妊娠すると、食べ物に関する情報がたくさん入ってきますよね。なかでも、「妊娠中は生ものを控えたほうがいい」と聞くことが多いのではないでしょうか。馬の生肉である「馬刺し」も例外ではありません。今回は、妊娠中に馬刺しを食べてもいいのか、食べたときのリスクや注意点についてご紹介します。
妊婦は馬刺しを食べてもいいの?
結論からいうと、妊娠中は馬刺しを食べないようにしましょう。馬刺しには、食中毒の原因となる菌が生息している可能性があります。
平成23年の厚生労働省の資料では、馬刺しを食べたことによる腸管出血性大腸菌やサルモネラ菌、カンピロバクターの食中毒事例は、ほぼ報告されていません(※1)。しかし、馬刺しを食べて数時間後に、下痢や一過性の嘔吐といった症状が出た事例は報告されていて、「ザルコシスティス・フェアリー」という寄生虫が原因だとされています(※2)。
妊娠中に馬刺しを控えたほうがいい理由は?
前述の通り、ザルコシスティス・フェアリーが寄生した馬の生肉を食べると、食中毒にかかることがあります。また、加熱不十分な食肉を食べると、トキソプラズマに感染することがあり、馬刺しも注意が必要です(※3)。
ザルコシスティス・フェアリー
ザルコシスティス・フェアリーは、犬と馬の寄生虫で、人には寄生しません(※2)。犬がザルコシスティス・フェアリーに感染すると糞便の中に寄生虫を排出し、馬は、その糞便に汚染された飼料や飲用水を食べたり飲んだりすることで感染します。
ザルコシスティス・フェアリーによる食中毒が母体や胎児に影響を与えるかどうかは、はっきりしていません。しかし、妊娠中に食中毒にかかると、下痢や嘔吐といった症状によって必要以上に体力を消耗することになります。
トキソプラズマ
トキソプラズマは、幅3μm、長さ5~7μmの小さな寄生虫です。世界の人口の約3分の1以上の人がトキソプラズマに感染しているといわれています(※4)。健康な成人であれば感染しても大きな症状が出ないことがほとんどで、一度感染すれば抗体ができるため、基本的に二度感染することはありません。
しかし、妊娠の数ヶ月前、または妊娠中にトキソプラズマに初めて感染し、胎盤を通じて胎児が感染すると、流産や死産、新生児に障害が起こる可能性があります(※5)。
加熱した馬刺しなら妊娠中に食べてもいいの?
トキソプラズマやザルコシスティス・フェアリーは、時間をかけて中心部まで十分に加熱すれば不活化するため、焼いた馬肉であれば妊娠中に食べても問題はありません(※6)。
ただし、加熱することで、生肉である馬刺し本来の味は楽しむことができなくなります。また、馬刺しは飲食店で食べることが多いため、実際に火を通すのは難しいこともあります。
妊娠中に馬刺しを食べてしまったときの対処法は?
妊娠中は控えたほうがいい馬刺しですが、そうとは知らずに食べてしまったり、妊娠したことに気づいていない超初期に食べてしまったりすることもありますよね。「感染しているの?」「赤ちゃんは大丈夫なの?」と様々な不安が頭をよぎるかもしれません。
その場合は、できるだけ早くザルコシスティス・フェアリーやトキソプラズマに感染していないかどうか確かめることが大切です。
ザルコシスティス・フェアリーによる馬刺しの食中毒では、食べて数時間後に症状が出るため、体調に違和感があればすぐに病院へ行きましょう。嘔吐や下痢の症状がすぐに治まったとしても、受診するようにしてください。
トキソプラズマは感染しても、特に目立った症状が現れません。トキソプラズマの感染が疑われる場合は、一般的に血液検査でトキソプラズマ抗体の有無を調べ、陽性が出たら「IgM抗体」や「IgG抗体」といった値を詳しく検査します。
不安を解消できないまま、ストレスを溜めて妊娠期間を過ごさないように、できるだけ早く病院へ行きましょう。
妊娠中は馬刺しを我慢しよう
馬刺しには、ザルコシスティス・フェアリーやトキソプラズマといった寄生虫が生息している可能性があるため、妊娠中は食べないようにしましょう。
妊娠中は、控えなくてはいけない食べ物や我慢しなくてはいけないことが多く、ストレスが溜まるかもしれません。妊娠中ならではの楽しみを見つけて、残りのマタニティライフを満喫できるといいですね。