ノロウイルスとロタウイルスの違いは?症状・潜伏期間も違うの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

子供を持つママ・パパなら一度は聞いたことのある「ノロウイルス」と「ロタウイルス」。共に下痢や発熱などの症状を引き起こすウイルスですが、この2つの違い、知っていますか?今回は、ノロウイルスとロタウイルスの症状や潜伏期間などの違いについて、ご紹介します。

ノロウイルスとは?

食材 食べもの 料理

ノロウイルスは、感染すると下痢や嘔吐などの感染性胃腸炎や食中毒を引き起こすウイルスで、乳幼児からお年寄りまで、世代を問わず感染します。

ノロウイルスの感染力は非常に強く、2015年の食中毒患者のうち、65.5%がこのノロウイルス感染者というデータもあります(※1)。

免疫力が低い子供やお年寄りがノロウイルスに感染すると、健康な大人よりも重症化して脱水症状などになるリスクが高くなります(※1)。

ロタウイルスとは?

ウイルス 感染 細菌

ロタウイルスは、感染すると下痢などの急性胃腸炎を引き起こすウイルスで、特に0~6歳ころの乳幼児期に感染することが多いという特徴があります(※2)。感染力が非常に強く、5歳までにほぼ全ての子供が感染すると言われています。

大人がロタウイルスに感染しても、免疫ができているため症状が出ないことがほとんどですが、乳幼児は重症化すると脱水症状になることもあります(※2)。

5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はこのロタウイルスが原因です(※2)。

ノロウイルスとロタウイルスの違い:症状

下痢 腹痛 お腹が痛い トイレ

ノロウイルスとロタウイルスの症状には違いがほとんどありませんが、乳幼児の症状と便の色に差が見られます。

ノロウイルスとロタウイルスの主な症状は共通していて、感染すると、嘔吐、水っぽい下痢、発熱などが現れます。また、まれにですが、いずれにも痙攣の症状が見られることがあります(※3,4)。

乳幼児では、症状の頻度に少し違いがあり、ノロウイルスでは嘔吐(96%)・下痢(70%)・発熱(17%)となるのに対し、ロタウイルスでは嘔吐(95%)・下痢(93%)・発熱(82%)と、ロタウイルスの方が熱が出る可能性が高いです(※3)。

また、ロタウイルスの感染者の便は白っぽくなることが多くあります(※3)。

▼症状について

ノロウイルス ロタウイルス
主な症状 嘔吐
下痢
発熱
痙攣(まれに)
嘔吐
下痢(白っぽい)
発熱
痙攣(乳児にあり)

ノロウイルスとロタウイルスの違い:潜伏期間

カレンダー スケジュール 期間 日程

ノロウイルスとロタウイルスの潜伏期間には、数日間の違いがあります。

ノロウイルスの感染から発症までの潜伏期間が1~2日間なのに対し、ロタウイルスは2~4日間です。ノロウイルスの方が感染してから早く症状が現れる傾向があります(※1,2)。

▼潜伏期間について

ノロウイルス ロタウイルス
潜伏期間 1~2日間 2~4日間

ノロウイルスとロタウイルスの違い:検査

顕微鏡 検査

ノロウイルスとロタウイルスの検査方法に大きな違いはなく、一般的に便の検査によって判断されます。病院の検査で使う検査キットのなかには、ひとつでノロウイルスとロタウイルスの2種類の感染を判定できるものもあります。

検査キットの結果が出る時間はまちまちですが、15分から2時間ほどで結果が出るものが多いため、検査当日に結果が分かることがほとんどです。

また、検査にかかる費用については、ノロウイルスの検査では3歳未満と65歳以上では健康保険が適用されているものの、その他の年齢では実費負担となります(※1)。一方で、ロタウイルスの検査(イムノクロマト法)では、全年齢で健康保険が適用されます(※2)。

ただし、どちらの検査も医師が必要と判断した場合にのみ受けられるので、感染の疑いがある場合はまずかかりつけの医師に相談しましょう。

▼検査法について

ノロウイルス ロタウイルス
病院で主に
行われる検査
検査キット 検査キット
健康保険の
適用年齢
3歳未満か65歳以上 全年齢

ノロウイルスとロタウイルスの違い:消毒・予防

ノロウイルスとロタウイルスの消毒方法に違いはありません。両方ともアルコールで消毒できないため、塩素消毒を行います。

塩素消毒に使う消毒液は、ハイターなど、市販されている塩素系漂白剤を薄めて作ることも可能です。

また、感染予防のためのワクチンはロタウイルスだけにあり、ノロウイルスには存在しません。

ロタウイルスのワクチンには2種類あり、2回接種するロタウイルスワクチンの場合は生後6~24週の間に、3回接種するワクチンの場合は生後6~32週の間に接種することが推奨されています(※2)。ただし、どちらのワクチンも初回の接種は生後14週6日までに行います。

▼消毒・予防法について

ノロウイルス ロタウイルス
消毒方法 塩素消毒 塩素消毒
ワクチン なし あり

ノロウイルスとロタウイルスの違い:感染経路

選択 選ぶ 女性 迷い

ノロウイルスとロタウイルスの感染経路には若干の違いがあります。

ノロウイルスは、感染者の便に含まれるウイルスが手などについて口に入ったり、便が乾燥することにより空中に放出されたウイルスを吸い込んだりすることで感染します(※1)。

一方ロタウイルスでは、便からの空気感染はなく、経口感染だけになります(※2)。

▼感染経路について

ノロウイルス ロタウイルス
感染経路 経口感染
食べ物からの感染
空気感染
経口感染

ノロウイルスとロタウイルスの違い:流行する時期

冬 温度

ノロウイルスとロタウイルスが流行する時期には若干の違いがあります。

ノロウイルスの感染者が最も増えるのは、11~12月の冬の時期にかけてです。一方でロタウイルスの感染者は、3~4月の春の時期に多く見られます(※3)。

▼流行する時期について

ノロウイルス ロタウイルス
流行する時期 11~12月 3~4月

ノロウイルスとロタウイルスの違いを知って、冷静に判断を

違い どっち 比較 比べる 差

主な症状として、嘔吐や下痢、発熱などがあり、一見するとその違いが分かりにくいノロウイルスとロタウイルス。しかし、便の色や流行する時期などの違いを知っていれば、子供に下痢や嘔吐の症状が出ていたとき、判断の目安のひとつになるでしょう。

ただし、これらはあくまで目安です。「感染したかな」と思ったら、自己判断せず、かかりつけの病院を受診しましょう。最後に、改めてノロウイルスとロタウイルスの違いを一覧にしたので、参考にしてください。

▼ノロウイルスとロタウイルスの違い

ノロウイルス ロタウイルス
主な症状 嘔吐
下痢
発熱
痙攣(まれに)
嘔吐
下痢(白っぽい)
発熱
痙攣(まれに)
潜伏期間 1~2日間 2~4日間
病院で主に
行われる検査
検査キット 検査キット
健康保険の
適用年齢
3歳未満か65歳以上 全年齢
消毒方法 塩素消毒 塩素消毒
ワクチン なし あり
感染経路 経口感染
食べ物からの感染
空気感染
経口感染
流行する時期 11月~12月 3月~4月

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