予期せずして、子供が痙攣(けいれん)を起こすことがあります。手足をガクガクと震わせているのを見ると、どう対処したら良いかわからず焦ってしまうかもしれませんが、多くの痙攣は数分で治まります。しかし、まれに、痙攣がずっと続く「痙攣重積」が起きることがあり、迅速な対処が求められます。今回は痙攣重積について、原因や症状、対処法、治療法などをご紹介します。
痙攣重積とは?発作の見分け方は?
痙攣重積とは、痙攣発作が30分以上続く状態、または、短い発作を断続的に30分以上繰り返し、その間の意識回復がない状態を指します(※1)。
ただし、痙攣重積の診断基準となる発作の持続時間は、これまで30分とされていたのですが、最近では、5〜10分でも対処した方が良いとする考えも提唱されています。
詳しい対処法は後述しますが、痙攣を30分以上放っておくと脳が低酸素状態に陥り、後遺症が残る恐れもあるため、迅速に対処する必要があります。
痙攣重積の原因は?
痙攣重積は様々な原因によって起こる可能性がありますが、子供が痙攣重積を起こす主な原因は、以下のとおりです(※1)。
・てんかん
・急性脳炎・脳症、髄膜炎
・熱性けいれん
・代謝異常
・脳血管障害
・頭部外傷
なかでも、てんかんによるものが最も多く、次に急性脳炎・脳症、熱性けいれんが多くなります。
痙攣重積の対処法は?後遺症が残ることもある?
子供に痙攣発作が見られたら、病院で医師に伝えられるように、落ち着いて子供の様子を観察してください。時計やストップウォッチを用意して、発作の持続時間を計りましょう。
発作が起きている子供を見ていると不安になって、体をゆすったり、大声で呼びかけたりしたくなるかもしれませんが、そういった行為は症状を悪化させる恐れがあるので、やめてください。
また、舌を噛まないようにと、口の中にハンカチやタオルを入れないでください。舌を噛むことは稀で、逆に歯茎を損傷したり、呼吸がしにくくなったりする恐れがあるからです(※1)。
発作が5分以上続く場合、もしくは発作と発作の間に意識が回復していない状態が続く場合は、痙攣重積の疑いがあるので、すぐに救急車を呼んで、近くの大きい病院へ搬送してもらいましょう。
痙攣重積への対処が遅れると、合併症や、後遺症として神経障害が起こる恐れがあるため、迅速に対応することが大切です(※2)。
痙攣重積の診断・治療法は?
痙攣発作が5分以上続いていて、診察時にも痙攣発作が続いている場合は、診断のための検査を行わず、痙攣重積が起こっていると想定して、すぐに対応するのが一般的です(※2)。
痙攣重積の治療では、気道確保と血圧維持を行いながら、抗けいれん作用を持つジアゼパムという薬を静脈注射します(※1)。ジアゼパムで効果が現れず、痙攣が続く場合は、ミダゾラムやフェニトインなどが使用されます。
しかし、抗けいれん薬での治療がうまくいかない場合は、集中治療室で人工呼吸管理と血圧管理を行いながら、全身麻酔を行います(※2)。それと同時に、痙攣が続く原因を検査で調べていきます。
痙攣重積には落ち着いて対処を
子供のうちは痙攣が起こりやすく、特に乳幼児期の子供が痙攣を起こしているのを見ると、慌ててしまうかもしれませんが、子供のためにも冷静な対処を心がけてください。
痙攣を見てパニックになると、発作がどのくらい続いているかや、発作の間で意識が回復しているかなど、子供に現れている症状をきちんと把握できなくなってしまいます。
痙攣重積に関する知識をつけたり、緊急時の連絡先を確認したりして、子供に痙攣が起こっても、落ち着いて対処できるようにしておきましょう。