授乳中でも、頭痛や生理痛で体調が悪くなることはありますよね。子育て中はゆっくり休む時間も取れず、薬を飲んで早く治したいと思う一方で、「母乳を通じて赤ちゃんにも薬の影響が出てしまうのでは?」と不安になることも多いのではないでしょうか。そこで今回は、そもそも授乳中に薬を飲んでいいのか、頭痛薬や痛み止めなど、飲めるものと飲めないものについて、ご紹介します。
授乳中に頭痛薬や痛み止めを飲んでもいい?
母乳は、ママの血液が主成分です。そのためママが薬を服用すると、血液にも薬の成分が混ざり、母乳に影響を与えるのではないかと心配になりますよね。母乳を通じて赤ちゃんの体内に届き、悪影響を与えるのではないかと、授乳中に薬の服用をためらう人もいるかもしれません。
しかし国立成育医療センターは、授乳中に薬の服用を控えるのは、「薬を飲んでいると母乳をあげられない」という古くからの慣習や、多くの薬の説明書に「授乳中止」と書いてあることに起因していて、科学的な裏付けは乏しい、としています(※1)。
全体の8割ほどの薬は母乳中に成分が移行したとしても量が非常に少なく、赤ちゃんの血液に届いて体のどこかに影響を与える薬はとても限られているといわれています(※1)。
また、WHO(世界保健機構)やUNICEF(国連児童基金)は、授乳におけるママと赤ちゃんへの大切な効果も考え「ほとんどの薬は非常にわずかながら母乳に移行するが、赤ちゃんに影響のあるものはほとんどなく、授乳をやめることのほうが薬を服用するよりも危険である」と発表しています(※2)。
授乳中でも頭痛薬や痛み止めなどの「薬を飲むこと」自体は問題なく、飲んでよい薬と、飲むのに注意がいる薬をしっかりと把握して対処をすることが大切です。
授乳中に飲めない薬は?頭痛薬はNG?
そもそも、授乳中の服用に適さないとされているものは、「アミオダロン」「コカイン」「ヨウ化ナトリウム(123I)」「ヨウ化ナトリウム(131I)」の成分が入っている、限られた薬です(※3)。
ただし、それらの成分が含まれない薬であれば安全というわけではなく、安全性が確立されていない薬はあります。
また、偏頭痛薬の「エルゴタミン製剤」は、母乳の量を減らしてしまう可能性があるため、授乳中の服用は避けたほうがいいといわれています(※4)。
市販薬のなかには、メーカー側が「授乳中は服用しないでください」と注意喚起しているものも多くあります。この注意は、予防の観点から書かれていることが多く、赤ちゃんに影響が出ることは非常に少ないですが、市販薬を利用したい場合は、念のため、医師や薬剤師に授乳中であることを相談しましょう。
次からは、代表的な頭痛薬・痛み止め薬に分けて、授乳中に飲めるのかどうかなどをご紹介します。
授乳中に飲める頭痛薬は?
授乳中は、睡眠不足や疲労からくる頭痛に悩まされることも多いですよね。
痛みをやわらげる頭痛薬が手放せないという人は、「アセトアミノフェン」という成分の頭痛薬がすすめられます。母乳への移行量が大変少なく、赤ちゃんへの影響がないという報告があるものです(※4)。
乳児にも使われる薬で、母乳のなかに移行する成分量は、乳児が直接服用したときよりも、はるかに少ない量です。
市販薬名では「カロナール」や「タイレノール」などです。
授乳中の頭痛薬・痛み止めとしてイブは飲める?
「イブA錠」に含まれるイブプロフェンは、母乳への成分移行が極めて少量で、授乳中に服用しても赤ちゃんへの影響が出たという報告はありません(※5)。
そのため、イブA錠については、服用前に医師や薬剤師などに相談するようにとされていますが(※6)、用法や用量をきちんと守っていれば、授乳中に服用しても大きな問題が起こるとは考えにくいでしょう。自己判断での服用は控え、事前に医師や薬剤師に相談すると安心です。
授乳中の頭痛薬・痛み止めとしてバファリンは飲める?
「バファリン」にはアスピリンという成分が含まれますが、母乳への移行は少量であり、大量に摂取しない限りはあまり問題にならないとされています(※4)。
バファリンの公式サイトによると、授乳中の服用は避けるように推奨されていますが(※7)、用法・用量を守れば危険はないと考えられます。念のため、服用の前に医師や薬剤師に相談するといいでしょう。
授乳中の頭痛薬・痛み止めとしてロキソニンは飲める?
鎮痛効果の高い「ロキソニン」には、ロキソプロフェンという成分が配合されていますが、この成分も、母乳に移行する成分の量が非常に少ないものです。
ロキソニンの公式サイトによると、授乳中の服用は避けるようにとされていますが(※8)、用法・用量を守れば、授乳中に使用しても問題ないと考えられます。服用前には、念のため医師や薬剤師に相談しましょう。
授乳中の痛み止めとしてピルを飲んでもいいの?
それでは、女性のホルモンバランスを整え、生理痛を和らげる働きがあるピルはどうなのでしょうか。
産後の低用量ピルの使用については「分娩後21日以上経過してから」とWHOのガイドラインで定められています。また日本では、低用量ピルの服用は、母乳の分泌を抑制する作用があるとして、授乳中の女性への使用は避けるべきとされています(※4)。
生理痛がひどいときは、医師としっかり相談してください。授乳中の生理痛を緩和する方法は、低用量ピル以外にも様々なものがあります。
また、授乳を十分していれば産後の生理の再開を遅らせることができるので、できる範囲でしっかりと授乳をすることも生理痛の対策になりますよ。
授乳中の頭痛薬や痛み止めは用法・用量を守って
どのような薬であっても、授乳中の服用に不安なことがあれば、念のため医師や薬剤師に相談しておくと安心です。薬局で市販薬を購入する場合も、常駐の薬剤師に授乳中であることを伝えたうえで相談しましょう。
病院で処方された薬を飲む場合も、医師の指示に従い、用法・用量を守るようにしてください。
また、国立成育医療センターの「妊娠と薬情報センター」では、痛み止めをはじめとする薬の不安に対して、電話などで相談も行っています。心配なことがあれば、こちらを利用するのもおすすめですよ。
ママの健康は赤ちゃんの健康でもあります。授乳中だからと無理に我慢をせず、薬を上手に、正しく活用してくださいね。