妊娠前から妊娠初期にかけて、葉酸を意識的に摂取している妊婦さんは多いと思います。しかし、葉酸は妊娠初期だけでなく、妊娠中期・妊娠後期にも必要だということはあまり知られていません。そこで今回は、妊娠中期・後期の葉酸の摂取について、必要な理由や効果、摂取量をご説明します。
妊娠中期・後期に葉酸が必要?どんな効果があるの?
厚生労働省は、葉酸が不足すると胎児の神経管閉鎖障害のリスクが高まるため、そのリスクを下げる目的で、妊娠前から妊娠3ヶ月までの期間に十分な量の葉酸を摂取するように推奨しています(※1)。
このように妊娠初期は、お腹のなかの赤ちゃんの発育のために葉酸が必要です。
一方妊娠中期・妊娠後期は、ママ自身の体のために葉酸が必要です。特に、貧血の予防のために葉酸を摂取することをおすすめします。
葉酸と貧血の関係
妊娠中は、血液を通じて胎児に栄養や酸素を送り込むため、ママの体内の鉄分が不足して、貧血症状を感じる妊婦さんが多くいます。特に、妊娠中期から後期にかけては、赤ちゃんがどんどん大きくなり、さらに多くの血液が必要になるため、貧血になりやすい時期です。
貧血には様々な種類がありますが、なかでも妊娠中に起こりやすいのが「巨赤芽球性貧血」です。
巨赤芽球性貧血は、倦怠感や動悸、息切れなどの一般的な貧血症状に加えて、舌がツルツルする・ピリピリする、食欲不振、下痢、吐き気といった症状が出ることが特徴です。
巨赤芽球性貧血は、葉酸やビタミンB12の不足によって起こりますが、妊婦さんの場合は葉酸の不足によって生じることがほとんどです(※2)。
巨赤芽球性貧血の症状が出たら、栄養剤を処方してもらうことで改善することが多いですが、妊娠中期以降も葉酸を摂取し続けることで、予防につながると考えられています。
妊娠中期・後期は葉酸をどれくらい摂取すればいいの?
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」における「葉酸の食事摂取基準」によると、18~49歳の女性が1日に摂取するべき葉酸の推奨量は、以下の通りです(※3)。
● 妊娠していない場合:240μg
● 妊娠している場合:480μg
妊娠している場合は、妊娠していない人の倍の量の葉酸の摂取が推奨されています。妊娠初期から後期にかけて推奨摂取量は変わりません。
厚生労働省の別調査「国民健康・栄養調査報告(平成28年)」によると、日本人女性が1日に摂取している葉酸の平均値は以下の通りです(※4)。
● 20~29歳:229μg
● 30~39歳:240μg
● 40~49歳:244μg
このように、普段の食事だけでは480μgを摂取することは難しいため、十分な量を摂るためには、食品選びに気をつけながら、サプリメントを利用することをおすすめします。
ただし、葉酸はたくさん摂取すればいいというものではありません。厚生労働省は、1日当たりの上限摂取量を1,000μg(1mg)としているので、摂り過ぎには注意しましょう(※1)。
妊娠中期・後期におすすめの葉酸を多く含む食べ物は?
葉酸は、その名前から、野菜に含まれているイメージを持つ人もいるかもしれませんが、野菜だけでなく、様々な食材に含まれています。
葉酸を多く含む食べ物(※5,6)
● 菜の花
● 枝豆
● ほうれん草
● ブロッコリー
● ひよこ豆
● ライチ
● アボカド
● えのき
● エリンギ
妊娠初期はつわりの症状で思うように食事ができないこともありますが、妊娠中期以降になって体調が落ち着いてきたら、葉酸が多く含まれる食材を積極的に食べるようにしましょう。
妊娠中期・後期も葉酸サプリを飲んだほうがいいの?
妊娠中は、毎日の食事を通して葉酸を摂取することが大切ですが、先述のように、妊娠中に必要な分の葉酸を食事だけで摂取するのは困難です。また、食品に含まれる天然葉酸は吸収率が低く、利用効率は50%以下と推定されています(※1)。
さらに、葉酸は水に溶けやすく火に弱いため、調理によって栄養素が損失することもあります。
一方で葉酸サプリメントは、食材に含まれる天然葉酸とは構造が違うため、より効率的に葉酸を摂取することができるとされています。食事からの摂取が難しいと感じる人は、妊娠中期以降も継続して飲むことをおすすめします。
妊娠中期・後期も葉酸を上手に摂取しよう
葉酸は、妊娠前や妊娠初期にだけ摂取すればいいと思われがちですが、妊娠中期から後期にかけても継続して摂りたい栄養素です。妊娠中の貧血を予防するために、妊娠全期間を通して葉酸を摂取しましょう。
葉酸は、様々な野菜や果物、魚介類に含まれているので、栄養バランスのためにも、いろいろな食材を組み合わせて食べることが大切です。葉酸サプリも活用しながら上手に葉酸を摂取して、健康的な妊娠生活を送れるといいですね。