乳口炎とは?乳頭に炎症が起きる原因は?治療方法は?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

赤ちゃんに授乳しているときに、「なんだか乳首あたりが痛いなあ」と感じたことはありませんか?もし乳首あたりに白いにきびのようなものができていれば、それは「乳口炎」かもしれません。授乳中のママに起こりやすいおっぱいトラブルは、できるだけ早めに対処することで、その後の経過もよくなります。今回は乳口炎について、原因や症状、治療方法、対処法についてご紹介します。

乳口炎とは?乳頭に炎症が起きる?

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乳首にある母乳の出口(乳口)が炎症を起こした状態を、乳口炎と呼びます。乳首の先に「白斑」と呼ばれる1~2mmくらいの白いにきびのようなものができて、母乳の出口を塞いでしまいます。ときには、血液が入った水ぶくれ(血疱)ができることもあります。

乳口炎になると、母乳が溜まってしまって、痛みやしこりなど様々な問題を引き起こします。

乳口炎の原因は?

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乳口炎が起きる主な原因は、乳首が傷ついてしまうことです。たとえば、体勢がしっくりこない状態や添い寝で授乳をすると、赤ちゃんが浅く乳首をくわえてしまい、乳首に余計な負担がかかって乳首の先を傷つけることがあります。

乳首が傷ついてしまうと、それが炎症を起こして乳口炎になるのです。また、ママが脂質の高い食事を続けていたり、過度なストレスがかかったりすると、おっぱいが詰まりやすくなり、乳口炎を引き起こすといわれています。

乳口炎の症状は?

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乳首に水泡ができて、次第に白くなるのが乳口炎の始まりです。初期は乳頭が赤くなったり、黄色くなったりすることも。ただ、一部の乳口だけが詰まって他の乳口は開通している状態なので、母乳の出にはあまり変化がなく、最初のうちは詰まっていることを自覚しにくいのです。

その後、症状が進行すると授乳中に痛みを覚えたり、おっぱいにしこりができたりして、そのときに初めて炎症が起きていることを自覚する場合がほとんどです。

そこできちんと対処すれば、軽症のまま治っていくことが多いのですが、痛いからといってそのままにしておくと、乳腺炎に進行する恐れがあります。乳腺炎になると、発熱や悪寒に悩まされたり、おっぱいを押したら痛みを感じたりするようになります。

乳口炎は原因を解消しない限り、繰り返し発症することがよくあり、一度なってしまうと授乳中はずっと悩まされるという人も多い症状です。

乳口炎になったときの対処法は?治療薬はある?

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乳口炎の特効薬はありません。医師や母乳外来を担当している助産師と相談しながら、傷ついた乳口のケアと詰まらないようにする対処法に取り組みましょう。

傷ついた乳口の炎症を抑えるには、赤ちゃんの口に入っても大丈夫な口内炎治療薬の「デスパコーワ」や、保湿剤の「ラノリン」「馬油」などを乳口に塗って、ラップでおさえるラップ療法がおすすめです。

また、乳口のケアをしながら母乳の詰まりを解消するために、赤ちゃんにおっぱいをきちんと吸ってもらうための工夫を心がけましょう。乳口炎になったからといって授乳を止めてしまうと、母乳がどんどん詰まって逆効果です。

乳口炎になったら、以下の点に気をつけながら授乳を続けてみてください。

授乳の抱き方を変える

赤ちゃんが、乳首の根元からしっかりくわえられるような抱き方を探してみましょう。また、いつも同じ抱き方はせずに、フットボール抱きや縦抱き、横抱きなどいくつかの抱き方をローテーションで行うと、乳口をまんべんなく吸ってもらうことができます。

授乳間隔を空けない

授乳の間隔を空けすぎるとおっぱいが張ってしまい、乳口への負担が大きくなります。そのため、最低でも3時間に1回は授乳をして、赤ちゃんの昼寝で授乳間隔が長く空いてしまいそうなら搾乳しておきましょう。

授乳前に乳首をほぐす

赤ちゃんに吸ってもらっても乳口の詰まりが解消されない場合は、乳首をほぐしてから授乳するようにしてみてください。

乳口炎になってしまったら、何よりもまず母乳の出口の詰まりを取リ除くようにしましょう。

母乳にいい食事を心がける

揚げ物、ピザ、菓子パン、スイーツなどの油っこい食べ物や甘い食べ物、乳製品を摂取しすぎると母乳の詰まりを引き起こすことがあるので、できるだけ控えるようにしましょう(※1)。

逆に母乳の流れを良くしてくれる食べ物としては、ごぼう、れんこん、にんじんなどの根菜類が挙げられます。また、起床後や入浴後などにこまめに水分補給することも、母乳の出を良くすることにつながりますよ。

なお、食事と母乳の質・量について、はっきりとした関係を調査した報告はありません(※2)。ただし、WHOも「根拠はないが、高塩分・高脂肪の食事は乳腺炎を引き起こすと考えられている」としています(※3)。

ストレス解消をする

疲れやストレスがたまると、母乳が詰まりやすくなります。夜の授乳で満足に睡眠が取れない場合は日中に赤ちゃんと一緒にお昼寝をしたり、天気のいい日は散歩に出て気分転換したりすると、ストレス解消ができ、母乳の出がよくなりますよ。

乳口炎の症状に気づいたら早めのケアを

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どうにかして詰まりを解消しようと白斑を針で刺してつぶそうとする人がいますが、雑菌が入って炎症を悪化させる可能性があるため、止めておきましょう。

乳口炎は日頃のケアや注意で予防できます。もしなってもしまっても軽症であればすぐに治まるものですし、ケアをしていれば徐々に痛みもなくなるので、地道に続けることが大切ですよ。

ただし、乳口炎が乳腺炎の引き金になることもあります。ケアをしても乳口炎が治らないときは、早めに母乳外来を受診しましょう。おっぱいをいたわりながら、赤ちゃんとの授乳タイムを楽しめるといいですね。

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