冷え性だと妊娠しにくいの?体への影響や対策は?

監修医師 漢方専門医・内科医 入江 祥史
入江 祥史 日本東洋医学会認定漢方専門医・日本内科学会認定総合内科専門医。医学博士。1991年、大阪大学医学部卒。慶應義塾大学病院漢方クリニック医長、証クリニック吉祥寺院長などを経て、2017年、入江漢方内科クリ... 監修記事一覧へ

「冷え性」と聞くと手足の冷えを連想する人が多いと思いますが、本当に怖いのは、冷え性がさまざまな体の不調を引き起こすことです。そのひとつとして、「冷え性だと妊娠しにくい」という説もあります。今回は、冷え性が女性の身体に及ぼす影響と、改善策についてまとめました。

冷え性とは?原因は?

女性 手 痛い 寒い 冷え性 手の平

冷え性は冷えやすい体質のことをいいますが、西洋医学と東洋医学で見方が異なります。

西洋医学の冷え

西洋医学的な冷えは、自律神経の乱れやストレス、不規則な生活習慣などで起こるとされています。他にも、貧血や低血圧、筋肉不足、きつい下着による血行障害、室内外の温度差が激しい環境など、様々な要因によって引き起こされます。

老若男女問わず、誰にでも見られる症状ですが、女性は男性に比べて筋肉が少ないことから、体を温めにくく、冷えを起こしやすいといわれています。

東洋医学の冷え

東洋医学的な冷えは、「気」「血」「水」という3つの要素が不足した状態で生じると考えられています。また、全体的な量は足りていても、流れが滞り、うまく循環しないことでも起こります。

東洋医学の考える「冷え」は、大きく、胃腸障害による冷え、新陳代謝の低下による冷え、血行障害による冷え、気の循環障害による冷えの4つに分類することができます(※1)。

冷え性だと妊娠しにくいの?

カップル

冷えによって血行不良が起きると、臓器へ栄養や酸素が十分に行き渡らなくなったり、ホルモン分泌がうまくできなくなったりして、さまざまな臓器の働きが悪くなります。

「冷え性だから不妊になる」とは一概には言えませんが、子宮の働きが悪くなると、女性ホルモンが上手く分泌されず、卵巣機能や黄体機能が低下し、卵子の発育悪化や排卵障害、着床障害などを引き起こす可能性もあります。

また、冷えによって排泄機能が弱まると、生理として排出されるはずの子宮内膜が子宮に残ってしまい、不妊の原因になる子宮内膜症や子宮筋腫などの病気を引き起こすこともあります。

単なる冷え性と考えていると、さまざまな不妊の原因を増やしてしまい、気がついたら妊娠しにくい体になっていることもあります。普段の生活から冷え性対策を行うことが大切です。

冷え性の症状は?

首 肩 疲れ

冷え性は不妊につながる様々な症状を引き起こすほか、下記のような症状が現れることがあります。

首・肩・腰のこり、膝や肘などの関節痛

身体が冷えると血行が悪くなり、首・肩・腰のこり、膝や肘などの関節痛を引き起こします。また身体が冷えると神経が痛みを感じやすくなるので、さらに強い痛みを感じるという悪循環に陥ることもあります。

むくみやすい、太りやすく痩せにくい

身体の冷えは新陳代謝を低下させ、老廃物や余分な水分が排出されにくくなるため、むくみが起こりやすくなります。

さらに身体が冷えると体温を保つためにエネルギーを蓄えようとして、余分な脂肪分やカロリーが消費されにくくなるため、太りやすく痩せにくい体質になってしまいます。

くすみ、クマ

冷えによって血行不良になると、顔の皮膚の血行も滞り、くすみやクマを引き起こす原因となります。全体的に顔色が暗くなってしまうこともあります。

免疫力の低下

冷えによって体温が低下すると、免疫力の低下につながります。免疫力が低下すると細菌やウイルスに対する抵抗力が下がるので、感染症にかかりやすくなります。

冷え性の対策は?妊娠しにくい身体を改善するには?

