男の子が中学生くらいになると起きる「声変わり」。声変わりすると身長が伸びなくなるという話を聞いたことはありませんか？ そんなことを言われたら子供本人も心配になるでしょうし、ママもびっくりすると同時に「もっと伸びると思ってたのに」とがっかりしてしまうかもしれませんね。そこで今回は、声変わりとは何なのか、声変わりが起きる時期、そして本当に身長が伸びないのかについて説明します。
声変わり（変声）とは？
声変わりとは、性ホルモンの分泌により起こる思春期の体の変化（二次性徴）の一つで、声が低くなることを指します。
声変わりが起きる前の子供は、男女ともに声の高さはほとんど同じです。しかし、二次性徴の時期になると男の子の声が低くなります。その理由はのど全体が大きくなって声帯が長くなるためです。声の高さは声帯の長さと関係していて、短いと高く、長いと低い声が出ます。
声変わりによって声がどの程度低くなるかは個人差がありますが、1オクターブ以上低くなる男の子もいます。ただし、一気に声変わりが起きるのではなく、通常は6〜10ヶ月という期間をかけて少しずつ低くなっていきます（※1）。
女の子にも声変わりはあるの？
声変わりというと、男の子に起こる現象と思われがちです。しかし、声変わりは女の子にも起こります。
ただし、男の子と女の子では声変わりの変化の幅が異なり、女の子は二次性徴を迎えても声の高さは男の子ほど変化しません。そのため、本人もまわりの人も気づかないことがよくあります。
声変わりの時期（変声期）はいつ？
一般的に、声変わりは12歳から14歳の間で起こります（※1）。声変わりを迎える時期は、二次性徴で見られる他の変化と同じように、男の子よりも女の子の方が早く見られる傾向にあります。
ただし声変わりの時期は個人差が大きく、早い人もいれば、なかなか声変わりが起こらない人もいます。早い人だと小学校5年生くらいから、遅い人だと高校生になっても声変わりが起こらない人もいるとされています。
声変わりと身長の関係は？
声変わりと身長の伸びにはどちらも性ホルモンが関係しています。
声変わりは性ホルモンによって引き起こされる二次性徴の一つですが、この性ホルモンによって私たちの骨は子供の骨から大人の骨へと変化していき、それに伴って身長も急激に伸びます（※2）。
逆にいうと、二次性徴の時期が終わって大人の骨になりきってしまうと、身長は伸びなくなってしまうのです。
声変わりは二次性徴期の半ばから終わりごろにかけて起きるのが一般的なので、声変わりが終わるころには骨が完成し、身長の伸びが止まる可能性があります。声変わりが起きると身長が止まると考えられているのはそのためです。
声変わりすると身長は伸びない？
声変わりの起きる二次性徴期は、子供の身長がもっとも伸びる時期です。この期間、一般的に男の子は約30cm、女の子は約25cmも身長が伸びます（※3）。
一方で、大人になったときの身長は二次性徴期に入ったときの身長に大きく関係しています。二次性徴の開始が早かった場合、大人になったときの最終的な身長も低くなってしまいます。
声変わりの時期が早いということは二次性徴期を迎えるのも早いということです。そして、早く始まればその分だけ終わりも早くやってくる傾向にあります。
そのため、声変わりの時期が早い人は十分な身長に満たないまま二次性徴期を迎えていることになり、大人になったときに身長が低くなってしまう可能性があります。
声変わりしても身長を伸ばすには？
では、声変わりの時期になった子供の身長を伸ばすことはできるのでしょうか？
子供の成長には栄養や睡眠、運動などのさまざまな要因が関係しています。もし、子供が偏った食事をしていたり、睡眠不足や運動不足であれば、それらを改善することで声変わりの時期がきても身長が伸びるかもしれません。
ただし、サプリメントには要注意です。テレビやインターネットで「身長を伸ばすサプリメント」が宣伝されていますが、飲んだからといって子供の身長は伸びません。今あるサプリメントには、声変わりの有無に関わらず、身長を伸ばす医学的根拠がまったくないからです。
声変わりした子供の身長が気になるのであれば、悩んだりせずに小児科で相談してみましょう（※3）。
声変わりの時期が早いと問題がある？
声変わりの時期には個人差がありますが、早すぎる声変わりは「思春期早発症」の可能性もあります。
思春期早発症は、男の子では9歳未満で精巣の容積が増加するなど、通常よりも2〜3年早く二次性徴を迎えてしまう疾患で、以下の3つの問題点があります。
● 身長の伸びる速度が速いため、最終的に身長が低くなり成長が止まってしまう
● 周囲よりも早く体の変化が起きるため、からかわれたり、いじめられたりすることがある
● 脳腫瘍などの疾患が発見されることがある
男の子の場合には、発見の困難な病気が隠れていることが多いので、子供の声変わりの時期が早いと感じたら小児科に相談しましょう（※4）。
声変わりの時期が遅いとどうなる？
声変わりが遅いこと自体は病気ではありません。
しかし、もしかしたら声帯自体は低い声を出すように変化しているにもかかわらず、うまく声変わりが起こらない変声期障害の場合もあります。そのため、気になる場合は耳鼻咽喉科に相談してみるとよいでしょう（※1）。
声変わりで身長が止まるのは正常です
声変わりが起きるのも、身長の伸びが止まるのも、どちらも子供の体から大人の体へと成長した証。病気ではなく、誰にでも起こる正常な変化です。
思春期の子供は大人へと変化していく自分の体に戸惑いを覚え、心に大きな負担がかかりがちです。そんな子供の変化を優しく見守りながら、声変わりや身長が止まることに不安を感じないようサポートしていってあげたいですね。
