アデノウイルスの子供の症状は?熱が出る?治療には薬を使うの?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

アデノウイルスは一年を通して感染し、発熱や肺炎、扁桃炎、結膜炎など、さまざまな症状を引き起こします。今回は子供がアデノウイルスにかかったとき、どのような症状が出るのか、どんな治療法があるのか、薬を使うのかなどについてご紹介します。

アデノウイルス感染症ってどんな病気?

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アデノウイルスは、いわゆる風邪の症状を引き起こす主要なウイルスの一つです。1型から51型まで、51もの血清型があり、型によって引き起こされる症状が異なる傾向があります(※1)。

アデノウイルスは、多くの場合5~7日の潜伏期間があります(※2)。便や飛沫に接触することにより感染するため、感染者の便に触れた手や、感染者のくしゃみや鼻水で飛んだ飛沫を介して感染します。またウイルスの型が多いため、何度も感染を繰り返してしまいます。

アデノウイルスに感染すると、秋から初春にかけては、肺や気管支などに起こるタイプの感染症がみられます(※1)。一方で夏に多いのは、喉と結膜に炎症が起こる咽頭結膜炎(プール熱)です。そのほか、発熱や胃腸炎なども引き起こします。

ただしアデノウイルスに感染しても何の症状も出ないことが多く、症状があらわれるのは感染した人の1/3ほどです(※3)。

アデノウイルスは子供がかかりやすい?

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アデノウイルスは、子供から大人まで年齢を問わず感染します。ただし、後述する咽頭結膜熱(プール熱)や胃腸炎は、子供で特に起こりやすい病気です。

また、アデノウイルスは咳や鼻水で排出された飛沫から感染するため、おもちゃやドアノブ、タオルなどを通してウイルスの感染が広がってしまいます。

そのため、保育園や学校などで流行しやすく、自己対策を行いにくい子供の方が感染しやすいといえます。

アデノウイルスの子供の検査法は?

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子供がアデノウイルスに感染しているかどうかは、扁桃腺の粘液を採取する咽頭ぬぐい液などを検体として使う迅速検査キットによって簡単に判定することができます。

しかしその精度は80%ほどで、他のウイルスよりも精度が低いという特徴があります(※4)。そのため陰性と判定されても、実際はアデノウイルスに感染していることもあります。

アデノウイルスの子供の症状は?

子供がアデノウイルスに感染してあらわれる症状は、以下の通りです。

咳や高熱がでる

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アデノウイルスが呼吸器に感染すると、鼻水や咳、のどの痛み、発熱などが見られます。高熱になったり、肺や気管支にもウイルスが感染して、肺炎や気管支炎になったりすることもあります(※3)。

また咽頭結膜熱(プール熱)の場合は、39~40度の高熱と37~38度前後の微熱の間を上がったり下がったりする状態が、4~5日間続きます(※2)。さらに扁桃腺が腫れて痛み、頭痛が伴うこともあります。

目が充血する

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アデノウイルスの感染による目の充血で考えられるのは、咽頭結膜熱と流行性角結膜炎です(※2)。どちらとも、両目もしくは片目が赤く充血し、目やにが出ます。

なお、咽頭結膜熱は症状がなくなったあと2日間、流行性角結膜炎は伝染の恐れがなくなるまで、学校や保育園は登校・登園禁止となります(※2)。

腹痛、下痢、嘔吐などがみられる

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アデノウイルスが胃腸炎を引き起こすと、腹痛や嘔吐、下痢などの症状がみられることもあります。発熱を伴うこともありますが、多くは微熱で治まります。

また咽頭結膜熱の場合も、腹痛や下痢を伴うことがあります。

排尿時に痛みが伴う

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おしっこをするときに痛みがあったり、真っ赤な血尿が出たりした場合は、アデノウイルスが出血性膀胱炎を引き起こしている疑いがあります。

多くの場合、症状は2~3日で良くなりますが、血尿は10日ほど続くこともあります(※3)。その多くは、むくみや高血圧などの腎障害もなく改善していきます。

アデノウイルスにかかった子供は入院が必要なこともある?

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前述したとおり、アデノウイルスは肺炎や気管支炎を引き起こすことがあります。これらの症状が悪化すると、呼吸がつらくなり、食事や水分がとれず、血中酸素濃度が低下してしまうことがあります。

その際は、入院して酸素吸入や気管支拡張薬の点滴などを行うこともあります。

また下痢や嘔吐がひどく、水分補給もままならない状態になると、脱水になってしまいます。その際も、入院をして点滴を行うこともあります。

アデノウイルスの子供の治療には薬を使う?

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アデノウイルス感染症にかかった場合は、あらわれた症状に対して治療を行う「対症療法」が基本になります。例えば下痢に対しては下痢止めを、高熱に対しては解熱剤を使用することがあります。

ただしアデノウイルス感染症は、ほとんどの場合自然に治るため、必ず薬を使わなければいけないということではありません。

アデノウイルスは子供にかかる前に予防を

アデノウイルスは、目に感染すれば結膜炎、鼻や口から感染すれば呼吸器や消化器の症状など、様々な症状を引き起こします。

重症にならなければ一般的な風邪と思われることが多いものの、咽頭結膜熱や流行性角結膜炎にかかると、学校や保育園の登校・登園停止期間が設けられているため、注意が必要です。

帰宅時やトイレの後、食事の前には手をよく洗う、ハンカチやタオルは他人と共有せず自分専用のものを使うなど、日々の予防策が感染を防ぐためには一番効果的です。日頃から、感染しないような生活習慣を心がけたいですね。

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