温める ホット 暖房 靴下

それでは、冷え性をどのように改善したらいいのでしょうか。下記のような方法を試してみるのがおすすめです。

温める

冷えの改善のためには、まず体を温めましょう。特に妊娠しにくい体を改善するためには、子宮や卵巣がある下腹部をしっかり温めることが基本です。

半身浴や足湯は、卵巣や子宮がある骨盤内を温める効果があり、おすすめです。38~40度ほどの熱すぎないお湯にゆっくりと浸かりましょう。体や頭を洗うときに、大きめの桶などにお湯を張り、足湯を行うのもいいですね。

夏もクーラーなどで意外と冷えているので、冬だけでなく、夏もできるだけ毎日湯船につかりましょう。また、スカートの日は腹巻を身に着けたり、寒い日は靴下を重ね履きしたりするのも効果的です。

また冷え性からくる肩こりに悩まされている人は、腕や肘も同時に温めるといいでしょう。蒸しタオルを優しく当てるだけでも筋肉がほぐれます。

漢方薬で体質を改善する

漢方薬で体質を整えることで、冷えが改善されることもあります。

冷えに対する代表的な漢方薬には、八味地黄丸、当帰芍薬散、桂枝茯苓丸、加味逍遥散、桃核承気湯、温経湯、真武湯、当帰四逆加呉生姜湯など、様々なものがあります(※1)。

漢方薬は、体質や症状にあうものを使うことが大切なので、漢方内科などを受診し、自分にぴったりの漢方薬を処方してもらうのがおすすめです。

ストレッチや運動を行う

女性 ストレッチ 運動

新陳代謝を高めるには適度な運動が効果的です。激しい運動やトレーニングではなく、まずは、「階段を使う」「散歩をする」など、日常生活に気軽に取り入れられる運動を試してみてください。

お風呂上がりなどの体がよく温まっているときに、ストレッチを行うのもおすすめです。ストレッチは気持ちよく体が伸びる範囲で行い、無理をしないようにしてください。固まった身体が、じんわりとほぐれていきます。

冷たい食べ物や飲み物を避ける

体を温めるためにも、できるだけ火のとおったものや、温かい飲み物を摂取するようにしましょう。特に野菜は生で食べると身体を冷やしてしまうので、できるだけ、蒸したり煮たりして食べたいですね。

身体を芯から温めてくれる生姜やにんにく、ニラ、ネギなどの食材を積極的に摂るのも効果的です。

マッサージを行う

お風呂に入るときには、脚などのむくんだ部位を優しくマッサージし、血の流れを促しましょう。

顔色やくまなどが気になる場合は、フェイスマッサージで血行を促しましょう。フェイスマッサージの前に蒸しタオルやスチームをあてて、顔を温めるとより効果的です。

規則正しい生活を心がける

冷えから免疫力が下がっている場合は、規則正しい生活を心がけることも大切です。十分な睡眠を取る、栄養バランスに気をつけるなど、できることから始めてみてください。

また、ストレスは末梢血管を収縮させ、冷えにつながりやすいので、趣味や適度な運動で気分をリフレッシュさせ、ストレスを解消するのもいいですね。

冷え性を改善して妊娠しやすい体づくりを

女性 笑顔 公園 自然 コーヒー

「冷えは万病のもと」ともいいます。特に女性は、冷えによる身体の不調を感じやすく、少しでも早く改善したいと考えるかもしれません。

しかし冷え性は体質なので、対策を講じても、すぐには効果が出にくいものです。自分の体にじっくりと向き合い、体の根本を変えていけるといいですね。

特に妊娠を望む女性にとって、冷えは早めに改善しておきましょう。できることから実践して赤ちゃんを温かい身体で迎えてあげてくださいね。

こそだてハックに「いいね!」して情報を受け取ろう