はじめての赤ちゃんのお世話では、何かと迷うことがたくさん出てきます。なかでも「完全母乳で育てるか、母乳とミルクを混合にするか、完全ミルクで育てるか」というのは、ママたちが最初に突破しなければいけない難問なのではないでしょうか。そこで今回は、ママたちの判断材料のひとつとなるべく、完全ミルク育児をする完ミ派と混合育児をする混合派のメリット・デメリットについてご紹介します。
「完ミ」とは?
生まれてきた赤ちゃんと初めて接したときから、すぐに始めなければいけないことが授乳です。しかし母乳の出具合は個人差が大きく、赤ちゃんが飲める以上の量の母乳が出るママもいれば、なかなか出ずに母乳を赤ちゃんにあげられないママもいます。
「完ミ」とは、完全ミルク育児の略称で、その名の通り母乳ではなく完全にミルクだけで育児を行うことをいいます。
ミルク育児と母乳育児の違いとは?
母乳育児はWHO(世界保健機関)からも推奨されており、栄養だけでなく母子のアタッチメントの観点からも素晴らしいものです(※1)。
しかし、すべてのママが潤沢に母乳が出るわけではありません。また母乳の出に関わらず、早期の仕事復帰などの家庭環境によりミルク育児を選択しなければいけないこともあります。
「母乳の出がよく、ミルクは一切使わない」という完全母乳育児の人もいれば、「仕事の関係で日中はミルク、夜間だけ母乳」という混合育児をする人もいます。また、「母乳を一切飲ませずに完全にミルクだけ」という完全ミルク育児の場合もあります。
どれが正解でどれが不正解ということはありません。母乳の出具合やママの体調、家庭の環境などにより、自由に選択して良いものです。
完全ミルク育児で育てても大丈夫なの?
育児用の粉ミルクは牛乳を主成分としているものの、母乳とほぼ変わらない成分を持っています。
牛乳と母乳を比べたとき、母乳の方が含まれる成分が多い栄養素(炭水化物、ビタミンA、ナイアシン、ビタミンCなど)は、粉ミルクにはしっかり含まれています。
一方で牛乳の方が母乳より多く含む成分(カルシウム、リン、ナトリウム、カリウムなど)は、粉ミルクでは低減されており、赤ちゃんの体に負担にならないように配慮されています(※1)。
がんばってみたけれど母乳が出にくい、どうしても仕事復帰しないといけない…などと悩むママでも、母乳育児ができないことで、赤ちゃんの成長に支障が出るのではないかと心配する必要はありません。ミルクだけでも赤ちゃんは、すくすく成長します。
完ミ派?混合派?完母からミルク育児に移行する方法は?
完全ミルク育児にするのか混合育児にするのか選択の余地がある場合は、どちらを選ぶべきで、どのように進めていけばいいのでしょうか。
「母乳育児をがんばりたい」というママは、可能な限り母乳をベースにしつつ、必要に応じてミルクを足す混合育児をしてみましょう。母乳がスムーズになれば完全母乳育児に移行してもいいですし、母乳が難しいようであれば完全ミルク育児になっても良いでしょう。
逆にママの仕事復帰や妊娠などの事情で母乳をあげるのが難しく、今後完全ミルクに切り替えたい場合は、まずはミルクをベースにして母乳を足していくやり方がおすすめです。そうすれば、自然に母乳の分泌が減少していき、乳腺炎などのトラブルも起こらずに済みます。
ただし、完全母乳育児からミルク育児に切り替えたい場合、母乳が大好きな赤ちゃん相手に移行していくには、多少時間がかかるものです。
完全ミルク育児のメリットとは?
