中絶手術の時期はいつまで?期間は?後遺症が残るの?

監修医師 産婦人科医 間瀬 徳光
間瀬 徳光 2005年 山梨医科大学(現 山梨大学)医学部卒。板橋中央総合病院、沖縄県立中部病院などを経て、現在は医療法人工藤医院院長。産婦人科専門医、周産期専門医として、産科・婦人科のいずれも幅広く診療を行って... 監修記事一覧へ

様々な事情で、妊娠を継続するのが難しくなることもあります。中絶手術を受けるかどうか、じっくり考えて決断したいと思っていても、中絶手術を受けられる時期は決まっているため、期限を過ぎてしまうと中絶できなくなってしまいます。今回は中絶手術について、手術を受けられる時期はいつまでなのか、後遺症などのリスクはあるのかなどをご説明します。

中絶手術とは?人工妊娠中絶のこと?

妊娠の中絶手術とは、正式には「人工妊娠中絶」と呼び、やむを得ない理由で妊娠を継続できなくなった場合に、医療機関で妊娠を中断する方法です。

命に関わる問題でもあるので、母体保護法という法律によって条件や時期などが決められており、誰でも自由に中絶できるわけではありません。

母体保護法では、母体の健康上・経済上の理由で妊娠継続が困難な場合か、性的暴行や脅迫の被害による妊娠の場合に、中絶手術を受けられると定めています(※1)。

また、中絶手術を行うためには、原則的にはパートナーの同意が必要です(※1)。

中絶手術ができる時期は?期間はいつまで?

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母体保護法によると、中絶手術ができる時期は「妊娠22週未満(妊娠21週6日)まで」と決められています(※1)。この期間を過ぎてからの中絶手術は、倫理的な問題と母体のリスクを考慮して、いかなる理由でも認められていません。

一般的に、妊娠週数が進むほど母体への負担が大きくなるため、手術を受ける時期についてはできるだけ早い段階で検討することが大切です。妊娠12週未満までは「初期中絶」、妊娠12週以降~22週未満までは「中期中絶」と呼ばれます。

妊娠12週、つまり妊娠4ヶ月に入る頃には、お腹の赤ちゃんがある程度成長しています。そのため、中期中絶の場合は、人工的に陣痛を起こして流産させる必要があり、母体に大きな負担がかかります。また、死産届を役所に提出しなければなりません。

中絶手術を受けられる病院は?

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産婦人科ならどこでも中絶手術を受けられる、というわけではありません。母体保護法では、「人工妊娠中絶手術は、指定医のみが行える」と定めています(※1)。

指定医は、医師の人格や技術、病院の設備などを考慮したうえで、都道府県の医師会で指定されています。必ず、「母体保護法指定医」がいる病院で手術を受けてください。

また、初期中絶は受けられても、中期中絶は受けられないという病院もあるので、注意が必要です。

中絶手術は痛みを感じる?出血はあるの?

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中絶手術による痛みや出血の程度は、時期によって次のように異なります(※2)。

初期中絶(妊娠12週未満)

初期中絶手術では、腟から器具を入れて子宮の中身を掻き出す「掻把(そうは)法」か、器械で吸い出す「吸引法」を行います。

多くの場合、麻酔をかけた状態で手術をするため、術中に痛みを感じることはほとんどありません。ただし、麻酔が切れたあとは、一時的に子宮収縮の痛みが現れることもあります。

手術にかかる時間は10~15分程度で、特に体調に問題がなければ当日か翌日には帰宅できます。ただし、手術によって子宮内に一時的に傷がつくこともあるので、気になる出血や痛みがあれば医師に相談しましょう。

中期中絶(妊娠12週以降~22週未満)

中期中絶手術では、子宮口を開く処置を行ってから、子宮収縮剤によって人工的に陣痛を引き起こし、通常の出産と同じように胎児を産み出す方法が取られます。

通常は開かない子宮口を強制的に開いたり、子宮を収縮させたりするため、ある程度の痛みや出血を伴います。日帰りで行える初期中絶手術とは異なり、中期中絶の場合は数日間の入院が必要です。

中絶手術で後遺症が残るの?

医師は細心の注意を払って手術を行いますが、子宮内の操作を伴うものなので、まれではありますが、次に挙げるような後遺症や合併症が現れることもあります(※3,4)。重症化すると、受精や着床の妨げとなり、不妊症につながるリスクもあります。

陣痛誘発による合併症

中絶手術のために、人工的に陣痛を誘発する場合、子宮に過度の負荷がかかり、子宮破裂を起こす危険性があります。その結果、まれながら子宮摘出を余儀なくされることもあります。

また、子宮頸管を広げるときに、頸管が傷ついてしまい、子宮頸管無力症になる恐れもあります。これは、陣痛が来る前に子宮口が開いてしまう病気で、将来妊娠した場合に流産・早産のリスクを高めます(※4)。

子宮掻把(そうは)による合併症

中絶手術で子宮内に器具を挿入するときに子宮壁を損傷すると、子宮に穴が空いてしまうことがあります(子宮穿孔)。それに伴い、腸管も損傷してしまうと、人工肛門をつけたり子宮摘出をしたりしなければならないケースもあります(※4)。

また、子宮の内側に癒着が起こる「アッシャーマン症候群」を引き起こす恐れがあります(※3)。

そのほかの合併症

中絶手術のあと、取りきれなかった組織が子宮内部に残ってしまっていると、胎盤ポリープになることがあり、後日、大量出血が見られることがあります。

また、将来妊娠した場合に、前置胎盤や癒着胎盤が起こるリスクも高まります。

身体的な影響だけではなく、中絶に伴うストレスでホルモンバランスが崩れたり、気分が落ちこんだりする人もいるかもしれません。中絶をしなければならない事情は人それぞれですが、術後は心身が回復するまで、無理のない生活を送るようにしましょう。

中絶手術の前に、望まない妊娠を防ぐには

女性は経口避妊薬などを使うことで、望まない妊娠をある程度減らすことができます。たとえ避妊がうまくいかなかったとしても、アフターピル(緊急避妊薬)によって妊娠を回避できる可能性があります。

アフターピルは、性交渉のあと72時間以内(3日以内)に服用すれば、ほぼ100%に近い避妊効果が期待できます。アフターピルを服用しても妊娠の確率がゼロになるわけではありませんが、妊娠を望まないにも関わらず、避妊できなかった場合には、早めに婦人科で相談しましょう。

中絶手術の時期には期限があります

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まだ子供を望んでないにもかかわらず、妊娠してしまった可能性がある場合、とても不安な気持ちになると思います。そんなときは1人で悩まず、まずは専門医に相談してください。

いま自分は妊娠何週なのか、いつまでに中絶を決めなければいけないのか、手術によってどんな影響があるのかなどをよく聞いたうえで、医師と一緒に落ち着いて検討しましょう。

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