不妊治療や妊娠中の切迫流産・早産への対応として、「デュファストン」という薬を処方されることがあります。デュファストンには女性ホルモンのバランスを整えて、妊娠・出産に向けた体づくりをサポートする効果があります。今回はこのデュファストンについて、詳しい効果や基礎体温の変化、飲み方の注意点などについてご説明します。
デュファストンとは?
デュファストンとは、合成黄体ホルモン剤の一つです。デュファストンの主成分である「ジドロゲステロン」が、体内で女性ホルモンのひとつである「黄体ホルモン(プロゲステロン)」の作用を補ってくれます。
これまでに50年以上、妊婦さんを含め、世界中で多くの患者さんに処方されてきました。
合成黄体ホルモン剤のなかには、妊娠中に服用するとお腹の赤ちゃんを男性化する作用があるものもありますが、デュファストンにはそのような作用がなく、妊婦さんでも安全に使える薬として幅広く使われています(※1)。
デュファストンは生理不順に効果的なの?
デュファストンは黄体ホルモンの作用を補うことで、無月経や生理不順などの月経異常に対して効果を発揮します。
女性の子宮のなかにある子宮内膜は、受精卵を着床させるために、「卵胞ホルモン(エストロゲン)」の作用で厚くなり、黄体ホルモンの作用によって厚い状態が維持されます。妊娠しなかった場合、不要になった子宮内膜が剥がれ落ち、血液と一緒に体外に排出されます。これが「月経(生理)」のサイクルです。
黄体ホルモンは、主に排卵を終えたあとの卵胞(黄体)から分泌されます。しかし、何らかの原因で黄体ホルモンの分泌量が少ないと、子宮内膜の厚さが維持されないまま剥がれ落ちてしまうため、生理不順(月経周期異常)が起こることがあります。
また、そもそも排卵が起こっていない場合、生理がこない「無月経」の状態になる恐れもあり、そのまま放置してしまうと不妊につながるリスクがあります。
デュファストンを飲んで黄体ホルモンを補充することで、子宮内膜の十分な厚さが維持されます。そのあとデュファストンの服用をやめると、子宮内膜が剥がれ、人工的に生理を起こすことができ、生理不順や無月経の改善につながります。
デュファストンの製造販売元によると、服用を続けた患者のうち無月経が治った人は77.8%、生理不順が改善された人は83.3%とされています(※1)。
デュファストンは子宮内膜症にも効果あり?
デュファストンを飲むことで、子宮内膜症の症状が改善することもあります。
子宮内膜症とは、子宮内膜に似た組織が子宮以外の場所で増殖して炎症を起こす病気で、強い生理痛(月経困難症)を引き起こしたり、不妊につながったりする恐れがあります。
この病気は、卵胞ホルモン(エストロゲン)が過剰分泌されることで発症すると考えられています(※2)。デュファストンで黄体ホルモンを補うことで、2つの女性ホルモンのバランスが整い、子宮内膜症の症状緩和につながるとされています。
デュファストンの製造販売元の臨床テストによると、服用した子宮内膜症の患者のうち88.5%に効果が見られたとされています(※1)。
デュファストンは不妊治療に効果があるの?
先述のとおり、デュファストンを一定期間飲むことで、生理不順や無月経、子宮内膜症など、将来的に不妊につながる恐れがある状態が改善されることがあります。
また、排卵などに異常がなくても、「黄体機能不全」のために黄体ホルモンが十分に分泌されていないと、子宮内膜が厚くならず、受精卵が着床しにくいため、不妊につながります。
こういった場合も、デュファストンを飲むことで黄体ホルモンが補われ、受精卵が着床しやすい子宮内膜の状態が保たれるため、デュファストンを服用しながら妊娠を目指すことができます(※1)。
デュファストンで基礎体温は上がる?
特に不妊治療や妊活を行っている人にとって、基礎体温の変化は気になるところですよね。
デュファストン自体には、基礎体温を上げる作用はないとされています(※1)。そのため、デュファストンの服薬中に基礎体温が上昇した場合、それはホルモン剤によるものではなく、「排卵が起きた」ことが原因と推測できます。
また、デュファストンは黄体ホルモンの作用を補い、子宮内膜を維持する働きがあるので、それまでなかなか基礎体温が安定しなかった人でも、高温期がある一定期間続くこともあります。デュファストンを飲むのをやめると、数日後には高温期が終わり、生理がきます。
もし、デュファストンの服用をやめても高温期が続けば、妊娠している可能性も考えられます。
ただし、高温期がどれくらい続くかどうかは、デュファストンを飲み始めるタイミングにもよります。妊娠検査薬を使うタイミングや病院で再診を受ける日にちについては、あらかじめ医師に確認しておきましょう。
デュファストンは妊娠初期に飲めるの?
デュファストンを飲むと、子宮内膜の厚さが維持されるため、受精卵が着床しやすくなるだけでなく、子宮の緊張がゆるみ、着床したあとに妊娠を維持できる確率も上がります。
そのため、切迫流産・切迫早産になる恐れがあると診断された妊婦さんに対して、予防のためデュファストンが処方されることもあります。また、過去に何度か流産・早産を繰り返している習慣性流早産の妊婦さんにもデュファストンが処方されることがあります(※1)。
製造販売元によると、デュファストンの服用で切迫流産・切迫早産を防げたケースが77.1%、習慣性流早産の場合は88.1%に効果が見られています(※1)。
デュファストンは妊娠初期にも処方されることがありますが、この時期は赤ちゃんの器官が作られる大切な時期なので、「デュファストンを飲んでも大丈夫なの?」と不安になる妊婦さんもいるかもしれません。
実際のところ、「黄体ホルモン剤の服用」と「先天異常のある赤ちゃんが生まれること」との因果関係ははっきりわかっていませんが、少なくともデュファストンは、胎児への異常なホルモン作用が認められていません(※1)。妊娠初期の妊婦さんに対しても広く処方されています。
デュファストンによる影響など気になることがあれば、処方される際にかかりつけの産婦人科医に相談し、詳しい話を聞いてみましょう。
デュファストンの飲み方は?注意点は?
デュファストンの飲み方は、治療する内容によって異なります。医師の指示に従い、量や時期を守って飲むことが大切です。もし飲み忘れてしまったら、医師に相談してから次の服用をするようにしましょう。
まれですが、副作用としては、吐き気や食欲不振、嘔吐などが現れることもあります(※1)。
デュファストンを飲んだあとに体調が悪くなったときは、無理して飲み続けたりせず、かかりつけの医師に服用量などを調整してもらってくださいね。
デュファストンを効果的に使いましょう
デュファストンは、生理不順や子宮内膜症などで悩む妊娠前の女性だけでなく、切迫流産・切迫早産の恐れがある妊婦さんにとっても効果が期待できる薬です。デュファストンを効果的に使うために、かかりつけの医師の指示に従い、適切な量や飲み方を守って使うようにしてくださいね。