母乳育児と完全ミルク育児には、それぞれのメリットとデメリットがあります。完全ミルク育児のメリットとしては、以下のようなものがあります。
ママのストレスの軽減
母乳の出が良くないママが「母乳育児をしなければ」と思いすぎると、ストレスになってしまい、ますます母乳が出なくなるという悪循環に陥りやすくなります。
母乳育児という選択肢を捨てることでストレスを軽減でき、子育てが楽になる効果が期待できます。
飲んだ量がわかりやすい
ミルクの場合は哺乳瓶であげるので、赤ちゃんがどれだけミルクを飲んだのかが一目瞭然です。特に初めて育児をするママは過不足がわかりやすいので安心できます。
誰でもどこでも授乳できる
哺乳瓶でミルクをあげられるとなると、パパやほかの家族も授乳ができます。赤ちゃんを抱っこして授乳するという楽しみをパパも味わえるのは、完全ミルク育児ならでは。場所に関係なく授乳できるので外出しやすいのもメリットのひとつですね。
ビタミンKが豊富
母乳育児の場合、ビタミンKが不足してしまう傾向があり、ビタミンK欠乏性出血症になってしまうことがあります。しかし粉ミルクはビタミンKの含有量が多いため、その心配がありません(※2)。
ママの食事や飲み物が制限されない
授乳中はカフェインやアルコールなど、気をつけなければいけない食べ物や飲み物があります(※3,4)。しかし完全ミルク育児であれば、それらを気にする必要はありません。
ときにはパパが赤ちゃんの相手をしてくれている間、友達とお酒を飲みに行く…ということもできますね。
完全ミルク育児のデメリットとは?
完全ミルク育児のデメリットには以下のようなものがあります。
子宮復古の遅れ
ママ側のデメリットとしてまずあるのが、子宮の戻りが遅くなりがちということです。赤ちゃんが乳頭を吸うとオキシトシンが分泌されて子宮の収縮が促されますが、完全ミルク育児だと乳頭への刺激がないため、子宮が元に戻るのが遅れてしまう可能性があります(※5)。
荷物が多くなる
外出するときの荷物が多くなるのもデメリットです。哺乳瓶はもちろん、小分けしたミルクやお湯を入れた水筒は外出時の必需品となります。
お金がかかる
母乳と異なり、粉ミルクは買わなければいけないので、その分出費が増えます。母乳育児の場合、ママのお腹が空きやすく、その分の食費が増えるので最終的にどちらの出費が多くなるか一概には言えませんが、目に見える出費が増えるという点で、ミルク育児のデメリットになります。
夜間の授乳が大変
夜間の授乳は、母乳育児だと添い乳などでさっと対応できますが、完全ミルク育児の場合は赤ちゃんが泣くたびにママやパパが起きてミルクをつくる手間がかかります。ただし、ママでなくてもミルクをあげられるため、パパとママが授乳を分担できるという点ではメリットといえます。
赤ちゃんに免疫がつきにくい
赤ちゃん側のデメリットとして大きいのは、母乳に含まれる免疫力がもらえないことです。母乳には殺菌力や風邪などに対する抗体が含まれていますが、ミルクだとそれらをママからもらえません。
産後2~3日の間にママのおっぱいから分泌される母乳を「初乳」といいますが、この初乳には免疫物質が多く、赤ちゃんの免疫機能を補ってくれる効果があります(※5)。
混合派のメリット・デメリットは?
母乳とミルクの混合で育てる場合は、完全ミルクの場合のメリットとデメリットの両方を兼ね備えています。しかし両方のいいとこ取りができるので、メリットの方が大きいといえるでしょう。
たとえば、夜間や外出時には母乳にし、保育園や祖父母に預けるときはミルクにすると楽ですよね。夜間はパパがミルクをあげて、ママは体を休めることもできます。また、子宮復古も遅れ過ぎず、赤ちゃんはママの免疫も摂取できるというメリットもあります。
デメリットとしては、多少の出費と量の過不足が明瞭でないことくらいでしょうか。また、ミルクが続く期間が長いと、おっぱいが詰まりやすくなってしまうという点で、注意が必要です。
完全ミルクでも混合でも、赤ちゃんとママにとってのベストな選択を
生後半年頃を迎えれば離乳食がスタートしますし、授乳による育児は、1~2年ほどしかない場合がほとんどです。
その間は、赤ちゃんの栄養状態に問題が出ないことが一番なので、「こうしなければ」とあまり考えすぎず、赤ちゃんとママにとってベストな方法を探していきましょう。
個人や家庭によってさまざまな事情があるので、「母乳育児の方が赤ちゃんに栄養と愛情を与えられる」などと考えすぎないで、ストレスを溜めないようにしてくださいね。ママの笑顔が、赤ちゃんの心にとっては何よりの栄養源になりますよ。