望まない妊娠を避けるためには様々な避妊方法がありますが、パートナーとの問題や金銭的な理由などから半永久的に避妊するための「パイプカット」という方法があります。男性が行う避妊方法ですが、認知度があまり高くなく、内容を詳しく知らない人も多いと思います。そこで今回はパイプカットとはどういうものか、手術方法や費用、デメリットなどについてご説明します。
パイプカット(精管結紮術)とは?誰でも受けられる?
パイプカットは、別名を「精管結紮術(せいかんけっさつじゅつ)」といい、睾丸(精巣)でつくられた精子を尿道に送る「精管」を切り離す避妊手術を指します。
パイプカットを行うと生殖機能はなくなりますが、性行為を行うための機能がなくなるわけではありません。これまで通り勃起は起こりますし、前立腺液や精嚢(せいのう)で作られる精嚢液も生成されます。つまり、精子が含まれない精液を出すことはできる状態になります。
また、パイプカットは母体保護法に基づいて行われるため、誰でも受けられるわけではありません。下記の条件に当てはまる場合のみ実施することができます(※1)。
パイプカットが受けられる条件
- 妊娠や分娩が、パートナー(母体)の命に危険を及ぼす可能性がある
- すでに数人の子供を授かっていて、分娩ごとにパートナー(母体)の健康が著しく損なわれる可能性がある
また、手術の実施には原則本人及び配偶者の同意が必要で、未成年者は実施することができません。
パイプカットの手術方法と費用は?
パイプカットは泌尿器科で行うことができます。手術自体は30分程度で終わり、そのあと数時間は病院で休む必要がありますが、基本的には日帰りで行われる手術です。
局部麻酔後に、陰嚢(いんのう)の皮膚に2箇所、1cmに満たないほどの傷をつけ、そこから精管を引き出します。そして精管を切断して結紮(けっさつ)し、切断面を電気メスなどで塞いでから陰嚢に戻せば完了です。
精管を切断したあとは、切開した部分を縫い合わせます。傷跡は、時間が経つに連れて陰嚢のしわと馴染み、目立たなくなっていきます。
手術はほとんどが保険適用外で、費用は病院によって異なりますが、相場は5~20万円ほどです。病院によって費用に差があり、アフターケアの手厚さなども異なるため、手術を検討する場合には、事前に確認することをおすすめします。
パイプカット後の痛みや気をつけることは?
パイプカット後の痛みはひどくないことが多く、翌日から今まで通りの生活を送ることができます。痛みがある場合でも、鎮痛剤を服用すれば緩和されることがほとんどです。
しかし、生活をするうえではいくつか注意が必要です。
傷跡は大きくありませんが、あまり衝撃を与えないようにしてください。術後2日が経過すれば、シャワーも入浴も問題ありません。
また、手術後1週間程度は性行為や激しい運動を控えましょう。
パイプカット後も妊娠する可能性はある?確率は?
性行為ができるようになっても、切断後の精管などには精子が残っていることがあり、しばらくの間は妊娠する可能性も考えられます。
避妊なしで性交するには、少なくとも15~20回程は射精して、残っている精子を出しきる必要があります。パイプカットを行った病院などで検査を行い、射精2回分の精液に精子がみられなくなって、ようやく避妊が確認できます(※2)。
手術後まもなくは、医師の支持に従って、コンドームなどを使って避妊を行いましょう。
パイプカットのデメリットや副作用は?
パイプカット後のデメリットとして、性行為に関わる身体的・精神的な影響を心配する人もいると思いますが、基本的に、射精感がなくなったり、性欲・勃起力などが消えたりするようなことはありません。今までと変わらず性行為を行うことができます。
ただし副作用として、まれにではありますが、結紮した精管の周りに、炎症や内出血による腫れが見られることがあります。違和感があれば早めに医師に相談しましょう。
パイプカット後に切断部分を修復することはできるの?
パイプカット後に「やっぱり子供がほしい」と気持ちが変わった場合には、パイプカットした部分を再結合する手術を行うことも可能です。
しかし、顕微鏡が必要になる非常に精密な手術であり、再結合後に必ずしも元通りになるとはいえず、精子を出せるようになったとしても、精子の生産機能が落ちたために妊娠できなくなる可能性もあります。
そのため、パイプカットを受ける前には「今後の妊娠を本当に希望しないか」ということをよく考えておいてください。
パイプカット手術は後悔がないように検討しよう
一度パイプカットしてしまうと生殖機能を取り戻すことは難しくなります。実際に手術をした後でどうしても子供がほしくなり、後悔したという声もないわけではありません。
パイプカットなどの避妊手術に頼らなくても、コンドームやピルを使うなど、避妊方法は存在します。パートナーと十分に話し合ってお互いの意思を確認し、後悔しないような決断をしてくださいね。