入されており、予防接種をきちんと受けることは、細菌性髄膜炎の予防につながります。
ウイルス性髄膜炎に関しては、原因の1つであるムンプスウイルスはおたふく風邪の原因菌でもあるので、おたふく風邪の予防接種を受ければ予防になります。
危険な髄膜炎を回避するためにも、予防接種と毎日の手洗い・うがいはきちんと行いましょう。
子供の髄膜炎は早期発見が大切
子供の髄膜炎は重症化する前に、早期発見することが大切です。風邪のような症状に加えて、意識障害やけいれんが起こったら、すぐに病院に連れて行きましょう。
新生児の場合だと発熱や嘔吐のようなはっきりとした症状が現れにくく、元気がない、ぐずって機嫌が悪い、ミルクや母乳の飲みが悪いといった症状しか現れないことがあります。もし月齢が低い赤ちゃんの体調に異変を感じたら、念のため、医師に診てもらうようにしましょう。
周りの大人が子供の異変に気づき、適切な処置をできるだけ早めに受けさせてあげてください。