「着床痛」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?いわゆる受精卵が子宮に着床するときに起こる痛みのことですが、実は医学的な根拠はありません。しかし、実際には着床痛を感じたという体験談を話す人も多く、妊娠兆候として挙げられることがあります。今回は、着床痛について、痛みが現れる時期や期間などをご説明します。
着床痛とは?
着床痛とは、受精卵が子宮内膜に着床するときに起こるといわれている痛みのことを指します。
着床した受精卵は、子宮内膜の中へともぐりこんで根を張ろうとするので、その際に痛みが生じることもあるのではないかと考えられています。ちなみに、受精卵が根を張るときに子宮内膜が少し傷ついて起こる微量の出血は「着床出血」と呼ばれます。
ただし、着床痛が起こる仕組みについて、医学的な根拠はありません。妊娠した人が後で振り返って「着床時期に痛みを感じた」と話すことがあるため、着床出血と並んで妊娠兆候の一つとして挙げられることがあります。
実際のところは、排卵時に感じる排卵痛や、妊娠初期の子宮の変化に伴う痛みを着床痛と勘違いしている、もしくは妊娠を強く意識するあまり痛みを感じたような気がするだけではないか、という可能性も指摘されています。
「受精卵が着床する程度で痛みを感じることはない」という専門家もいるので、医学的には解明されていないものであることは覚えておいてくださいね。
着床痛の時期はいつごろ?期間は?
「着床痛を感じた」という体験談は数多く紹介されていますが、着床痛を感じた時期や期間がいつからいつまでだったかは人によって異なります。一般的には、生理予定日の1週間前~直前くらいの間で痛みを感じる人が多いようです。
排卵から着床開始までに約6~7日前後、着床完了までにさらに5日程度はかかります(※1)。排卵日が生理予定日の14日前と考えると、生理予定日の1週間前~直前までに着床痛を感じた、というのは時期的には理にかなっているといえますね。
着床痛の痛みの症状や場所は?チクチク痛む?
着床痛は、「チクチクするような痛み」と表現されることがよくあります。痛みを感じる場所については、足の付け根あたりという人もいれば、お腹全体という人もいて、さまざまです。
ただし、全く痛みを感じなかったという人がほとんどなので、着床痛がないからといって過度に心配する必要はありませんよ。
着床痛と似た痛みの症状もあるの?
着床痛のほかに、妊婦さんが感じることがある痛みとして、次の2つが挙げられます。
妊娠初期症状
妊娠初期に、吐き気や嘔吐のほか、胃痛や下腹部痛などの消化器症状が現れることがあります(※2)。受精卵が子宮に着床する時期とはズレがありますが、これらの痛みを着床痛だと認識している妊婦さんもいるかもしれません。
なお、着床痛がないだけでなく、妊娠初期症状がほとんどなく、生理が来ないから妊娠検査薬を使ってみてはじめて妊娠に気づいたという人もいます。痛みなどの症状は個人差が大きいものだと考えておきましょう。
ルテイン嚢胞による卵巣の腫れ
妊娠すると、女性の体内で「ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)」というホルモンの分泌量が増加します。このhCGの刺激で、卵巣の中に液状の分泌物が溜まって「ルテイン嚢胞」が作られることがあり、これによって一時的に卵巣が腫れると、わずかに痛みを覚える人もいます。
ただし、妊娠によってできた良性のルテイン嚢胞であれば、妊娠16週頃までに自然と小さくなり、やがて消えてなくなるので、基本的に治療する必要はありません(※1)。
着床痛は考えすぎず、落ち着いて過ごしましょう
妊娠を望んでいる人にとっては、着床痛を感じられたとしたらとてもうれしいですね。お腹の中に新しい生命が宿った瞬間と考えると感動的です。しかし、着床痛は医学的な根拠がないもので、感じる人もそれほど多くないので、あまり考えすぎないようにしましょう。
大切なのは「着床痛を感じるかどうか」ではなく、きちんと受精卵が着床して元気に成長してくれること。着床痛があるかどうかに振り回されずに、生理予定日から1週間が過ぎ、妊娠検査薬が使えるようになるまで落ち着いて過ごすようにしてくださいね。