母乳育児のママで「乳腺炎」を聞いたことがあっても、「うつ乳」を知っている人は少ないかもしれません。うつ乳とは、医学的には「乳汁うっ滞」と呼ばれる乳腺炎の前段階で、母乳が乳房内に溜まってしこりができ、腫れた状態のことです。そもそも、母乳の詰まりとはどういうことなのでしょうか?今回は、うつ乳の原因と症状、解消法をまとめました。
そもそも、母乳の詰まりとは?乳腺に詰まるの?
そもそも、うつ乳を引き起こす「母乳の詰まり」とは一体どういう状態なのでしょうか?
授乳中は、赤ちゃんがいつもたくさん飲めるように、24時間母乳が作られています。しかし、乳管や乳腺の一部が滞り、母乳の排出がうまくいない箇所があると、うっ滞してしまい、母乳のつまりが起こります。乳管とは乳腺組織のひとつなので、「母乳が乳腺に詰まる」という風に呼ばれることもあります。
母乳が詰まったままの状態でいると、しこりとなって乳腺組織を圧迫してしまい、うつ乳につながります。さらに症状が悪化すると、乳腺炎を引き起こします。
母乳の詰まりは、いわば乳腺炎が近づいている状態です。特に、「差し乳」の場合はうつ乳になっても気がつきにくいので、知らぬ間に乳腺炎になっていることも珍しくありません。母乳の詰まりは、授乳中のママであれば誰でも起こる可能性があるので、日頃から注意が必要です。
母乳の詰まりの原因は?乳腺が細いの?
どうして母乳が乳房内で詰まってしまうのでしょうか?この原因は様々ですが、主には、赤ちゃんが片方のおっぱいからしか飲まないこと、赤ちゃんが同じ姿勢で飲むこと、特に新生児期の赤ちゃんはおっぱいを吸う力が弱く、乳管から母乳がうまく出ないこと、が挙げられます。
ただし、食事と母乳の溜まりやすさについては、まだしっかりとした調査報告がされていません(※1)。WHOも「高塩分・高脂肪分の食事は乳腺炎の原因になると考えられているが、はっきりとした根拠はない」としています(※2)。
ただし、乳房マッサージで有名な「桶谷式」でも、母乳はママの血液からできているので、ママの体調や食べるもので味や状態が大きく左右されるものとして、食事を重視しています(※3)。医師の監修による書籍でも、脂肪分・糖分が多い食べ物や乳製品を過剰に摂取すると、母乳の質を悪くして乳腺を詰まらせる原因になると指摘しています(※4)。
つまり、十分な調査結果はないが、経験上は食事と母乳の詰まりには関係があるのではないかとも考えられているといえます。
うつ乳の症状とは?
うつ乳になると、授乳中におっぱいがチクチクする、乳房がどんよりと重く感じる、熱を持っている、乳房に小さいしこりができるといった症状が現れるのが特徴です。そのまま乳腺炎になると、炎症を起こして痛みを伴うしこりができたり、パンパンに張って岩のように硬くなったり、発熱などの症状が現れることも。
授乳をしているママの約2~3割が乳腺炎になるといわれているので、母乳の詰まりの兆候が出てきたら、できるだけ早めに対処しましょう。
うつ乳の解消法は?母乳の詰まりは予防できるの?
母乳の詰まりによってうつ乳になってしまったときは、食生活や生活リズムの見直しをしてみましょう。前述でご紹介したように、脂肪分・糖分・塩分によって母乳の通りが悪くなるだけではなく、ママのストレスや疲れが原因ということもあります。
育児中のママは、昼夜問わずの授乳で寝不足だったり、慣れない育児でストレスや疲れが溜まっていたり、育児の合間に食事をしていて、まともに食事ができていないことが多く、うつ乳になりやすい状態でもありますよね。
しかし、早めに対処することで乳腺炎になるのを避けることができます。意識して対処すれば、悪化を止めるだけでなく、うつ乳をケアできるので、以下を参考に実践してみてください。
食事内容の見直し
母乳のもとである血液の流れを良くなるような食べ物・飲み物を意識して摂取しましょう。脂肪分や塩分、糖分が多く含まれる食事はできるだけ控え、あっさりとした和食を中心にした食事を心がけましょう。
体を冷やさない温野菜やショウガなどもおすすめです。飲み物もカフェインや糖分を含むものは避け、お茶や水を適度に飲むようにしてください。甘いジュースには砂糖が多く含まれています。
赤ちゃんに母乳をしっかり飲んでもらう
母乳の間隔がいつもより開いたり、1回分飛ばしてしまったりすると、うつ乳の悪化につながりやすくなります。普段よりも減らすことがないよう、注意しましょう。
授乳するときの体勢を変え、抱っこの向きを反対にするなど、いつもと違う角度からまんべんなく飲んでもらうことも大切です。母乳は消化がよく、お腹が空きやすいものなので、少し授乳回数を増やし、赤ちゃんが欲しがるだけ飲ませてあげてくださいね。
熱を持った部分は間接的に冷やす
すでに乳房が熱を持ったり、腫れたりしている場合は、冷却ジェルシートやタオルで包んだ保冷剤を当てて冷やしましょう。急激に冷やすと悪化させてしまうので、氷水や氷を直接当てず、関節的に冷やすのがポイントです。
しっかりと休養をとる
育児中はなかなか難しいですが、ママも一緒に赤ちゃんとお昼寝をしたり、パパに協力してもらって食事の準備をしてもらったり、ママが休める体制を作りましょう。
乳房マッサージをする
対処法を実践しても良くならない場合は、乳房マッサージがおすすめです。自分でもできますが、母乳外来や助産師さんなど、プロにお願いするとより効果的です。
乳房マッサージで乳管が開通すれば、母乳が出やすくなり、うつ乳の症状もケアされてきますよ。痛いほどのしこりを感じる場合でも、マッサージを続けていけば次第になくなります。
母乳の詰まりを早めに解消して乳腺炎を防ごう
うつ乳や乳腺炎は、母乳育児の方法に慣れていない時期ほどなりやすく、実際に、初産婦のほうが発症しやすいといわれています(※1)。母乳の感覚が掴めないうちは何か変化があっても、その先のトラブルが想像できないことも少なくありませんよね。
うつ乳は乳腺炎のサインなので、日頃からおっぱいの状態を意識して、うつ乳になっていれば早めに対処法を実践して、乳腺炎になるのを防ぎましょう。
乳腺炎になると、ママ自身が発熱するなど、つらい状態になって育児にも影響が出てしまいます。母乳外来を行なっている産婦人科や助産院に行ってマッサージを受けたり、頻回授乳や食事の見直しをしたりしながら、うつ乳を解消してくださいね。場合によっては産婦人科に相談してみるなど、早めの対処を心がけましょう。