「乳がん」は、女性にとって気になる病気の一つだと思います。乳がんはセルフチェックが大切と言いますが、実際どのような症状が表れるのでしょうか？今回は、乳がんの種類と症状、そしてもし乳がんの手術をすることになった場合の費用についてご紹介します。
乳がんとは？
女性の乳房は、母乳を作る「乳腺」と脂肪とで成り立っています。乳腺は「乳管」と多くの「小葉」から構成されていますが、乳がんは、この乳管と小葉の細胞から発生する悪性腫瘍のことです。
乳がんの患者数は年々増加しており、女性が最もかかりやすいがんです。乳がんの患者数は30歳代後半から増加し、40歳代後半から50歳代がもっとも多くなります（※1）。
乳がんは他のがんと比べて比較的進行が遅く、早めに発見できれば5年生存率は90%以上と言われています（※2）。
乳がんには種類があるの？
乳がん細胞のほとんどは、時間の経過とともに、乳管・小葉の周囲に広がっていきます。このことを「浸潤（しんじゅん）」と言い、浸潤の有無によって、乳がんは大きく2つに分けられます。
非浸潤癌
非浸潤癌は、がん細胞が乳管・小葉の中にとどまる乳がんです。乳がんの初期段階は非浸潤癌であることが多く、この段階で適切な治療を行えば、転移や再発はほとんどありません（※1）。
浸潤癌
浸潤癌は、がん細胞が乳管・小葉の周囲にまで広がった乳がんです。浸潤癌になると、乳房内だけではなくリンパ節や他の臓器へと転移する可能性があります。乳がんと診断される場合の約80%以上は、浸潤癌の段階にまで進行しているといわれています（※1）。
乳がんの症状は？痛みはあるの？
乳がんの早期発見のカギは、定期的なセルフチェックです。乳がんに気づくきっかけとして、乳がん検診で疑いを指摘されるだけではなく、症状によって自分で気づく場合も多いようです。
乳がんには下記のような症状が見られるので、しっかり知っておきましょう。
しこり
乳がんが進行すると腫瘍が大きくなるため、乳房を触ると「しこり」が分かるようになります。
乳がんのしこりは、「こんにゃくの下に豆を置いて触ったような感触」です（※2）。それがしこりだと自分では判断するのが難しいこともありますが、仰向けになって胸を触ると分かりやすくなります。
しこりかもしれない、と胸に違和感を覚えた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
痛み・むくみ・腫れ
乳がんになると、乳房の痛みやむくみ、腫れといった症状が現れることがあります。しかしこれらの症状は、乳腺症や乳腺炎といった乳がん以外の他の病気でも起こることがあります。
そのため、痛みや腫れだけで乳がんかどうかを判断するのは難しく、詳しく検査をする必要があります（※3）。
乳房の皮膚変化
乳がんが乳房の皮膚の近くにできると、乳房にエクボのような凹みができます。この症状は、がん細胞が周囲の組織を巻き込んで収縮した際に発生します（※2）。
また、乳頭と乳輪を中心とした乳房全体がむくれて、果物のオレンジのように赤くなることがあります。これは、乳房のリンパ管にがん細胞が詰まっている場合に現れる症状です（※2）。
乳頭分泌
乳がんになると、乳頭から血のような分泌物が生じることがあります。
乳腺症や乳管内乳頭腫という病気でも同様の症状が起きることがあり、詳しい検査が必要です（※2）。
乳がんが転移している場合の症状は？
乳がんは、脇の下のリンパ節や胸骨の側のリンパ節、鎖骨の上のリンパ節に転移しやすい病気です。乳がんのリンパ節転移が進んでいる場合、脇の下にしこりができたり、リンパ液の流れがせき止められて腕がむくんだりすることがあります（※3）。
また、腰、背中、肩の痛みなどが長期間続く場合は骨への転移が疑われます。咳が出たり、息が苦しくなったりする場合は、肺転移が疑われます。肝臓への転移の場合は症状が出にくいですが、お腹が張ったり、食欲がなくなったりすることもあります（※3）。
ただし、転移した臓器によって症状は様々なので、転移していても症状が全くないこともあります。
乳がんの手術とは？
乳がんが見つかった場合、主に手術による治療を行います。乳がんの手術には次の2種類があり、乳がんの進行度合いや腫瘍のある場所など、乳がんのステージによって手術方法を決める必要があります。
手術の方法は医師との相談の上で決定します。このとき、自分の希望をきちんと伝えることが大切ですよ。
乳房切除術
乳房切除術は、乳房を全て切除する手術です。がん細胞が広範囲に広がっている場合や、多数の腫瘍ができてしまっている場合に行われます（※2）。
この手術は乳房を全て摘出してしまうため、胸のふくらみが完全になくなってしまいます。しかし、本人の希望により乳房の再建手術をすることで、ある程度元の形に戻すことができる場合もあります。
乳房温存手術
乳房温存手術とは、乳頭と乳輪を温存したまま、腫瘍の周囲のみを切除する手術です。
乳房を全て切除するのは女性にとって精神的にもかなり負担のかかることですし、美容の面から考えてもなるべく乳房は切除したくないと考える人が多いため、最近は約60%の人が乳房温存術を選択しています（※2）。
しかしこの手術では、残った乳房にがんが再発する可能性があります。そのため乳房温存手術は、基本的には再発の可能性がない場合で、本人の希望がある場合のみ適用されます。
乳房温存手術の場合は、切除しきれていないがん細胞を攻撃するため、術後に「放射線治療」を必ず行います。
乳がんの手術の費用は？
乳がんの手術をする場合、実際どのくらい費用がかかるのでしょうか？日本乳癌学会によれば、大まかに以下のような手術費がかかります（※1）。
●入院7日間・乳房温存手術をした場合
・総額：およそ75万円
・実際に支払う金額（3割負担の場合）：23万円
●入院14日間・乳房切除手術をした場合
・総額：およそ100万円
・実際に支払う金額（3割負担の場合）：30万円
これに加え、必要に応じて検査の費用や、手術以外の治療が必要な場合には別途治療費がかかります。また、乳房温存手術の術後に行われる放射線治療には、3割負担の場合14万〜21万円かかります。
病院の規模や設備によって費用は異なるので、上記の費用はあくまでも目安です。詳しい金額は、必ず病院の会計窓口で確認してくださいね。
乳がんの症状を知ってリスクを減らそう
先述のように、乳がんは早期に発見することで生存率の上がるがんです。乳がんの症状に気づいた場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
もし乳がんと診断されて手術をする場合、身体・精神的な負担も、費用の負担も大きいですが、家族と相談しながら、焦らず治療を進めていけるといいですね。
