おたふく風邪は、学校や幼稚園で流行が始まると長期間続くこともあるウイルス感染症です。発症すると、耳の下が腫れて痛み、発熱が重なって食欲不振に陥ってしまうこともあります。今回はおたふく風邪の潜伏期間について、どのくらいの長さで、期間中にうつることがあるのか、感染力はどのくらいあるのかなどをご紹介します。
おたふく風邪とは?
おたふく風邪は、ムンプスウイルスの飛沫感染や接触感染によって感染する、「流行性耳下腺炎」の俗称です。4~6歳の子供が発症することが多く、2005年に135万人、2007年に43万人と、毎年多くの発症者が報告されています(※1)。
発症すると、耳の下にある耳下腺が腫れ、発熱が3~4日続きます。耳下腺の腫れは発症してから3日目ころがピークとなり、その後3~7日かけて元に戻ります。
耳下腺の腫れは、片側だけから始まり、70~80%はその後反対側も腫れてきます(※1)。他に顎下腺や舌下腺が腫れたり、全身の倦怠感や頭痛、腹痛、食欲不振が見られることもあります。
腫れた耳下腺には痛みが伴い、食べ物を口に入れるとき、特に辛いものやすっぱいもの、固形物を食べるときに痛みます。痛みによって食べ物や飲み物を口に入れるのを嫌がり、栄養や水分が摂取できないと、体力が低下し、治癒が遅れてしまうこともあります。
ただし、ムンプスウイルスに感染しても、約30%の人には何も症状が見られません(※1)。また、耳下腺の腫れがなく、軽い発熱が見られたり、発熱が数日続いたりするだけのこともあります。
おたふく風邪は重症化することがあり、1~10%は髄膜炎、約1,000人に1人は片側の耳の難聴になるといわれています(※1)。男の子の場合は、まれに睾丸炎や副睾丸炎を発症することもあります。
おたふく風邪の潜伏期間は?
おたふく風邪の特徴の一つは、病原体であるムンプスウイルスに感染してから、症状があらわれるまでの潜伏期間が長いことです。潜伏期間は12~25日で、一般的には16~18日であることが多いようです(※1)。
この潜伏期間の長さゆえ、おたふく風邪を発症しても、「いつどこで感染したかわからない」という人も多くいます。
おたふく風邪の潜伏期間中の感染力は?人にうつるの?
前述したとおり、おたふく風邪の潜伏期間は非常に長いのが特徴です。ただし潜伏期間中のすべてにおいて、他の人に感染させる力があるわけではありません。
ムンプスウイルスは、唾液から排出されます。ウイルスの排出があるのは耳下腺が腫れる6日前から9日後で、特に1日前から5日後までは、高い感染リスクがあります(※1)。
そのため学校保健安全法では、おたふく風邪にかかったら、耳下腺などの腫れの症状が出てから5日が経過するまで、学校や保育園に登校・登園することはできないと定められています(※1)。
おたふく風邪の潜伏期間の予防接種は有効?
おたふく風邪には、1歳以上で使用可能なワクチンがあります。予防接種を受けることで、おおむね90%前後の人がウイルスに対する抗体を獲得し、感染を予防できるとされています(※2)。
ただし、感染者と接触したあとに急いでワクチンを接種しても、あまり効果は見込めません。症状を軽くすることはできるものの、発症を防ぐことは難しいようです。
おたふく風邪の潜伏期間は長いのが特徴
おたふく風邪の特徴は潜伏期間が長いことですが、潜伏期間が長いからといって感染者と接触したあとに予防接種を受けても、発症を防ぐことはできません。
そもそも感染しても症状があらわれないこともあるので、いつウイルスの保菌者と接触したかわからないことが多く、自分で感染を防ぐのは非常に難しい病気といえます。
2009年現在、世界118ヶ国でおたふく風邪ワクチンの定期接種が行われており、そこでの発生は激減していることがわかっています。しかし、日本のワクチン接種率は30%にとどまっており、感染が広がりやすい状況です(※1)。
おたふく風邪が周りで流行する前に予防接種を受けておけば、潜伏期間を気にすることなく日々を過ごすことができます。任意接種のため費用は自己負担ですが、助成制度がある自治体もあるので、住んでいる市区町村のホームページなどを事前に確認してみると良いでしょう。