髄膜に細菌が入り込んで起こる「細菌性髄膜炎」。発症すると、後遺症が残ったり、命を落としたりすることもある危険な病気なのですが、一体何が原因で起こるのでしょうか?また、どのように予防すれば良いのでしょうか?今回は細菌性髄膜炎について、原因や症状、治療法、予防法などをご紹介します。
細菌性髄膜炎とは?
細菌性髄膜炎とは、脳や脊髄を覆っている髄膜に細菌が入り込んで、炎症が起きる病気です。
以前は、多数の子供が細菌性髄膜炎を発症し、命の危険にさらされていました。しかし、2013年から細菌性髄膜炎の予防接種が公費負担となったことで、予防接種を受ける子供の数が増え、発症者の数は減少しています(※1)。
細菌性髄膜炎はどの年齢でも発症する可能性があるのですが、月齢が低い赤ちゃんは症状を見つけにくいので、特に注意しなければいけません(※2)。
細菌性髄膜炎の原因は?
新生児の細菌性髄膜炎は、出産時に産道で通る際などに、B群レンサ球菌(GBS)や大腸菌に感染することで起こります。
一方、生後3ヶ月以上の乳幼児の細菌性髄膜炎は、感染者の呼吸器からの分泌物に触れるなどして、肺炎球菌やヒブ(インフルエンザ菌b型)に感染することで起こります(※3)。
細菌性髄膜炎の症状は?
細菌性髄膜炎の主な症状は、高熱や嘔吐、頭痛が挙げられます。場合によっては、大泉門(ひたい上部にある頭蓋骨の隙間)の腫れや、顔色不良、意識状態の悪化もあります。
頭痛があっても、言葉で症状を表現できない赤ちゃんは、機嫌が悪くなったり、泣いたり、母乳やミルクを吸う力が弱くなったりすることによって、体に異変が起きていることを訴えます。また、症状が悪化すると、意識が朦朧としたり、痙攣を起こしたりします。
細菌性髄膜炎の症状は風邪の症状と似ており、見分けがつきにくいことがあります。普通の風邪だと思っていても、意識障害や痙攣が現れたら、すぐに小児科を受診してください。
細菌性髄膜炎の診断方法は?
細菌性髄膜炎の診断では、病原体の有無を調べるために、背中に細い針を刺して髄液を採取し、それを培養するのが一般的です。
このほかにも、血液培養を行って血液中の細菌を調べたり、超音波検査や頭部CT検査を行って膿瘍(のうよう)の有無を調べたりすることもあります(※3)。
細菌性髄膜炎の治療法は?後遺症はあるの?
細菌性髄膜炎が発症した場合、基本的には病院で入院して、治療を行います。
治療では、原因になっている細菌にあわせた抗生物質の点滴治療を、2週間~1ヶ月にわたって続けます(※2)。
日本小児感染症学会によると、細菌性髄膜炎になった場合に後遺症を発症する確率は約20%で、後遺症としては、てんかんや水頭症、難聴、知的障害などがあります(※4)。そして、新生児が細菌性髄膜炎を起こした場合の死亡率は、おおよそ25%です(※3)。
細菌性髄膜炎の予防法は?
細菌性髄膜炎は、子供の生命を脅かす可能性がある危険な病気で、予防することが肝心です。
赤ちゃんの定期接種として「小児用肺炎球菌ワクチン」と「ヒブワクチン」があり、生後2ヶ月から接種できます。これらの予防接種をきちんと受けて、細菌性髄膜炎の予防に努めましょう。
細菌性髄膜には早めの対処を
前述の通り、細菌性髄膜は風邪と見分けがつきにくいのですが、重症化する前に早めに対処することが大切です。意識障害や痙攣など細菌性髄膜炎が疑われる症状が現れた場合は、できるだけ早く病院を受診しましょう。
新生児は発熱や嘔吐といった症状が現れにくく、泣き止まない、ミルクや母乳の飲みが悪いなどの症状が代わりに現れることがあります。月齢の低い赤ちゃんにいつもと違う様子が見られ、病気の可能性があるときは、念のため医師に診てもらってください。
普段から赤ちゃんの体調をしっかり観察し、異変にすぐに気づけるようにしておきましょう。