妊娠中は、ママが食べたものがお腹の赤ちゃんに様々な影響を与えます。妊娠前は普通に食べていたものでも、妊娠すると「これは食べてもいいのかな?」と、ひとつひとつが気になりますよね。今回は、魚の卵である「いくら」を食べてもいいのかという疑問を持つ妊婦さんに、妊娠中のいくらの摂取についてご紹介します。
妊婦はいくらを食べてもいい?リスクは?
結論からいうと、妊婦さんはいくらを控えたほうが良いでしょう。
妊娠中にいくらを食べると、以下のリスクが伴うからです。
リステリア菌
リステリア菌は野生動物の腸管内や、土、川などに生息している食中毒菌のことで、いくらにも潜んでいることがあります。このリステリア菌に感染し、重症化すると、「リステリア症」になる可能性があります。
通常は、リステリア菌を摂取しても重症化することはまれで、リステリア症には、100万人あたり0.1~10人ほどしかかかりません(※1)。
しかし妊婦さんは、少量のリステリアでも、リステリア症を発症してしまうことがあります。
妊娠していない人に比べて、敗血症や髄膜炎など、重篤な状態に陥る可能性も高く、流産や、生まれた赤ちゃんに影響が残ってしまうこともあります。
厚生労働省も、妊娠中はリステリア菌に気をつけるよう、注意喚起をしています(※1)。
アニサキス
「アニサキス」は、いくらを含む魚介類に潜んでいることがある寄生虫です。体内に入れてしまうと、みぞおちや下腹部の激しい痛み、嘔吐、悪心を引き起こします。
アニサキスが直接胎児に影響を及ぼすことはありませんが、アニサキスによる腹痛は非常に激しく、妊娠中にその痛みに襲われると、かなり大きなストレスにつながります。薬が飲めず、症状が長引き、苦しい思いをしてしまう恐れがあります。
カロリー・塩分
いくらは100gで約270キロカロリーと、高カロリーな食べ物です。さらに塩分も、100gにつき約2g、すじこであれば100gにつき約5gと、多く含まれています(※2)。
妊婦さんが塩分を過剰に摂取してしまうと、「妊娠高血圧症候群」になりやすくなります。妊娠高血圧症候群は、赤ちゃんにもママにも危険が及ぶものなので、妊娠中の塩分は過剰摂取を控える必要があります。
ビタミンA
特に妊娠初期、ビタミンAを過剰に摂取してしまうと、胎児の奇形を発症するリスクが高くなります。いくらには、ビタミンAのなかでも特に気をつけたい「レチノール」が、100gあたり330μgRE含まれており、注意が必要です(※2)。
食品安全委員会によると、妊娠中のビタミンAの食事摂取推奨量は、1日650~780μgREです(※3)。他の食材からもビタミンAを摂取することを考えると、いくらは気をつけたい食材といえます。
妊娠中にいくらを食べたときはどうする?
妊娠中にいくらを控えたほうが良いことを知らずに食べてしまうと、お腹の赤ちゃんが大丈夫なのか心配になりますよね。
いくらを食べてしまったときは、リステリアやアニサキスに感染していないかを確認し、他の食事を工夫するようにしましょう。不安があれば、病院を受診してください。
リステリアへの感染を確認
妊婦さんがリステリア菌に感染すると、発熱、悪寒、背中の痛みなどの症状が現れます。しかし、発症しても症状が軽かったり、他の感染症との違いがわかりにくかったりすることもあります。
いくらを食べて体調に変化があるようなら、自己判断せず、すぐにかかりつけの医師に診てもらいましょう。
アニサキスへの感染を確認
アニサキスに感染すると、食べてから数時間後に、腹痛や嘔吐、悪心などの症状が出ます。アニサキスの感染は激しい腹痛を伴うことがほとんどなので、いくらを食べた後にお腹が痛くなったら、すぐに病院で診てもらうようにしてください。
アニサキスの感染がわかったら、内視鏡を使いながらアニサキスをつまみ出したり、薬を飲んだりして対処します。
栄養素の調節
いくらは、塩分やビタミンAを多く含みます。いくらを食べてしまったら、それ以降の食事で、塩分やビタミンAを摂りすぎないように気をつけましょう。
ビタミンAを多く含むレバーやうなぎ、卵などの摂取を控え、味付けも薄めにしたいですね。
妊娠中はいくらを控えよう
リステリア菌とアニサキスは、しっかり加熱すれば死滅させることができます。そのため、いくらでも火を通したものであれば、妊婦さんでも食べてかまいません。
しかし、いくらを加熱すると、味も食感もかなり変わってしまうので、本来の美味しさは味わえません。いっそのこと「いくらは出産後のごほうび」と考え方を変えたほうが、妊娠中の食べられないストレスが減り、産後の楽しみが増えますよ。
妊娠中は生のいくらを控え、他の食材で食事を楽しんでくださいね。