乳腺炎の熱はいつまで続くの?対処法は?授乳はしてもいい?

監修専門家 助産師 佐藤 裕子
佐藤 裕子 日本赤十字社助産師学校卒業後、大学病院総合周産期母子医療センターにて9年勤務。現在は神奈川県横浜市の助産院マタニティハウスSATOにて勤務しております。妊娠から出産、産後までトータルサポートのできる助... 監修記事一覧へ

母乳育児のママがよく経験する「乳腺炎」。乳腺炎が悪化すると発熱し、風邪のような症状を引き起こすことがあります。気軽に薬も飲めないので、どう対処して良いかわからず、むやみに母乳を絞ったり、何もできずに放っておいたりして、さらに悪化させてしまう人も。今回は、乳腺炎の熱はいつまで続くのか、どんな対処法があるのか、乳腺炎で熱があるときに授乳をしてもいいのかなどをまとめました。

そもそも乳腺炎になる原因は?

痛み

乳腺炎には、乳管に母乳が溜まり、乳腺が詰まって炎症を起こしてしまう「急性うっ滞乳腺炎」と、細菌が入ったことで乳腺が炎症する「化膿性乳腺炎」があります。

ほとんどのママは、急性うっ滞乳腺炎であることが多く、しこりができる、乳房が硬くなる、赤く腫れ上がるといった症状がみられ、悪化すると38~39度の発熱や寒気、関節痛など、風邪を引いたような症状が出るのが特徴です。

化膿性乳腺炎は、急性うっ滞乳腺炎と似た症状も出ますが、うずくような強い痛みが出たり、分かりやすくしこりができたりします。

乳腺炎になったときは、以下の症状を参考にしてみてください。

急性うっ滞乳腺炎の特徴

ブラジャーや衣服の締めつけ、赤ちゃんが上手に母乳を吸えず母乳の出に偏りがある、母乳の飲み残しがある、ママのストレスや疲れなど、様々なことが原因で起きます。母乳をちゃんと出すことができず、乳腺に母乳が溜まって炎症を起こしてしまうことも。

基本的に乳腺の詰まりをケアすれば落ち着くことがほとんどですが、むやみに絞り出すと乳腺を傷つけて悪化させてしまうことがあるので、慣れるまでは母乳外来でケアするのがおすすめです。

化膿性乳腺炎の特徴

赤ちゃんに噛まれて乳首が傷つき、そこから細菌が入ったり、急性うっ滞乳腺炎が悪化したりすると、発症します。赤ちゃんに乳歯が生え始めると乳首を傷つけやすくなり、傷口から黄色ブドウ球菌が入り込んでしまうことがあります。

菌によって、乳房に膿が溜まることがあり、しこりがはっきりとわかる場合は、化膿性乳腺炎の可能性があります。膿がひどくなると手術が必要になる場合もあります。

乳腺炎の熱が出たときの対処法は?いつまで続くの?

? 疑問

乳腺炎の熱は風邪ではないので、炎症が落ち着けば解熱することがほとんど。なかには1週間ほど微熱が続く人もいますが、ケアを続けていれば次第に下がっていきます。

産婦人科や母乳外来に行くのがおすすめですが、すぐに行くことができない場合は、以下の方法を参考に対処してみてください。

患部を冷やす

炎症を起こしている部分は熱を持っています。温めるとさらに悪化する可能性もあるので、できるだけ安静に体を休めながら、冷却ジェルシートやタオルにくるんだ保冷剤で、熱を持っている部分を少しずつ冷やすようにしましょう。氷水などで急激に冷やすと悪化させてしまうこともあります。

民間療法では「キャベツ」「ジャガイモをすりおろしたもの」を湿布のようにおっぱいに貼り、自然な冷たさでじんわりと冷やす方法もありますが、雑菌の巣にならないよう気をつけましょう。熱が下がっていれば、冷やすのはやめましょう。

定期的に授乳する・圧を抜く

急性うっ滞乳腺炎の場合、多くはこの対処法で自然と治まります。おっぱいが痛くて授乳するのがつらい人もいますが、痛みを我慢してでも、定期的に赤ちゃんに母乳を飲んでもらいましょう。

「母乳が出にくい」「味がいつもと違う」などの理由で、赤ちゃんがなかなか飲んでくれないこともありますが、ちょこちょこと頻回授乳をしてしまうと、ますます母乳の分泌が活発になってしまう恐れがあります。1回でしっかり飲ませて、その後はおっぱいを休ませることが大切です。

