産後のママには、赤ちゃんのお世話や体の変化の影響で様々なトラブルが起こります。特に多いのが、腱鞘炎による手首の痛みです。初めて出産したママによく見られ、なかには赤ちゃんを抱っこできないほどの痛みを感じることもあります。今回は、育児に奮闘するママにむけて、産後の腱鞘炎の原因や、手首が痛いときの対策、治療法などをご紹介します。
腱鞘炎とは?
腱鞘炎は、手首にある腱の周囲を覆う「腱鞘」という部位が炎症を起こした状態をいいます。
腱鞘炎は、手首の酷使が原因で発症します。そのため、長時間パソコンを操作している人や、重いものを手首で支えるような仕事をしている人がなりやすい傾向にあります。
また、筋力に対して過度な力がかかってしまうと腱鞘炎になりやすいため、筋力の少ない女性ほど発症しやすいものです。
産後の腱鞘炎の原因は?
産後のママが腱鞘炎になりやすい理由は、赤ちゃんのお世話による手首の酷使です。
ママは毎日、赤ちゃんを長い時間抱っこしていますよね。また、生後2ヶ月頃まで、授乳は1日に10回を超えるほど。最初は赤ちゃんも上手におっぱいが飲めず、1回あたりの時間が長くかかってしまうことも多いかもしれません。
さらに初めての出産の場合、ママが赤ちゃんを抱っこすること自体に慣れていないため、落とさないようにと無意識に力が入ってしまいます。この緊張によって、手首を余計に酷使してしまうのです。
抱っこ以外に、毎日のおむつ交換や沐浴なども、手首への大きな負担になります。
また最近の研究では、高齢出産の初産婦さんが腱鞘炎になりやすい傾向にあるということがわかってきました。
そのなかでも特に、授乳から寝かしつけまでの1回の平均所要時間が長い人や、全身の疲労感が強く、無理をしていると感じている人に起こりやすいという報告もあります(※1)。
産後に腱鞘炎で手首が痛いときは病院で治療すべき?
産後に腱鞘炎になってしまうと、何をするにも手首が痛く、生活に支障が出てしまいます。痛みを我慢しながら育児をするにも限界があり、放っておくと赤ちゃんを抱っこしてあげられないほどつらくなってしまいます。
腱鞘炎と思われる手首の痛みを感じたら、早めに整形外科を受診して、適切な治療を受けましょう。
腱鞘炎の治療は、痛みの程度によって方法が異なりますが、一般的に、痛みがある部分を安静にし、薬の服用や湿布、テープによる固定などを行います。症状がひどいと、腱鞘内にステロイド注射を打って、炎症を抑えることもあります。
授乳中に薬を使っていいかと不安になるママもいるかと思いますが、腱鞘炎で一般的に処方される「インドメタシン」や「ケトプロフェン」、「ジクロフェナクナトリウム」、痛み止めの「ロキソプロフェンナトリウム」などは、授乳中のママが使用しても、赤ちゃんに影響が出るとは考えにくいとされています(※2)。
ステロイド注射を打った場合も、短期間の使用であれば授乳に影響はありません(※2)。
必要以上に心配し、薬の使用を控えて痛みをこらえていると、赤ちゃんを抱っこすることが、さらにつらくなってしまうかもしれません。必要に応じて薬を活用し、症状を改善していけるといいですね。
産後の腱鞘炎の対策は?
病院で治療を受けても、完治するまでは手首の痛みが続きます。腱鞘炎は痛みのある部分をできるだけ動かさないようにすることで改善が早まるので、必要なとき以外は手首を使わないようにして生活してみてください。
日頃から、下記のようなポイントに注意してみましょう。
- 赤ちゃんを抱っこするときは腕全体で支え、できるだけママの体に近づける
- 授乳のときは、クッションやタオルなどを使用して支える
- 家事はパパや両親の助けを借りる
- できるだけ字を書かない
- 食事では箸よりフォークやスプーンを使う
- 料理時は包丁ではなくピーラーなどの調理器具を使う
- 携帯電話やパソコンなどの操作を控える
- 重いものは持たない
産後の腱鞘炎は予防が大切
腱鞘炎に一度かかってしまうと、完治するまでに時間がかかることがあります。だからこそ、かかる前に予防することが大切です。痛くなる前から手首周りのストレッチやマッサージを行い、筋肉をほぐしておきましょう。肩こりが腱鞘炎の原因になる場合もあるので、肩こりにも注意してくださいね。
また、同じ姿勢の抱っこが続くと手首に負担がかかってしまうので、こまめに抱き方をかえ、手首には力をいれないように気をつけましょう。
授乳時に手首をひねらないようにすることもポイントです。クッションなどを活用し、自分にとって楽な姿勢をとるようにしましょう。
赤ちゃんが成長していけば自然と抱っこする時間も短くなり、手首への負担は小さくなっていきます。抱っこできる期間もそう長くはないので、腱鞘炎にならないように気をつけながら、赤ちゃんとコミュニケーションが取れるといいですね。