まだ首もすわっていない生後2ヶ月頃から、赤ちゃんはいくつもの予防接種を受けなければなりません。そのひとつとして「小児用肺炎球菌ワクチン」がありますが、肺炎球菌とはどんなものなのでしょうか?またそれが引き起こす肺炎球菌感染症とはどんなものなのでしょうか?今回は、肺炎球菌感染症の症状や治療法についてご紹介します。
肺炎球菌感染症とは?子供がなりやすいの?
肺炎球菌とは、インフルエンザ桿菌(かんきん)と並んで、赤ちゃんや子供の肺炎や中耳炎など、呼吸器の病気の主な原因とされる病原菌です。肺炎球菌感染症は、文字通りこの肺炎球菌が引き起こす感染症の総称です。
肺炎球菌は保持していると必ず病気にかかるわけではなく、生後6ヶ月~5歳の子供の90%は鼻咽腔(喉と食道の間)に肺炎球菌を持っているといわれています(※1)。
特に集団保育などに通っている2歳前後の子供に多く、また冬に増える菌です(※2)。
肺炎球菌感染症の症状と治療法は?
肺炎球菌感染症の具体的な病気には、以下のようなものがあります。
気管支炎
発熱や倦怠感が続き、咳や痰が1~3週間続くこともあります(※1)。抗菌薬が処方されることもありますが、基本的には自然に治るのを待つしかありません。
赤ちゃんの場合は体勢を定期的に変えてあげたり、子供の場合は部屋の湿度を上げることで苦痛を和らげることができます。
肺炎
突然発熱したり、風邪のような症状が出たあとに高熱が続きます。急激に呼吸困難が進行するのが細菌性肺炎の特徴です(※2)。
1~4歳の子供が肺炎にかかる際、もっとも大きな原因は細菌の感染によるもので、その多くはインフルエンザ桿菌と肺炎球菌によるものです。
中耳炎
風邪から中耳炎を併発することが多く、中耳にウイルスが入り込むことで感染を起こします。39~40度の高熱が続いたり、耳から膿が出たりするのが特徴です(※1)。
急性中耳炎であれば薬なしでも2~3日で治ることもありますが、再発を繰り返すと慢性化して滲出性中耳炎になってしまう場合もあります。
髄膜炎
高熱や嘔吐、頭痛といった症状のほか、悪化すると顔色が悪くなったり、けいれんが起きたり、意識が朦朧としたりすることもあります。
風邪と間違いやすい症状ですが、髄膜炎にかかった子供の2%が亡くなり、10%に難聴や精神の発達障害、四肢の麻痺、てんかんなどの後遺症が残ってしまうとされています(※3)。
また、小さい子供ほど発症しやすく、特に0歳児でのリスクが高いという特徴があります。
肺炎球菌感染症は予防接種で防げる?
肺炎球菌は多くの子供が持っているにもかかわらず、感染症を引き起こすと死に至ることもある大変危険なものです。
そこで日本では2010年より、プレベナー(沈降7価肺炎球菌結合型ワクチン)というワクチンが予防接種で使われ始めました(※4)。これは特に重篤な肺炎球菌感染症を引き起こす7種類の肺炎球菌を含んでいるものです。
それにより、子供の肺炎球菌による髄膜炎の羅漢率は10万人あたり約2.8人(2008~2010年)から約0.8人(2012年)に減少しました。(※3)
現在は、13種類の肺炎球菌に対応するプレベナー13(沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン)に変更されており、より大きな効果を発揮していると期待されます。
なお小児用肺炎球菌ワクチンの予防接種は、生後2ヶ月から受けることができ、1~1歳3ヶ月までの間に4回受けることが推奨されています(※5)。
また小児用肺炎球菌ワクチンは予防接種法で指定されているため、定期接種の期間内であれば無料で受けることができます。
肺炎球菌ワクチンに副作用はある?
赤ちゃんには必ず受けることが推奨されている小児用肺炎球菌ワクチンですが、予防接種を受けたあとに下記のような副反応(副作用)が起こりうるとされています(※3)。
発生確率10%以上
● 注射部位が赤く腫れる、痛み
● 食欲がなくなる
● うとうとする、不機嫌になる、眠りが浅い
● 発熱する
発生確率1~10%
● じんましんや発疹がでる
● 鼻が詰まる
● 注射部位が硬くなる
● 下痢になる
またこのほか、まれに呼吸困難や痙攣を起こすこともあります。
予防接種を受けた後に発熱する確率は70%以上という調査結果もあるので、予防接種を受けた後は赤ちゃんの様子をゆっくり自宅で見られるように、あらかじめ計画しておきましょう(※3)。
肺炎球菌感染症はワクチンで予防しましょう
肺炎球菌のワクチンは、国から努力義務(できる限り受ける義務がある)と指定されている予防接種です。
命に関わる肺炎球菌感染症にかかる可能性を大幅に減らすことができるので、きちんと接種するようにしてくださいね。