また、いつもの同じ姿勢で飲ませると詰まりが良くならないこともあるので、角度や抱き方を変えて飲ませてみてください。

授乳が難しいときは、圧を抜くような感覚で搾乳をしましょう。搾り切ってしまうと、どんどん母乳を作り出してしまうので、圧を抜く程度で様子をみてくださいね。強く絞って乳腺を傷つけてしまわないよう、慣れないうちは優しく行いましょう。

ゆったりした服装にする

きつい服、サイズが合わない下着(ワイヤー入りの締め付けるブラジャーなど)を着けておっぱいを圧迫してしまうと、乳腺も圧迫されてしまい、詰まりの原因となります。ゆったりした服装にし、自宅であれば下着を外しましょう。

乳腺炎になっているとおっぱいがパンパンに腫れ上がってしまうこともあるので、下着を外すだけでも体が楽になりますよ。ワイヤーの入っていない授乳用ブラジャーなどを活用しましょう。

乳腺炎で熱が出たときの注意点は?

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ここでは、乳腺炎で熱が出たときに控えたほうが良いことをご紹介します。基本的には、母乳の出が良くなるようなことは避けましょう。

体を温め過ぎないようにする

血の巡りを良くすると、母乳はたくさん作られるようになります。乳腺炎のときは、元々乳腺に母乳が詰まってパンパンになっているので、さらに母乳が作られると症状が悪化する原因となります。お風呂では入浴は控え、しばらくはシャワーで済ませましょう。

スープなどの温かい食べ物や飲み物を過剰摂取すると、おっぱいが張りやすくなります。特に根菜はおっぱいの出が良くなるので、乳腺炎のときはあまり食べすぎないようにしましょう。

水分を摂り過ぎないようにする

適度な水分補給は必要ですが、水分を取り過ぎると母乳が作られ過ぎて、かえっておっぱいが張り、症状を悪化させてしまうこともあります。まったく飲まないのも詰まりの原因になるので、水分は適度な量で、飲み過ぎないことが大切です。

糖分の入ったジュースや炭酸飲料、カフェインの入ったコーヒーや紅茶ではなく、できるだけお水やお茶で水分を摂りましょう。たんぽぽ茶などノンカフェインのものがおすすめです。

塩分・糖分・脂質の多いものは食べないようにする

食事と乳腺炎の関係は気になりますよね。WHOは「高塩分・高脂肪の食事は乳腺炎の原因になると考えられているが、はっきりした根拠はない」としています(※1)。一方で、母乳外来では食事指導が行われることもあり、経験則としては食事と乳腺炎には何らかの関係があると考えられています。

できるだけ脂肪分の多いケーキやチョコレートといった洋菓子、塩分の多いスナック菓子やカップ麺は控えましょう。また、ビタミンE、ビタミンC、ハーブティーの摂取がうっ滞性乳腺炎に対して効果的だとする報告があるため(※2)、果物類を適度に摂取することもおすすめです。

乳腺炎で熱が出たときは授乳してもいいの?

赤ちゃん 母乳 授乳

乳腺炎で熱が出ていても、化膿している状態でなければ、赤ちゃんに授乳しても問題ありません。赤ちゃんはちょうど良い吸引力でおっぱいを吸ってくれるので、ママが位置を変えながらバランスよく吸わせるのが一番の解決方法です。

乳腺が詰まっていると、おっぱいは岩のようにカチカチになっていることや、乳首が赤くひりひりしている状態のときがあり、赤ちゃんが触れるだけでも痛みを感じることもあります。ママは少し辛いですが、我慢して授乳した方が治りも早くなりますよ。

片方だけ乳腺炎になっている場合は、乳腺炎になっている方から吸ってもらうのがコツです。乳腺炎の母乳は普段と味が変わっていることもあり、乳腺炎になっていない美味しい母乳を飲んだ後では飲んでくれないこともあります。先に乳腺炎になっている方の母乳を十分飲ませるようにしてくださいね。

乳腺炎で熱が続く場合は、母乳外来へ

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乳腺炎は母乳育児にはつきもの。一度なると、頻繁に繰り返してしまうことも珍しくありません。体調が悪いときや、断乳・卒乳をしたときにも、乳腺炎になりやすくなります。

なかなかうまく搾乳できない場合や、熱が続く場合、白斑(乳首にできる水泡やニキビのようなもの)が消えずに痛みが続く場合などは、無理せず母乳外来で診てもらいましょう。

母乳外来でマッサージをしてもらうと、赤ちゃんが飲みきれなかった、あるいは搾り切れなかった母乳を出してもらえます。自分では意識できない奥の方までしっかりとケアしてくれますよ。

症状によっては抗生物質や漢方薬を処方してもらえるので、なかなか良くならない場合は早めに受診しましょう。

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