妊娠中は肌荒れやニキビなど、お肌のトラブルが多くなりがちです。なかでも、強いかゆみを伴う発疹が現れていたら「妊娠性痒疹(ようしん)」を疑ってください。蕁麻疹(じんましん)と間違えられがちですが、妊娠中ならではの肌の疾患です。今回は妊娠性痒疹について、原因や症状、治療法のほか、産後に跡が残らないかについてもご説明します。
妊娠性痒疹とは?手足に湿疹が現れる?
妊娠性痒疹とは、主に妊娠中期から後期にかけて現れる皮膚の疾患で、腕・脚・お腹・背中・胸など、体の至るところに発疹が現れます。
直径1cmほど皮膚が赤く盛り上がり、強いかゆみを伴います。局所的に小さな湿疹ができることもあれば、徐々に手足など体中に広がっていくこともあります。
約1~2%の妊婦さんにしか見られませんが、妊娠3〜4ヶ月頃から現れて出産が終わるまで続くのが特徴です(※1,2)。
強いかゆみのせいで皮膚がただれて炎症を起こす、かゆみのせいで夜に眠れなくなるなど、日常生活に支障が出ることもあります。
妊娠性痒疹の原因は?
妊娠性痒疹を発症する原因は、今のところはっきりとわかってはいません。
妊娠中は、母体の基礎代謝が上がるため、汗腺の機能が活発になり、汗をかきやすくなることから皮膚が敏感になりやすいといわれています(※2)。
また、女性ホルモンの「プロゲステロン」の分泌量が増えることや、大きくなった子宮が胆嚢(たんのう)を圧迫することで、胆汁のなかに含まれる酸が皮膚に溜まり、かゆみが生じるという説もあります(※2)。
発疹自体は毛細血管が開くことで現れたものなので、お風呂などに入って血行がよくなるとかゆみが強くなる傾向があります。
妊娠性痒疹は妊娠に伴う生理的な症状と考えられるため、完全になくすのは難しいですが、かゆみがひどくならないように対処する必要があります。
妊娠性痒疹の治療法は?
妊娠性痒疹は放っておくとかゆみが強くなっていくので、皮膚科を受診しましょう。かかりつけの産婦人科で相談すると、皮膚科を紹介してもらえることもあります。
妊娠性痒疹を根本的に治すことは難しいので、かゆみに対する対症療法を行います。
湿疹が出ている場合、ステロイドが入った軟膏や内服薬が処方されることがあります。また、かゆみがひどければ、抗ヒスタミン剤や保湿剤なども処方してもらえることもあります。
胎児に与える影響の少ない薬を処方してもらうため、皮膚科では必ず妊娠していることを伝えてくださいね。
妊娠性痒疹による肌のかゆみが強いからといって、自己判断で市販のかゆみ止めなどを使わないようにしましょう。
薬の使用を躊躇して、何も対処せずにかゆみを我慢していると、ストレスになってしまいます。早めに皮膚科を受診し、妊娠中でも使える薬をもらってくださいね。
妊娠性痒疹にはよもぎが効くの?
妊娠性痒疹に薬を使うのは抵抗があるという人は、「よもぎ」を使ってみるのも一つの方法です。
昔からよもぎは湿疹やアトピー性皮膚炎などの肌荒れに効くとされ、よもぎ茶やよもぎ風呂など民間療法で利用されてきました。
よもぎ成分を含んだ保湿剤(ローション)なども販売されているので、興味があればかかりつけの産婦人科医に相談したうえで使ってみてくださいね。
ちなみに、よもぎ茶には鉄分や葉酸の吸収を妨げる「タンニン」が含まれているので、妊婦さんは飲みすぎに注意しましょう。
産後に妊娠性痒疹の跡が残る可能性はある?
症状によって異なりますが、妊娠性痒疹による湿疹やかゆみは、出産して数日経つ頃には自然と消え、何事もなかったように肌が元通りになっていることもあります(※1)。
ただし、妊娠中にかゆいからといって肌を掻きむしると、発疹部分がただれてしまうこともあります。
きちんとケアをしないと、傷口が化膿して跡が残ってしまう恐れもあるので、産後の肌を守るためにも妊娠中にきちんと治療しておきましょう。
妊娠性痒疹を予防・ケアするには?
妊娠性痒疹は原因がはっきりわかっていないので、確実に予防する方法はありません。ただし、妊娠中は肌が荒れやすいので、日頃から肌をケアしてあげることが大切です。
肌を清潔に保ち、保湿する
肌の汚れや乾燥はかゆみを引き起こすので、肌を常に清潔にして保湿を心がけましょう。
お風呂あがりには、低刺激の保湿剤を使って肌をケアしてくださいね。特にお腹周りの保湿は、妊娠線の予防にもなるので一石二鳥です。
肌への刺激を避ける
肌荒れもかゆみの原因になるので、普段から肌を刺激しすぎないようにしましょう。
お風呂では無添加の石鹸やボディソープを使い、硬いボディタオルやブラシなどでこすりすぎないようにやさしく洗うのがポイントです。
汗をかいたときはやわらかいタオルで肌を抑えるようにして拭き取り、こまめに着替えをしましょう。
着るものの刺激を減らす
普段着や下着類はコットン100%など、肌触りがよく刺激が少ないものを選びましょう。縫製部分が擦れて痛いものは使わず、タグはきれいに切り取るのもおすすめです。
洗濯するときは洗剤や柔軟剤を少なめに使い、すすぎは念入りに。すすぎ残しの洗剤や柔軟剤が肌に刺激を与えることもあります。
妊娠性痒疹は早めに病院に相談しよう
妊娠性痒疹を発症すると、かゆみがひどくてイライラしてしまいがちです。妊娠中にずっと続くこともあるので、発疹が現れる場所によっては、美容面でも気になってしまうかもしれません。
湿疹がなかなか消えなかったり、かゆみが強かったりするときは、早めに産婦人科や皮膚科で相談しましょう。爪で掻きむしったりせず、症状がひどくなる前に対処することが大切です。
妊娠性痒疹以外にも妊娠中には様々な肌のトラブルが起きますが、自己判断は禁物です。病院で処方された薬を塗ったり、身につけるものや保湿に気をつけたりしながら、できるだけストレスのない日々を過ごせるといいですね。