赤ちゃんの痙攣・ひきつけとは?対処法は?新生児でも起きる?

監修医師 小児科 武井 智昭
武井 智昭 日本小児科学会専門医。2002年、慶応義塾大学医学部卒。神奈川県内の病院・クリニックで小児科医としての経験を積み、現在は神奈川県大和市の高座渋谷つばさクリニックに院長として勤務。内科・小児科・アレルギ... 監修記事一覧へ

赤ちゃんが突然手足を突っ張り、白目をむいて震え出したとしたら、気が動転してしまいますよね。ただ、新生児にも見られるこの「痙攣」や「ひきつけ」といわれる発作は、見た目ほど危険な症状とは限りません。今回は、赤ちゃんの痙攣・ひきつけが起こる原因と症状、対処法についてご紹介します。

赤ちゃんの痙攣・ひきつけとは?症状は?

赤ちゃん 泣く 泣き顔 

「痙攣」「ひきつけ」とは、どちらも本人の意思とは無関係に筋肉が収縮を起こす症状のことを指します。わかりやすい例を挙げるなら、しゃっくりも痙攣・ひきつけの一種です。横隔膜が無意識に動いてしまっている状態で、止めようと思って止まるものではありません。

痙攣・ひきつけの症状は、全身が硬直する、または手足をバンバンと打ちつけるのが一般的です。その状態が数分間続き、意識を失うこともあります。初めて赤ちゃんの痙攣・ひきつけを目の当たりにしたママやパパが、パニックに陥ってしまうのも無理はありません。

赤ちゃんが痙攣・ひきつけを起こす理由は?

痙攣・ひきつけは、後述するような原因がきっかけとなって神経細胞が異常に興奮することで、筋肉が急に収縮して起こります。赤ちゃんの頃は神経細胞が大人に比べて未熟なため、ちょっとしたことで興奮状態に陥って痙攣・ひきつけを起こしやすいのです。

特に生後6ヶ月~3歳までの間に起こりやすいのは、発熱のストレスによって起こる「熱性けいれん」で、子供の約1割が経験するといわれています(※1)。

赤ちゃんの痙攣・ひきつけの原因は?新生児期と乳児期で違う?

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痙攣・ひきつけの原因は様々ですが、新生児期と乳児期で少し事情が異なります。

新生児期の痙攣・ひきつけ

新生児期に痙攣・ひきつけはあまり見られませんが、発症した場合は先天的な代謝異常や脳の病気などの可能性が考えられます(※1)。

この時期は両側の手足を曲げるような発作、また首を打ちつけるような発作を繰り返します。手足のつっぱりがなく、数秒の小刻みな震えで、震えた後の機嫌がよければ、寒さなどの自然な震えかもしれません。

乳児期の痙攣・ひきつけ

生後6ヶ月を過ぎた乳児期では、新生児期よりも痙攣・ひきつけを起こす確率が高まります。特に、高熱時などに一時的に神経細胞が異常興奮する「熱性けいれん」は比較的起こりやすい症状です。乳児期は高熱が出やすい時期で、出生前に胎盤を通じてママからもらった免疫が切れて、少しの刺激でも発熱してしまいます。

ただし、熱性けいれん以外でも、発熱がなければ、てんかんなどの発作、発熱があっても髄膜炎・急性脳症・急性脳炎といった、重篤な病気が原因の可能性もあるので注意が必要です(※1)。

赤ちゃんが痙攣・ひきつけを起こしたときの対処法は?

赤ちゃんが痙攣・ひきつけを起こしたときは、まず周囲の大人が冷静になり、赤ちゃんを安静にさせて痙攣が治まるのを待ちましょう。赤ちゃんが痙攣・ひきつけを起こしたときは、以下の手順で対応してください。

1. 服を緩めて、平らなところに横向きに寝かせる(嘔吐物を喉に詰まらせないため)
2. 痙攣の時間を測る(痙攣の時間を計測して病院へ行くかどうかを判断するため)
3. 痙攣の現れ方を見る(痙攣が左右対称か、どちらか一方かなどを確認して診察時に伝えるため)
4. 熱を計る(38度以上なら熱性けいれんの可能性が高いと判断できるため)
5. 痙攣が治まったら全身をチェックする(熱性けいれん以外の可能性を探るため)

赤ちゃんが痙攣・ひきつけを起こしたときにやってはいけないことは?

赤ちゃんが痙攣・ひきつけを起こしたときは以下の2点に注意しましょう。

叩いたり、揺すったりしない

大声で叫んだり、叩いたり、体を揺さぶったりしてはいけません。痙攣を悪化させる恐れがあるからです。できるだけ安静にしてあげましょう。

口には物を入れない

痙攣したら、舌を噛まないように口の中へタオルなどを入れるイメージがあるかもしれませんが、赤ちゃんに対してはやめましょう。口の中を傷つけたり、誤飲して喉を詰まらせたりする危険性があります。

赤ちゃんの痙攣・ひきつけで病院を受診するタイミングは?

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赤ちゃんが初めて痙攣・ひきつけを起こした場合は、発作がおさまった時点で一度は病院を受診しましょう。ほとんどの場合は熱性痙攣が原因で問題ありませんが、自己判断で他の病気の可能性を否定することが難しいからです。

また、もし症状を確認して緊急を要すると判断したら、すみやかに救急病院に連絡して指示を仰ぎましょう。

あとで病院に連れて行く場合でも、痙攣が続いた時間やその前後の様子などについて、医師に説明できるようにしておくとその後の治療がスムーズです。そのため、痙攣・ひきつけを観察するときは以下の項目をチェックしてください。

痙攣・ひきつけ中の確認ポイント

● 痙攣が5分以上続くか
● 熱があるか、あるいは平熱か
● 熱があり、かつ頂部・うなじが硬直しているか
● 痙攣が複数回にわたって繰り返されるか
● 体の特定の部分だけが痙攣していないか
● 頭を強く打った後に痙攣を起こしていないか
● 意識の戻りが悪いか

痙攣・ひきつけが治まった後の確認ポイント

● 痙攣が治まった後も意識が朦朧として、ぐったりしていないか
● 痙攣が治まった後に、マヒや意識障害があるか
● 痙攣後に嘔吐や頭の痛みを訴えていないか

赤ちゃんの痙攣・ひきつけで救急車を呼んでもいい?

救急車

赤ちゃんの痙攣・ひきつけを初めて見たら、不安になるのも当然です。

まずは痙攣・ひきつけが起こったら先ほどのチェック項目を確認し、落ち着いて赤ちゃんの様子を確認しましょう。そして、昼間まであれば小児科へ、時間外であれば小児救急電話相談(#8000)へ電話をして、状況を説明し、救急車が必要かどうかを確認しましょう。

痙攣・ひきつけが5分以上続く、痙攣の前に嘔吐している、左右非対称の痙攣がある、意識がもうろうとしてぐったりしているなど、緊急性を要する症状が見られたら、救急車を呼ぶのも一つの方法です(※1)。

赤ちゃんの痙攣・ひきつけには冷静な対応を

赤ちゃん 寝る 夜

赤ちゃんの痙攣・ひきつけを目の当たりにして驚かない親はいません。ただ、事前に症状を理解しておけば、少なからず冷静に対処できますね。重篤な病気が原因の可能性もあるものなので、親を含めた周囲の大人が冷静に対処してあげることが肝心です。

難しいかもしれませんが、「赤ちゃんの痙攣・ひきつけは冷静に対処する」ことを肝に銘じて、落ち着いて対処できるように、心の準備をしておいてくださいね。

※参考文献を表示する

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